エルフの絵本屋さん⑥
今日の営業を終了し、小さなため息を吐いたワタシは電気ケトルでお湯を沸かしてそのお湯で紅茶を淹れた。
「さてと」
紅茶の香りと味を堪能したワタシは立ち上がって気合を入れた。
「まずは」
ワタシは以前、世渡オーナーに買ってきてもらった色鉛筆を手にして原稿に白と黒以外の色を与えた。
「ここの色は……」
不意に手から色鉛筆を落としてしまい、ワタシは落とした色鉛筆を拾うために原稿から目を逸らした。
「よいしょ」
エルフとしてはまだまだ若い方であるワタシだけれど、自分以外誰もいない事を良い事に年寄りくさくそう呟きながら色鉛筆を拾い上げ机に視線を戻すと机の上にある時計はあと十数分で2月20日を迎えようとしていた。
「まずいまずい」
ユグドラシルは0時になると防犯機能が機能するため、従業員はそれまでに帰宅するか地下の居住スペースに移動する必要があった。
ワタシはこんな時の為に居住スペースを一部屋借りているので急いで原稿をカバンに詰め込み、お店の施錠をして居住スペースへと逃げ込んだ。
「時間は……」
ワタシの腕時計は短針が11と12の間、長針が59を指していた。
2月19日 ローズ
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