第3話
「よく来た。1日経たずにここに来るとは思わなかったよ。一晩寝ずにずっと走っていたのか。」
「ああ、早くトレジャーハンターとやらになりたいからな。早く稽古をつけてくれよ。戦闘訓練か?狩猟か?」
「そうだな、まずは………とりあえず寝ろ。」
「は?」
なぜ寝なければならない。俺は早く夢を叶えたいんだ。夢を人より抱くのが遅かった、だから人より準備期間は早くこなさなければならないというのに。
「そうだな、君は狩りの時何を準備する?」
「罠と弓矢、あと解体用のナイフ、護身用の短い槍だな。」
「ものってわけじゃないさ、体調が悪い時に狩りに行くか?」
彼の言う通りだ。体調悪い時は正しい判断が下せなくなる。いつも冷静でいるつもりだった。俺は今、興奮しているのか?
「君は一晩徹夜をして走ったせいで興奮している。さらに自分が今まで求めていたもの、指針が見つかっているからさらに興奮している。今は落ち着かせ、元気な君に戻すべきなんだ。」
「わかりました。寝ます。」
服を入れた袋を枕にし、眠りについた。自身で思っていた以上に疲れが溜まっていたようだ。ぐっすり、何も警戒しない深い眠りについた。
「やあ、おはよう。よく寝ていたね。」
爺さんは家の中央にある囲炉裏の火をいじりながらこちらを見てニヤニヤしている。この爺は人の怒りの琴線に触れるのが好きなのか?頭に血が上って行っている感覚を覚える。
「で、俺は何すればいいんだ?一人寂しい爺のために家族団欒をやりに来たわけじゃない。」
「なんだ、家族のいない寂しいクソガキのために家族団欒をやってやろうと思ったんだがな。早速訓練がしたいとはマゾスティックなバカか。」
「なんだマゾスティックとは。いいから早く何をやればいいのか教えてくれ。教えてください。」
「飯を食いながら教える。そこに刺さってる魚と鍋の中にある汁を食いな。」
汁をお椀に注ぎ、串に刺さった魚にかぶりついた。どうやら爺は飯を作るのがうまいようだ。
「今、お前は何歳だ?」
「みんな曰く10歳らしいな。」
「どういうことだ?」
「浜辺の拾い子だからな。正確な年はわからん。」
「そうか、悪いこと聞いたな。10だったら15まで鍛える。自己鍛錬はしてきたようだしな。」
「柔軟、持久力だったら村の子供には負ける気がしないな。」
「子供で満足してどうする。トレジャーハンターになったらお前が相手するのは大人、または世界だ。」
世界という言葉に反応して首をかしげると爺は話を続けた。
宝物庫には鍵があったら簡単に入れるというわけじゃないらしい。宝物庫の周りに守護者と言われる超常の生物がいるらしい。つのイノシシやバカウマとはまた違うものらしい。四つ足の魚とか翼の生えたトカゲとかだと言っているが嘘としか思えないと思っていると爺は「疑うんだったら自分の目で見るまで疑っていればいいさ。第一ワシもそうだったからな。」と言っていた。
「で、肝心な訓練だがな。最初の二年は体力作り。畑仕事と狩りと銛突き漁、それと向こうの小岩までの水泳と山までのランニング、あとは崖の昇り降りかな。残り三年は戦闘技能の習得だな。」
「いいよ、やってやるよ。第一歩なんだからな。俺は0の宝物庫を絶対見つける。これは俺の生きる意味だと思うからな。」
「じゃ、畑仕事からよろしく!」
2年経った。身長はかなり伸びて150cmだったのが170cmまで伸びた。成長期が早いなと言われた。小岩までも息継ぎ無しでいけるようになったし、マラソンも全力疾走で帰ってくることができるようになった。爺はどちらも往復できるようにならないとなと言っていたが、本気で言っているとしたら殴りたい。さすがに限界である。
「二年間頑張ったな。とりあえず一区切りだ。体力も戦闘できるぐらいにはついているし基礎的な筋力もついている。いい傾向だな。狩りとマラソンは継続して、それ以外の時間は全て僕との組手とする。わかったか?」
「爺さん、そんなしわっしわなのに闘えんのか?」
「ま、今のお前なんぞ軽くあしらえるな。なんなら今からやるか?」
体力も力もついたガキから脱皮した俺を軽くあしらえるとはこの爺は俺のことを舐めているな。よし、ぶち倒してやる。
俺はもともと使っていた短い槍と修行中の空いた時間に作った短い槍改を持つ。爺は何も持たずに構えた。
「おい爺、さすがに舐めすぎじゃないか?武器持たねえのか?」
「宝具じゃない武器なんぞ鍛えた体に負けるわけない。かかってきな、初手は譲るよ。」
俺は短い槍の片方を真っ直ぐ差し出して突きに、もう片方を振りかぶり殴りつける。当たると思ったら、穂先の寸前で爺は右に避けた。流水のようにぐにゃりと曲がったよう見えたが、動揺はしてはいけないとすぐに心を持ち直す。突きに出していた槍を軽く放り投げ逆手にし、穂先で殴りつけるようにする。殴りつけていた方は石突で追撃するが爺に石突を掴まれてしまった。殴りつけていた方も穂先を止められてしまった。しかも平手で。
「おい爺、降参だ。今の俺じゃ勝てない。」
「こういう時は君のバカみたいな蛮勇さが発揮されると思ったけど違うんだな。いい傾向だ。」
「一つ聞きたいんだが、俺の短い槍改の穂先は研いでいたから横方向からもちょっとは切れるようになっていたはずなんだがなんで平手で止められるんだ?俺は幻覚を見ているのか?」
「その術をこれから教えるんだよ。」
俺はちょっと強くなったと思っていたのだが、まだまだ本当に一歩進んだだけだったようだ。
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