63.「僕はバイクで出来るだけの速度を出した。 」

あの異物はヤバい、そう思ったからだ。


ふとバックミラーを見てみる。


すると、あの黒い服の少女がこちらに向かって翼をはためかせて飛んで来ていた。


「はあっ!?」


思わず声が出た。


明らかに僕を追いかけている様だった。


次の信号機も青だったのど、そのまま駆け抜ける。


黒服の少女も僕を追いかけてるのかそのまま信号機を通過する。


ヤバいヤバいヤバいヤバい、あれは絶対ヤバい奴だ!


僕の本能がそう確信する。ふと周りを見ると僕以外の車や通行人が見当たらなくなった。


こんな街中なのに。


あれっ、こんな現象あったよな、確か、イオンでゴーレムに襲われた時だったか、


そう思った矢先、前方の地面が急に割れ、その中から、ゴーレムが現れた。


そのゴーレムは僕の進行方向上で手を大手に広げ、僕の進行を妨害しようとしていた。


僕は右にハンドルを切りゴーレムを避ける。さらに前方にまた2体のゴーレムが出現する、が僕はゴーレムの間を通過して逃げる。


このゴーレムが動きがトロいのは知っている。バイクで走る僕を捕まえられ様が無い。


「■■■■■■■■■っ!!」


僕の後ろから叫び声が聞こえた。


バックミラーを見ると僕を追って飛来している有翼の黒服少女が何かを叫んでいる。


「■■■■■■■■■っ!■■■■■■■■■■■っ!」


何かを叫んでいる。叫んでいるのだが聞き取れない。


あの少女は銀髪に赤目と、どう見ても日本人の風貌では無いのだが、何を言っているのかが分からない。


英語でも無いし当然日本語でも無い、奇妙な言葉を発していた。


もしかしたら呼び止め様としているのかもしれない。


しかし、あの少女に捕まったらロクな事が起きない気がする。どうやら僕らを襲っていたゴーレムと仲間の様だし。


僕は速度制限を無視して、バイクをフルスロットで加速させた。


僕とあの少女とゴーレム以外通行人は居ないのだ、迷惑する人も居ないだろう。


黒服の少女の飛ぶ速さはバイクに追い付けないのか、ぐんぐんと差を広げていった。


「■■■■!■■■■■■!!」


何やら黒服の少女が叫んでいる。


どうせ「待て!」とか「逃げるな」とかだろう。バックミラーから見える少女の表情は、必死な形相だった。


僕はそのままアクセルを踏んで、バイクを走らせた。


暫くすると、あの少女は見えなくなり、辺りに人影が見える様になった。


僕は法定速度に速度を落とし、周りを警戒しながら家に帰った。


幸いにも、帰路の途中、あの少女と出会う事は無かった。

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