エルフの絵本屋さん⑤

「いらっしゃいませ」


 お店にお客様が来たのでそう言うと、魚人族のお客様はとてもニコニコとした笑顔でワタシを見つめていた。


「えっと、何かお探しでしょうか?」


「ご依頼があったのでやって来ました。よろず屋のお手伝いをさせて頂いているサファイアと言います」


 サファイアという少年は一切笑顔を崩すことなくそう名乗った。


「オーナーは?」


「申し訳ありません。世渡さんは別のお仕事が入ってしまったため力不足かとは思いますがこのサファイアが代理でこのお仕事を引き受けさせていただきました。精一杯頑張りますのでよろしくお願い致します」


 世渡オーナーでは無いのは少し残念ではあるけれど、今日の依頼は大変ではあっても難しいものではないのでサファイアくんにお任せすることにした。


「困ったらいつでも聞きに来てくれて構わないから、今言った内容でお願いできますか?」


「わかりました」


 サファイアくんはわからないことがあった時にはきちんと質問をしつつ手際よくワタシの要望通りのお仕事を行ってくれた。


「サファイアくん、お疲れ様でした」


「では、戻りますのでまたお困りの際はよろしくお願いします」


 世渡オーナーも良いけれど、サファイアくんを指名するのも悪くは無いかもしれないとワタシは彼の背中を目で追いながらそう思った。



2月12日 ローズ

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