悪魔の洋服屋#11

「ユースケさん、先日の企画においてあなたの力は私にもよくわかりました。ただ、今回の件に関しては私の一存で決められる問題では無いのはわかって頂けますか?」


「もちろん承知しています」


「私もユースケさん同様に彼を評価しています。私個人としては彼には大きな成長を遂げて欲しい。そのためにはまず、彼の気持ちをユースケさん自身が彼と話し合ってください。私が判断を下すのはその後です」


「わかりました。本日はお忙しい中、お時間を割いていただきありがとうございました。失礼致します」


 デビル族であるオレにとってはアウェーな場所である天使界のとあるビルから出て来たオレは大きな溜息を吐いた。


「イベントの時とは比にならないくらい緊張した」


 そう呟いてオレは携帯電話の電話帳を眺めた。


「はぁ」


 今のオレはこのビルの社長さんの前に立った時以上に緊張している。携帯を持っている手が、オレの身体を支える足が、声を発する喉まで、俺の全身が震えていた。


「すぅ、はぁ。すぅぅ、はぁぁ。すぅぅぅ、よしっ!」


 オレは心を十分に落ち着かせてある男に電話をかけた。


「もしもし」



6月19日 ユースケ

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