おむすびでまあるく

「ねえ 天領先輩知らない?」

雛の手にはおむすび5個。しかも朝炊いて、しっかり握って来たおむすび。


それに卵焼きと肉じゃが。


(一緒にたべようと思ったのに)


「天領部長ならさっきグラウンドで見かけたよ」

「ええっ? またぁ?!」


見れば負けず嫌いさんの槍がない。


「お昼くらい食べればいいのに」


グラウンドを見ると、確かに天領の姿が見える。雛はベランダにハンカチを敷いた。


夏間近 天領は寸でで優勝を逃した。悔しくてまだ引退できずにいる。


もぐ。


握ってきたおむすびを口に運んで、しばらく天領の姿を見やった。


(しょうがないな)


マネージャーじゃないけどね。


「先輩! お昼一緒に食べません?」と包みを揺らすと天領は手を上げた。


好きな具は昆布とおかかだと聞いて、脳裏にメモ。


「お味噌汁いる?」と魔法瓶から味噌汁をよそってあげていたら、優しい気持ちになった。


「........っ」


天領は負けず嫌いだ。

だから こんな風に緩めてあげないとカチカチになってしまう。


こころをまあるくしてあげよう。

だからあたしは巫女を目指そう。


「もういいんだよ。おむすび食べて。味噌汁飲んで」

「これ.....ずっと食べたいと言ったら?」

「? いつでも握るよ?」

「そうじゃねーよ.....ごちそうさん。ちょっと走ってくる」


負けず嫌いさんめ。


(これ.....ずっと食べたいと言ったら?)


なんだろう。

雛のこころをまあるくして。


『ちょっと! しまのおしりにお酒載せちゃやだ! いじめっ子~~』

『あははは』


成長 するんだな。悪ガキも。


****



「嶋香 なんか言った?」

「ううん? なーにも言ってませーん。うん 美味しい~」


「お袋に教わったんだけど むすびって難しいんだな。不恰好だ」


不恰好なおむすびは差し入れには大きすぎるけど。


「午後もお客様イッパイよ! 頑張ろ!」


ごちそうさまでした。

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