第百九十八話 光と炎と闇の刃が重なった瞬間
聖印能力を発動した柚月と朧は、静居と死闘を始めた。
やはり、刀がぶつかり合い、激しさが増す。
静居の方が、優勢にたっており、柚月達は、やや押され気味ではあるが、食らいついているようだ。
静居は、夜深の悲しみを発動して、魂を消滅させようとするが、柚月と朧が、危険を察し、後退して、回避した。
――朧、大丈夫か?
――怪我は、ねぇか?
「うん、ありがとう。俺は、大丈夫だ」
――そうか。
九十九と千里は、朧の身を案じる。
だが、朧は、怪我を負っていないようだ。
それを聞いた千里は、安堵した。
激しい戦いだ。
ゆえに、朧が、無理をしていないか、心配になったのだろう。
――柚月。
「大丈夫だ。静居と夜深を止めるぞ!!」
光黎は、柚月の身を案じるが、柚月は、答える。
まだ、戦えると。
柚月と朧は、構え、静居に向かっていった。
「させぬぞ!!」
静居は、一瞬のうちに、柚月達に迫り、何度も刀を振るう。
それも、狂ったように。
これは、静居が発動できる技の一つだ。
その名は、
無の力で光速移動し、相手を何度も斬りつける技だ。
柚月達は、追い詰められそうになるが、柚月は、異能・光刀を発動し、防ぎきる。
朧も、守られてばかりではない。
静居の背後に迫り、静居に斬りかかるが、静居は、それすらも、反応し、防ぐ。
静居は、後退し、柚月達と距離をとった。
「行くぞ、静居!!」
朧が、前に出て、炎と闇の刃を静居に向けて放つ。
技の名は、
九尾の火と竜神の闇の力を併せ持ち、敵を討つ技だ。
餡枇との相性も抜群であり、静居は、神刀・深淵で防ぎきる。
だが、柚月が、一瞬のうちに、静居の背後に回り込んだ。
静居は、柚月の気配に気付いたが、反応がわずかに遅れた。
「どこを見ている!!」
「ぐっ!!」
柚月は、光の刃を静居に向けて放つ。
技の名は、
異能・光刀で、光速移動し、光の刃で、敵を斬る。
静居は、腕を斬られ、柚月達から、距離をとった。
「中々、やるな。だが……」
静居は、技を発動して、一瞬にして、傷を癒した。
その名は、
無の力で傷を回復することができるのだ。
これにより、静居は、幾度となく、傷つけられても、無傷にしてしまう。
まさに、不死身と言ったところであろう。
「傷が、癒えた!?」
――まじかよ……。
朧も、九十九も、愕然としてしまう。
柚月と朧の連携は、完璧であった。
ゆえに、静居に、一矢報いることができたのだ。
だが、静居は、いとも簡単に傷を癒してしまう。
これでは、静居を止める事は、困難を極めるであろう。
静居は、自分が勝ったと確信を得たのか、不敵な笑みを浮かべていた。
――夜深の力を使ったのだろうな。
「どうすればいい?」
光黎は、推測する。
静居が、再生能力を持つのは、夜深と融合しているからであり、夜深が、創造主の力を奪ってしまったからだ。
だが、これでは、どうすることもできなくなる。
手の施しようがない。
柚月は、どのようにして、静居達をとめればいいか、見当もつかず、困惑していた。
――お前達が、同時に、技を発動し、私が、神の光を奴らに放てば……。
――勝機はあるという事か。
――そういう事だ。
光黎が、提案する。
先ほど、柚月の光焔神浄・光刀と九尾ノ覇刀を同時に発動し、すぐさま、光黎が、神の光を発動すれば、静居を重傷に追い込むことができる。
それも、再生能力ができないほど、命を削ることができるであろう。
つまり、静居に討つ勝つ可能性があるというわけだ。
千里の問いに、光黎が、うなずいた。
「やってみるしかないな!!」
「うん!!」
柚月と朧は、構える。
光黎の提案にかけるしかない。
勝算はあるかどうかは、不明だろう。
だが、勝機がわずかにあるのなら。
それで、静居を止められるならば、やってみる価値はあるという事だ。
柚月と朧は、光黎を信じ、地面を蹴る。
静居に、向かっていくために。
「させぬぞ!!」
柚月と朧は、同時に、技を発動する。
だが、静居は、深淵で薙ぎ払い。
柚月と朧は、あえなく、技を中断。
どうやら、わずかな隙を生み出さなければ、同時に技を発動する事は、困難のようだ。
柚月と朧は、連携して、静居に斬りかかる。
隙を生み出すために。
だが、静居は、ここで、無の力の弾を発動して柚月達に向けて放った。
技を発動したのだ。
その名は、
無の力の弾は、柚月達に襲い掛かり、柚月達は、一旦、後退して、距離を置く。
だが、全てを回避することはできず。
柚月達は、傷を負った。
「兄さん、大丈夫か!?」
「ああ、朧は?」
「俺は、大丈夫だ。でも……」
柚月と朧は、互いの身を案じる。
