第三章 第一節 この世界と共に
第102話駄菓子屋という名のコンビニその1
この世界にきて、色々な人と出会った。もちろん人以外にも出会っているけど、やっぱり人との出会いが多いだろう。
いや、それだけ癖のある人間が多かったからに違いない。最初は目を背けていたから森にばかりいたけど、今はそうじゃない。
しっかりと周りを見つめている。そうして感覚でなく、視野を広げることによって色々なものが見えてきたのも事実だ。
今では、文化的なこともいろいろ知る事が出来たと思っている。
そもそも、日本人が多く召喚されているこの世界は、日本の文化で埋め尽くされていた。
漢字がほとんどないとはいえ、ひらがなで書かれている以上、読み書きにも不自由しない。今では古代語の文献も読めるようになっているから、この世界を勇者側の視点で書かれた書物と、この世界側の視点で書かれた書物を見て考える事が出来る。
ただ、古代語で書かれた書物は、一般的には出回っておらず、各国の魔導図書館に収められている物に頼らざるを得ない。
それはそうだろう。
なにせ私が召喚された時には、始まりの四十八人の勇者が召喚されてから五百年以上たっている。この世界の住人ですら、古代語を読み書きできる人間はまれだと思う。
なにせ、その間に召還された勇者の数は数えきれない。この世界は勇者であふれかえっている。その勇者が不自由しないように、全て日本語に置き換えられたのだから……。
しかし、他の国を見て改めて思った事がある。それは、よくこれだけの勇者を転生させたなということだ。
まあ一説では、勇者の命が戦いではなく寿命で最期を迎えた場合、その魂はまた勇者となって召喚されるらしいから、全て新しく日本から召喚したわけではないようだ。
ただそうした場合、それまでの力と記憶は通常リセットされ、新しい召喚された魂となってこの世界に誕生するようだった。
そして、
――まあ、組合長が書いたものだから、どこまで本当なのかは定かではない。
だがそれで、勇者がこれだけたくさんいることも納得できた。
そして、この世界の一般的な人をはるかに超える力を持つとはいえ、粗悪な勇者と呼ばれるものたちが多い理由も納得できた。
気の毒だが、彼らがそう呼ばれるのは仕方がないことだろう。
――何しろ、その大多数は乱暴者であるから……。
そういえば昔、マリウスがよく退治してたっけ…………。
島国であるタムシリン王国は九州くらいの面積を持つ国家だったが、ここには五千人の勇者がいたらしい。そして、私以外は全員死んだことが確認されている。
ジェイド達の強さがなせる技だろう。いや、その数と質はタムシリン王国を凌駕していたからに違いない。ハボニ王国では、まだたくさんの勇者の姿を目にしてきた。
大陸にある他の国は、タムシリン王国の数倍はある国家群だ。その勇者の数は、タムシリン王国とは比較できないほどだろう。
そう、ハボニ王国は日本文化が花開いていた。それは、タムシリン王国とは比べ物にならない程のものだった。
まあ、少し考えればその理由は明らかだといえよう。
召喚された勇者は、召喚される前の文化に応じた知識を保持している。だから勇者が多いほど、その流入した文化的なものへの影響は大きいと言える。
だから、それは勇者の数に影響される。
すなわち、転生した勇者の数が多いほど、日本文化が浸透していると言えるのだろう。
日本語、和食、着物、家具、小物。
あげればきりがないが、間違いなくこの世界に日本文化は導入されてきた。
しかも、それは様々な時代から召喚されている勇者の手によるもの。
同時期に召還されていても、文化的、歴史的知識に差があることも珍しくはないようだった。
――そして、色々なものがこの世界の文化と融合し、独自のものになっている。
その最たるものは、『ことワザ』と呼ばれる妙な物。
不思議とそれにかかわる人が周囲にいるせいか、今では私もそれをかなり受け入れることが出来るようになってきた。
上級のワザとして使用する人のものは――。
決して、ガドラのような支離滅裂なものを受け入れたわけではない。
ていうか、受けいれたくない。
それを何かに誓いとして立てたい気分だ。
ただ、不思議なのは、エトリスやネトリスのようにしっかり意味を理解して使っている者がいるかと思えば、若干変になっているドルシールとノウキンってのもいることだ。
まあ、組合長はわざと崩している感じがする。その意図は定かではないけど、とりあえず意味は理解しているのだと思う。
上級ことワザ使い、中級ことワザ使い、初級ことワザ使いとランク付けされていることもあるように、使用者の理解度は様々だ。
しかも、一つの
『ことワザ』は
そう頭では理解しているつもりだけど、時としてそれが受け入れられない事がある。
この世界は、確かに文化の融合を果たした。だが、それは私の理解の許容量をはるかに超えることだらけだった……。
――それは、目の前の店を見て、一層そう考える。
駄菓子屋コンビニエンスチェーン店。
もう突っ込みどころが満載のこの店は、実に様々な物を取り扱う、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます