誰に向けてか、自分に向けてか。

 息が苦しくなるまで走りたい。人の波をくぐり抜け、肺が破裂しそうになるのを感じたい。踏切の音を通り過ぎ、カラスが頭上を飛びのを見つめながら、追いかけていく。私は、自由。誰にも止められぬまま、自分の足で、地面を蹴り、走っている。

 そういうことが、したいと思った夜。


 あの子に放った言葉を、今自分が言われ、ああ、彼も私と同じように、この痛みを感じたのだと、申し訳なさを抱いた。罪悪感。


 拝啓

 共に電車に揺られたあなたへ


 お元気ですか? 私は、元気です。今日も、昨日も、一昨日も、戦ってばかりいますが、生きています。

 あなたは、どうでしょう。疲れ果て、倒れそうになっていませんか。美味しいご飯は食べていますか。素敵な夢は、見ていますか?

 これ以上、質問ばかりすると、上京した息子に向けたお母さんの心配メールみたいになってしまうので、中断します。まだ、それを書く歳じゃないですし。


 こちらは空を灰色が覆い、なめくじや、かたつむりが地面を這う季節になりました。梅雨です。そちらは、どうでしょう。

 未だに家にテレビはなく、ニュースを見なくなってしまった私です。スマホで調べれば、済む話なのに、めんどくさがってしまっています。ごめんなさい。

 雨が降り続いているので、外出する度に、傘を持たないと安心できなくなりました。折り畳み傘が、欲しいこの頃です。まったくもって、欲しいものばかりです。駄目な蛇です。

 傘を持つと、私は小さい頃に見た大好きな映画「メリーポピンズ」を思い出します。彼女が傘を片手に、空を飛ぶのです。

 何度も私はその様子を夢見て、空を舞いたいと願いました。けれども、無念なことに、人間にはまだそのようなものを作る技術はないみたいです。残念。この歳になっても、同じことを夢見ることになるとは……。宇宙飛行士と同じですね。


 私の友人がSNSで「宇宙飛行士になりたかった」とポストしていて、師匠が言った言葉を思い出したました。私は彼女のように感情を表し、彼女は私のように感情を抑える必要がある、と。場の雰囲気に酔ってしまい、はっきりとは覚えていないのですが、そういうことをおっしゃっていた気がします。

 そして、友人のポストと、師匠の言葉の共通点とは、その友人が「彼女」だったということです。暴力的で、はっきりとしているのに、自分を抑えしまっている子。本当は、優しい子なのです。独特なアートセンスにいつも、私は羨ましがっていました。

 そんな子が、同じ時に自分と同じことを考えている。なんだか面白可笑しいような気分になりました。

 そこで私は師匠に「彼女に会いたい」とつぶやきました。「呼べるよ」そう、返事が来ましたが、私は思わず渋り、「しっかり考えたら、何でもよくなってきた」と続けました。今思えば、会っていたらどうなっていたやら。話すこと、無いよなーって。


 なんだか全く関係ない無い話になってしまいました。すみません。あまり、書く内容がないので、今日はここまでにします。


 おやすみなさい

 2018年6月11日 夜の23時 紅蛇より

 開いた窓から、雨音が入り込み、ポップコーンが弾けているように聞こえます。食べたくなってきました。

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