どうやら、軽症で済んだようだ。
だが、朧は、息を整え、静居を見る。
静居は、深淵を構えており、柚月達をにらんでいる。
全く、隙を見せない。
これでは、同時に、技を発動するのは、容易ではなかった。
「中々、うまくはいかないものだな」
「そうだな……」
柚月も、朧も、思わず舌を巻く。
静居は、手ごわいと改めて思い知らされたからだ。
それでも、負けるわけにはいかない。
和ノ国の運命が、かかっているのだから。
柚月と朧は、全ての命を背負っていると言っても過言ではない。
ゆえに、ひるむことなく、柚月と朧は、静居に向かっていった。
「まだだ。お前達が、後悔するのは、ここからだ!!」
静居は、技を発動する。
まがまがしい妖気のようだ。
柚月と朧は、危険を察知して、回避しようとするが、まがまがしい妖気は、瞬く間に、柚月と朧を覆い尽くす。
柚月と朧は、体勢を整えて、着地した。
しかし……。
「うっ!!」
「ぐっ!!」
柚月と朧は、うめき声をあげ、苦悶の表情を浮かべる。
突然、全身に痛みが走ったのだ。
それも、激しい痛みが。
光黎や九十九と千里も、うめき声を上げる。
どうやら、彼らも、全身に痛みが走っているようだ。
「こ、これは……」
「痛覚を増幅させられたか……」
柚月達は、静居が、何をしたのか、察してしまう。
静居は、痛みを増幅させる技を発動したようだ。
技の名は、
ようやく、痛みが治まった二人であったが、静居は、すぐさま、柚月達に迫り、襲い掛かろうとしていた。
――柚月!朧!来るぞ!!
光黎が、柚月達に警戒するよう警告する。
だが、先ほどの技を受け、柚月達は、注意力が散漫してしまったようだ。
静居は、柚月と朧に迫り、夜深の嘆きを発動する。
柚月達は、無の力の弾を切り裂き、傷を負うことはなかった。
だが、その時だ。
柚月達の足元から、術陣が、出現したのは。
「しまった!!」
柚月と朧は、回避しようとするが、術陣が、すぐさま、柚月達の足元を捕らえる。
これでは、逃げる事も不可能だ。
術陣は、檻と化し、柚月達を捕らえ、無の刃で、切り裂いた。
静居は、
虚無の地獄に閉じ込め、無の刃で、相手を切り裂く。
逃れる術はない。
八尺瓊勾玉でさえも、吸収は不可能なのだ。
檻が消え、柚月達は、血を流し、倒れてしまった。
「ふはははは!!やはり、お前達では、無理だったな。私を殺せるはずがない。止められるはずがない!!」
静居は、高笑いをし始める。
勝ったと、確信を得たのだろう。
もう、立ち上がる事すら、不可能だと察して。
静居の言う通り、柚月と朧は、起き上がろうとしない。
気を失ってしまったのだろうか。
だが、そんな事は、静居にとって、どうでもよかった。
静居は、柚月に迫っていった。
「では、そろそろ、殺してやろう。なぁ?夜深」
――ええ、光黎も、一緒にね。
静居は、深淵を振り上げる。
まずは、柚月から、殺すつもりだ。
柚月は、神懸かりを発動している。
ゆえに、静居にとって、厄介な相手なのだろう。
夜深も、賛同しているようで、光黎さえも、殺そうとしているようだ。
静居は、不敵な笑みを浮かべ、深淵を振り下ろした。
しかし、柚月が、静居の足をつかみ、静居の体勢を崩した。
「なっ!!」
無様に、仰向けになって倒れる静居。
静居は、すぐさま、起き上がるが、柚月と朧は、いつの間にか、視界から、姿を消してしまっている。
あれほどの傷を受けたというのに、なぜ、立ち上がれたのであろうか。
静居は、理解ができず、あたりを見回す。
その時だ。
「今だ!!朧!!」
柚月の声が、後ろから聞こえる。
静居は、振り返ると、柚月と朧が、静居に斬りかかろうとしていた。
だが、静居は、いとも簡単に、二人の刃をはじき返す。
動きが、鈍かったからだ。
柚月と朧は、体勢を崩され、静居は、二人に斬りかかった。
だが、柚月と朧は、強引に、踏ん張り、構える。
この時を待っていたのだ。
静居は、今、刀を振り上げている。
と言う事は、防ぐことは、不可能のはずだ。
静居は、その事を予想できなかったようで、目を見開いていた。
「まだ、終わりじゃない!!」
「これで勝ったと思うな!!静居!!」
柚月は光焔神浄・光刀を、朧は九尾ノ覇刀を同時に発動。
光の刃と炎と闇の刃が、静居を襲った。
静居は、防ぐこともできず、二人の刃をその身に受ける。
さらに、柚月が、神の光を発動した。
「ぐはああっ!!」
静居は、うめき声をあげ、血を流し、倒れる。
ついに、二人が、静居に勝った瞬間であった。
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