30.「では、お邪魔します」

「どうぞ、お上がりください」


僕は自称従兄弟を家の中に招き入れた。


居間の方で自称妹は渋い顔をしてこちらを見ている。


それを見て自称従兄弟も怪訝そうな顔をした。


「こんにちは・・・えっと千尋さん・・・?」


恐る恐るという感じで自称従兄弟は自称妹に挨拶をした。


「・・・こんにちは・・・」


自称妹も警戒心を露にした様に挨拶しかえす。


おいおい、表情固いぞ、君達。


まあ、こいつらにとって、他人同士なのだから、よそよそしいは仕方ないか。


僕と君らも他人同士だかな!


「貴女も私と同じ様に誰からも認知されず知っている人はお兄さんだけ、でもお兄さんは自分の事を知らない状態」


なんですよね?」


「・・・は、はい・・・」


「・・・何なんでしょうね?この現象。何で、お兄さんだけ私達の事知っているか?。お兄さんは私達の事は知らない。・・・それに私は貴女の事、知らない。でも貴女も、お兄さんの妹として今まで生きていたのでしょう?貴女も私の事は分からないですよね。お兄さんとは頻繁に会っていたのですけど。」


「・・・分かりません・・・」


「うーん・・・そうですか・・・。」


自称者同士の会話が止まった。


「・・・えっと、私達、学生ですよね?。貴女は高校生?」


「・・・はい」


「じゃ、じゃあ、敬語無しで喋っていいかな?」


「いいですけど・・・」


自称妹はふるふる震えながら言った。


どうも、対応がぎこちない。そういえば不登校だったと言っていたっけ?


「あのさ、お兄さんと千尋さんはさ、どのくらい一緒に居たの?。」


「・・・一週間ぐらい・・・。」


「そう、最近なのね。」


「・・・うん・・・」


「・・・ふーん・・・なーんだ、私てっきり1年ぐらい一緒に住んでいるものかと。だったら私がお邪魔しても問題なさそうね」


ほっと安堵する自称従兄弟。既に自称従兄弟も同棲する前提で話が進みつつある・・・。


「・・・嫌だ・・・。」


ぽつりと自称妹が口を開いた。


「お兄ちゃん以外と一緒に住むなんて嫌だ・・・!」その突然の言葉に僕も自称従兄弟も驚くのだった。


「ここはお兄ちゃんと私の家だもの・・・。私、貴女が私達の家に住むの嫌です。」


と言って自称妹は僕の方へ来て僕の腕を抱き締めた。「ギリッ」


と横から歯を軋ませる音が聞こえた。


振り向くと自称従兄弟が憤怒の表情で自称妹を睨んでいた。


「私達の家ってどういう事かな!?」


自称従兄弟は声を荒げた。


「そのままの意味です!」


「そのままって・・・、貴女がお兄さんと同居して一週間ぐらいしか経ってないって・・・!」


「ずっと一緒に住んでいたよ!ずっとずっと・・・っ!」


「ええっ・・・!?」


驚愕する自称従兄弟。


おーい、自称妹よ。


語弊がある事を言うんじゃあない。


「あー、千尋ちゃんの中での話だからね。千尋ちゃんと一緒に暮らしていた『僕』の。僕とは一週間しか住んでないからね」


と訂正してやると。


「お兄ちゃん!余計な事言わないでよお!」


と自称妹が僕の腕をわしわし揺らして来た。


「いや、重要な事だよ?」


うん、重要だ。


「ふーん、お兄さんとしては初対面同然と。」


自称従兄弟はクスリと微笑んで自称妹を見た。


「で、でも、私、毎日お兄ちゃんと一緒に寝ているものっ!」


「ふぁぇっ!?」


突然爆弾発言をする自称妹。


自称従兄弟は驚いた様子だ。 僕も驚いている。


「お兄さん・・・!それ、どういう・・・ね、寝て・・・」


自称従兄弟はどんどん顔を赤らめている。


「おいっ!ちょっと待て!僕は法律に引っ掛かる事はしてない!ただ布団を一緒にして寝た!それだけ!何も無い!」


「もう!お兄ちゃん!余計な事を言わないでったら!」


抗議する自称妹。お前わざとやっているだろう。


「えっと、一緒に寝ているのは本当なんですか?・・・その、・・・ゴニョゴニョ・・・な事は無しとして・・・?」


顔を赤らめていた自称従兄弟は一転して青ざめた様な顔をして言った。


「・・・えっとね。・・・まあね・・・。」


本当の事だ。肯定せざる得ない。


「・・・そんな・・・。」僕の発言に自称従兄弟の青ざめた顔はさらに青くなっていく。


その様子にふふんと得意気に鼻を鳴らす自称妹。・・・後でお仕置きしてやる・・・!


「・・・いや、その、千尋ちゃんとは一緒に寝た。勿論、健全的な意味で。だが、千歳ちゃん、勘違いしないでおくれよ。僕は千尋ちゃんが、前の僕と住んでいたんでいた時も一緒に寝ていたとかで、どうしても一緒に寝たいとお願いされたから寝ているだよ?。そこはハッキリとさせておきたい。突然他人から見えなくなり頼れる人が僕だけになってしまった女子高生を弱味につけこんで同衾を強要したとかそういう訳じゃないかね。勘違いしないでね。頼むから。お願いだから。」


身の潔白を主張した。自然と早口に喋ってしまった。

「と、とにかくそういう訳だから、お兄ちゃんとはそういう関係だから、あの、千歳さんは、家に置けないと思います。」

自称妹はまくし立てる様に自称従兄弟に退去を促した。

おい、何でお前が自称従兄弟を家に置くか置かないか決めているんだ!

「・・・納得いかない・・・・・・・・・・・・・納得いかない!そんな事、何で貴女にそんなの決められなくちゃあいけないの!。この家の家主はお兄さんなのに・・・!」

キッと自称妹を睨んで自称従兄弟は叫ぶ。

「・・・お願い、お兄さん、私、お兄さん以外に私を見れる人が居ないの・・・。ここに・・・お兄さんの家に、私を居候させて下さい」

そう自称従兄弟は頭を下げたのだった。

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