倉庫建設途中経過
更に翌日。今日は倉庫の屋根と扉の製作である。皆に屋根板を張ってもらっている間に、俺は扉の作成である。
今回は観音開きの扉が2セット必要だ。それに倉庫の扉なのである程度大きく作る必要がある。実際、今ポッカリと空いているだけの開口部は結構デカい。それに合わせた扉だ。
材木を切り出して木枠を4つ作る。そこに横向きに板を張っていき、愛用のナイフで細工した木製の取っ手を釘で取り付けた。不用意に開かないように、
閂は取っ手と兼用させることも不可能ではないのだが、扉が大きいので止めておいた。城門のように閂や固定部品を金属で補強することもしない。基本的に人も獣も来ない土地のただの倉庫だしな……。
木製の部品作成でも生産のチートが有効なのが助かる。これがなかったら多分扉だけで2日以上かかりそうだ。そのチートのおかげもあって、皆が屋根板を張り終わるよりも早くに扉自体は完成した。
この後は完成した扉を開口部に取り付けるわけだが、大きいぶん重い扉なので部屋に使った蝶番では耐えきれなさそうだ。俺は皆に声をかけて、作業場に入った。
残っている板金をいくつか熱して、大きな蝶番とその左右(枠側と扉側)をつなぐ鉄の棒、そして蝶番を固定するための大きな釘を叩いて作る。大きさなんかはチートで合わせていくので、不安はない。作成速度もかなり早いと言えるだろう。
蝶番は扉に取り付ける方を扉の幅の半分くらいまでぐっと細く延ばしている。これで扉の重さを分散させるのと、より強固に取り付けられるようになる。つければ日本の城の城門のように見えるかも知れない。
硬さは必要ないので、焼入れはせずに置いておく。さすがにチートでも自然に冷えるまでの時間をコントロールすることは出来ないので、俺も屋根板を張るのを手伝いに作業場を出た。
倉庫の屋根もクルルの小屋と同じく
リケとリディのほうが実家や里で経験があるためか、1段か2段かではあるが少しだけ作業が早い。なので、俺はもう一方を手伝うことにした。
サーミャとディアナが作業していない方に回って、軒先に当たる部分から板を張る。先に張った板の上半分に、次に張る板の下半分が重なるようにして1段上の板を張るとしていけば、雨もそんなに漏れては来ないだろう……多分。
「そう言えば、ここいらは長雨とかあるのか?」
俺は反対側で作業しているサーミャとディアナに大声で話しかけた。このあたりに住んでいたのはこの2人だから、聞くには都合がいい。
「うーん。雨が多めの時期はあるけど、2週間とかずっと降り続けるのは経験がないな。」
「そうね。どんなに長くても1週間もないわ。」
サーミャとディアナが答える。なるほど、梅雨みたいなものはあるということか。地下水があるとは言ってもそんなに深くまで森の木々が根を張っているかは怪しいし、そうでもなければ広大な森林を維持できるだけの水量は確保できなさそうだ。
「その時期は近いのか?」
「いや、少なくともあと1ヶ月は先だと思う。」
場所が少し違うとは言え、この森に住んでいたサーミャの言うことだから正しいのだろう。とすると、今は前の世界で言うところの5月くらいか。
梅雨というか雨季のようなものがあるのに、植生や気候が亜熱帯や熱帯っぽくないが、ここらは前の世界での気候帯とかの知識を投げ捨てるほうがいいのだろうか。地形がそもそも違うだろうから当たり前といえば当たり前か。丸いかどうかすら怪しいのだ。
俺は2人には質問に答えてくれた礼を言って、思考を作業に戻した。
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