「悲劇のヒロインになりきれない、喜劇のヒロイン。それが私じゃない?」笑いながら、返事をした。辺りでは、静かに車を走らせる音しかしない。

「超絶美人になりたい」と友人に呟いたところ、「もう美人じゃん」と返事をしてくれた。私は照れそうになるのを誤魔化すため、ふざけた反応をした。

 そういう回答が返ってくるとは思わなくて、そう思ってくれているとは知らなくて、ただ、嬉しかった。

 私は君のそういうところが、素敵だと思っているよ。そう、誤魔化さずに、教えてあげるべきだと、今更後悔した。


 私が日記を書いている時に、母が部屋に入ってきた。

「何しているの?」「日記書いてる」「どうして?」「その日あったこととか、忘れないため。書くほうが、整理つきやすいの」「……そんなことより、勉強か、目を休ませなさい」

 冷たい声をして、奇妙な目を私に向けた。馬鹿な子を見ている時と、同じ表情。無駄なことをしていると思っている視線。私はいま、間違ったことをやっているのかと、錯覚してしまいそうになる。

 けど今更、書くことはやめられない。ごめんなさい、母さん。


 勉強しろと、言われるけど、勉強の仕方がわからない。何度もいろんな人に聞いたけど、曖昧な回答ばかりが返された。

 嫌いな人にも聞いたけど、見当違いな答えが届いた。無駄足。あいつ、私の喋る言葉が理解できないみたい。勉強の大切さについて、喋り始めたのよ。違う、もっと根本的な意味を知りたかった。


 嫌いな人が、どうしてあのような思考の持ち主になったのか、探っている。今のところわかったのは、彼の家庭、そして受けた教育が問題だったということだだ。

 教育は家、そして学校の両方。彼の育った国はコミュニズムの社会だったから、それも少し関係あると思うの。


 ある日、私は母と彼に「二人は私と同じ歳だった頃、何をしていたの?」と質問をした。最初に口を開いたのは、彼だった。

 彼は自分よりも学力の高い人を友人にし、毎日遊びもせずに試験勉強をしていた。そんなことを、自慢げに語ってくれた。それを聞いて、私は恥ずかしげもなく「可哀想な人」と呟いた。彼はそれを「Proud」なことだと言った。

 他にも、家庭の話をしてくれた。複雑らしく、愛されていなかった。けれども次にした話が「僕の最初の妻は、母のような、教育のある賢い人だった」ということで、母に何かしらのコンプレックを抱えていることが、わかった。けどなー、そんなの私の知らんこっちゃないわ。


 いい加減、話が長かったから中断させ、母に喋らせた。彼女の話は平和で、普通の女子高生の日常だった。

 学校へ行き、友達とも遊んでいた。バイトをして稼ぎ、自分のために服を買ったりしたことを、淡々と、けれども、間に嬉しそうになりながら、話してくれた。

 母さん、本当にかわいい。彼の話の後で、癒されて、話は終わった。

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