ドワーフのおもちゃ屋さん⑦

 開店の1時間前、俺はセンことセンリョクに呼び出され工房へ足を運んだ。


「セン、来たぞ」


 工房の中へ声を掛けると、ドタドタといううるさい足音と共にセンがやって来た。


「アンさん、待っていましたよ」


「その表情、遂に出来たみたいだな」


 この2週間、センは俺が教えた技術とセンが独自に学んだ技術を存分に使って俺が拾ってきた旧式のアンドロイドを修理し改良していた。


「アンさん、見ていてください」


 センはそう言うと膝を抱えて座っているアンドロイドの後頭部を開き、ポケットから取り出した小さな歯車をはめ込んだ。


「アンさん、最後にこの歯車を回してください」


「俺で良いのか?」


「こいつがここに居るのはアンさんが連れてきたからですから」


「そうだな。じゃあ、回すぞ」


 俺は歯車を優しく回した。すると、アンドロイドの中でガガガと歯車がかみ合って回りだす音が聞こえた。


 しばらくするとその音は聞こえなくなり、アンドロイドが立ち上がった。


「マスターアンザン、ワタシはアナタのチカラにナリマス」


「マスターなんて気恥ずかしいが。君は俺の店の良い戦力になりそうだ。名前を付けてやろう。カコウというのはどうだ?」


「カコウ、ソレがワタシのナマエ」


「良い名前ですね。アンさん」


「名前も決まったところで、開店準備だ。行くぞ、セン、カコウ」


 俺たちは新しい仲間を加えて工房を出た。



3月1日 アンザン

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