忍びのパン屋さん#4

「ナツキさん、一つ聞いても良いですか?」


 お店にナツキさんしかいないタイミングを見計らってわたしはクロワッサンを食べているナツキさんにそう声を掛けた。


「何ですか?」


「ナツキさんはいつも帰りにパンを5個買って帰りますよね?」


「そうですね。家でも美味しくいただいていますよ」


「1人で5個も食べてらっしゃるのですか?」


 わたしがそう返すとナツキさんは食べかけのクロワッサンをお皿の上に置き、手で口元を隠しながら笑った。


「このお店のパンはとても美味しいですけど、1人で5個も食べるなんて事は無いですよ。一緒に住んでいる妹と食べています」


「妹さんがいたんですね」


「今度連れてきますよ。ここのパンが好きで、シャープさんにも会いたがっていたので」


 ナツキさんはそう言い、残っていたクロワッサンを口に詰め込むと、クロワッサンをいつも通り5個買って帰っていった。



7月22日 シャープ

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