28.「自称従兄弟が出ていった後、僕達は買ってきた物を整理していた。」

ふと、自称妹が呟く。


「あの人・・・お兄ちゃんの従兄弟って人・・・どうするの?」


不安げな表情で自称妹は聞いてきた。


どうする?どうするって、僕が聞きたいくらいなんだが。


「・・・やっぱり、一緒に暮らしたりするのかな?・・・私みたいに・・・。」・・・分からん。分からんが・・・、この猫の額ほどのアパートの一室で3人で住む羽目になるのか。しかも相手はうら若き女子高生ときている。それは、しんどいよなあ・・・。


「・・・分からん。・・・もしかすると、あの子、自分の家で過ごす事になるかもしれないし、分からん。」


「・・・えっとさ・・・、ちょっと怖い・・・なって・・・。」


自称妹は俯きがちに言った。


「・・・怖い?、あの子が・・・?」


「うん・・・。」


「どうしてさ?」


「・・・その・・・私と同じ位の年の従兄弟なんて居なかったから・・・ちょっと不気味だなって・・・。」


自称妹は不安げに言った。


「不気味って、君だって僕からしてみれば不気味な妹の癖に」


と鼻で笑ってやると


「ええ!私・・・不気味だった!?」


と心底心外な顔をしたので、


「冗談だよ冗談」


と誤魔化してやった。


「んもー・・・お兄ちゃんったら・・・」


ぷりぷりっと自称妹は頬を膨らませる。


「・・・まあ、何とかなるだろ。何とか・・・。」


「ええ・・・そんなあ・・・。」


「・・・だって、君とだってこうして上手くやれているんだから。あの子も上手くいくさ・・・。」


「そうかなあ・・・そうかなあ・・・」


納得いかなさそうに自称妹は呻いた。


あの自称従兄弟がどういう選択を取るかは分からんが、自称妹を家に置いている手前、もし、自称従兄弟が僕の家に置いてくれと言ったとして、お前は駄目だと言う理屈は通らまい。こっちには選択肢は無いんだ。どうせ考えてもやりようが無い事を考えても仕方がない。


「まあ、僕がてきとーに何とかするさ。なっ?」


僕は自称妹の背中をポンポン叩いてやると


「うーん、分かったよー・・・お兄ちゃん・・・」


納得してくれたようだ。良かった良かった。


「ねえ・・・お兄ちゃん・・・」


自称妹は急に声のトーンを変えて言った。


「・・・私のお兄ちゃんは・・・お兄ちゃんだからね・・・?」


何かを懇願するかの様な目で自称妹は言う。


・・・僕は君の兄貴じゃないんだが・・・。


そう言おうとした。言おうとしたが、


「分かった、分かった。」と言って自称妹の肩を叩く事にした。


「はわっ!・・・ちょっと・・・お兄ちゃん、いきなり叩いてびっくりしたよう」


「分かったから、もう買った物の整理はついただろう?ゲームをしよう」


とゲームを誘ってやると


「う、うん!」


と自称妹はにんまりと微笑んだ。


その後は自称妹とゲームをして、飯を食べて、一緒に寝てその日は過ぎたのだった。


一緒に寝ている時、こころなしか自称妹が僕に抱きついている力が前より強い様な、そんな気がした。

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