物陰のじいや#12

 孫というのは目に入れても痛くないという。その言葉に私は強く同意する。


 そんな目に入れても痛くない可愛い孫は、知らない人は居ない大型商業施設ユグドラシルの中にある龍人族のソルトという名の青年が営む大人気料理店インフィニティで働いている。


 私はそんな可愛い孫の働きっぷりを孫にばれぬように物陰でひっそりと見守っていなかった。


「ミリンさん、この料理を1番さまに」


「かしこまりました」


 今日は日曜日という事もあってかインフィニティにはひっきりなしにお客が来店し、孫は開店から休みなく働いていた。


「お待たせいたしました」


 孫はほとんど休んでいないのにもかかわらず開店直後と一切変わらないさわやかで可愛らしい笑顔を維持していた。


 接客業としてはごく当たり前のことなのかもしれないが、私はそんな当たり前のことを当たり前に出来る孫をとても誇らしく思った。


「ミリン、私も何か手伝えることがあれば」


「じいや、ご心配はありがたいですが、これは私のお仕事。じいやはお席でゆっくりと私の姿を見守っていてください」


「ミリンちゃんの言うと~~~り。そこで理科のおじいちゃんストーカーとごゆっくりどうぞ~~~」


 年より扱いをされているような気もしないでもないが、私はその言葉に甘えることにした。



6月24日 ショウユ

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