第77話 導き

 一瞬だけみゃーこが表示したステータスを覗き見したが、ステータスの諸々の値はともかく、スキルの白虎化がどうしても気になって仕方がなかった。


(ナビー、あれってどういうスキルなの?)


(文字通り白虎に化けるスキルです)


(それは分かってるんだけどな……ん?ちょっと待って)


 みゃーこはつい先程、誰かの声に導かれてダンジョンに潜っていたと言った。その声の主はおそらくナビーだろう。だとするならばこうなること白虎化もナビーは見越してみゃーこをダンジョンに導いた、と考えても何ら不思議ではないだろうか。


(ご名答です……が、ただ一つだけ訂正することがあります。素質は十分有りと判断していましたがスキル――白虎化に関しては、私でも予想だにしていなかったことです)


 ナビーが僕に対して念話で話し終えるのと同時に、みゃーこはステータスを消し、更に話を続けた。


「それでもっとステータスを上げるために潜っていたら、また急にスキルの欄に白虎化が現れて、僕をダンジョンに導いた声とおにゃじ声が使い方を教えてくれて、今に至るにゃ」


 みゃーこはスキル入手の経緯を話し終えると疲れた様子で一息吐いたが、すぐさま「あ、そうだにゃ」と思い出したように前置きし、


「話せるようにゃったのは、あのフランさんが起こした爆発の時だにゃ」


 今までみゃーこの話を掘り下げていたフランさんは、あの時の失態を思いだしているのか、赤面しながら言葉を紡げずにいたので、僕が代わりに掘り下げることにした。


「何でそうなったか分かる?」


 正直なところ、ナビーに聞けば分かりやすくかつ手短にその真相を知ることが出来るのだが、コミュニケーションは大事なので分かりづらくても、長くなってしまってもみゃーこ本人から直接聞くことにした。


 何か調べものをする時と同じようなものだ。

 ネットや辞書で調べた方が賞味な話早いのだろうが、身近な誰かに聞くことでそこから派生する予備知識的な会話も楽しむことが出来るかもしれないと言う風に。


「よく分からにゃいけど、多分グレードアップしたのと同時に喋れるようににゃったのにゃ」


 確かグレードアップの方法は、簡潔に言えば限界点の突破だ。


 あの爆発がグレードアップのきっかけとすると、僕がみゃーこに覆い被さって守りはしたが、状況的には死に瀕したと見なされたからなのだろうか。ともかくみゃーこがこれから先大きな戦力になりそうなことは、僕たちにとっては僥倖と言えるだろう。


 そんなこんなで他愛のない雑談をしていると、ダンジョンの出口前まで着いた。


「みゃーこ、一応だけど外では極力しゃべらないようにして欲しい」


「任せてほしいにゃ」


 と、軽く注意をして僕たちはダンジョンを出た。

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