世渡のよろず屋④

 ユグドラシルは最近ある変化が起こっていた。


「世渡オーナーに頼みたいことがあるのだけど」


「ローズさんも新しい授業員をお探しですか?」


「そう。誰か良い人は居ない?」


 ユグドラシルではある種族が店主を務める店が出来た場合、同じ種族の者しか従業員になれないという誰が決めた訳ではないが当たり前となってしまっていた暗黙の了解が存在していた。


 だが、最近になってユグドラシル開店当初から営業を行っている龍人ソルトさんの料理店インフィニティで人間の理科を雇ったことでユグドラシル全体が種族の壁を越えた店づくりをするようになった。


「僕はあまり交遊関係が広い方ではないから、申し訳ないけれどすぐに紹介できる人は……」


 新しい従業員かつ別種族の人を探したいと思っている各お店の店主はオーナーという立場上多くの種族と関わる僕の所に来るのだが、僕の交友関係は人間を除けばユグドラシルの関係者くらいなので新しい従業員を紹介するのはなかなか難しかった。


「そうか。そうだよね」


 これで何度目かもわからないほど見て来た各店主の落ち込み顔を見た僕はこの問題を改善することに成功した。


「僕から従業員を紹介することは出来ませんが、明日からオープンするこの場所を紹介させてください」


 そう言って僕はあるお店のチラシをローズさんに手渡した。


「妖精の職業案内所?」


「お店側がこのお店に求人を出すと、この店が仲介役となってお仕事を探している方に提案をするというのが基本的なシステムだと聞きました。詳しくはお店で教えてくださると思います」


「じゃあ、早速明日にでも行ってみるとするわ」


 ローズさんはチラシをじっくりと見ながら帰って行った。



2月4日 不知火世渡

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