天使の洋服屋#8

「ユースケ、今どんな気持ち?」


「どんなに我慢しても自然と笑顔になってしまう。ゼバもオレと同じ気持ちだろう?」


「確かに、笑顔が止まらない」


 ボクとユースケが笑みを抑えきれない理由。それは、ボクらがそれぞれデザインした服が遂に完成し、その服をコラボ企画のモデルであるラックアンラックさんに着替えてもらっているからだった。


「着替え終わりました」


「ました」


 着替えを終えてボクたちの前にやって来たラックアンラックさんを前にボクもユースケも声が出ないほど魅了されていた。


「今日まで見飽きるほど見てきた服だけど、今ほど良いデザインだと思った事は無い」


 毎回服を作る度に思っていることではあるのだが、服というのは誰かに来てもらって初めて服として完成するとあくまでボク個人はそう思う。


「お二方とも着替えが済んだようなので、早速撮影の方を開始いたします」


「はい」


「わかりました」


 今回のコラボ企画のポスター撮影にラックアンラックさんが向かうとユースケがボクに熱い視線を向けながら右手の親指を立ててその手を僕に向けていた。


 その行為の意味が理解できたボクは言葉で返すなんて野暮なことはしないで、同じように親指を立ててユースケに向けた。



5月28日 ゼバ

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