第75話 達成
「ギャオ」
再度、最初と同じ唸りを白い虎が発すると再度同じく白く発光し、すぐさまいつものみゃーこへと姿を変えていた。
「どうだったかにゃ?」
いつものみゃーこはこちらの心境など見向きもせずに、心なしか疲れが見えるが非常に間が抜けている声音で感想を求めてきた。
「どうだったもこうだったも無いよ!!いつそんな凄いこと習得したの!?」
虎化に関しては100歩、いや千歩譲って見過ごすことが出来ても、白い虎に変化するのはさすがに何万歩譲ろうが看過することは出来ない。それは白い虎――白虎と言えば、かの有名な四神の一柱だからだ。
そもそも四神とは中国の天文学のもので、東は青龍、北は玄武、西は白虎、南は朱雀、と東西南北に分かれその方角に司られた獣のことだ。
因みにだが、青春という単語の成り立ちは、人生を四季に例え、若年期は青龍の春で青春、からきており、壮年期は朱夏、熟年は白秋、老年は玄冬と表現されることがあるらしい。
余談は置いといて、隣で茫然自失としながらボーッとみゃーこを見ているフランさんに、何回か声を掛け、ようやく反応を貰えたので尋ねる。
「こういうことってあり得るんですか?」
「……いいえ、見たことも聞いたことも無いわ」
フランさんのその答えは、案の定と言えば案の定だった。
仮に誰かの飼っている動物がこういう風に何かしらの進化が出来るようになった場合、様々な問題をもたらす恐れを考慮すると、秘匿するのが普通だからだ。
「とりあえずみゃーこのそれは置いておいて、宝箱の中を検めましょう」
僕がそう言い、あり得ないと言わんばかりの表情を浮かべているフランさんと、未だ興奮冷めやらんとしているみゃーこが、それぞれ出来る範囲の頷きを確認した後、何が起こっても良いように気持ちを切り替え、落ち着き払って宝箱を空けた。
「本当にあるんだ……」
宝箱を空け中身の付与魔法と書かれている小瓶を見たとき、呆気にとられていたはずのフランさんは開口一番にそう言った。
みゃーこの一件で隅の方に追いやられていたが、スキルがダンジョンの中で見つかることも天文学的な確率と言われてるので、驚きに驚きが乗せられたことによって、
「それじゃあ、習得しますね」
僕は慎重に小瓶を手に取った後、中に入っていたラムネのような物を口に入れた。そしてやがて小瓶と、その小瓶が入っていた宝箱は音もなく消失した。
「それで習得できたの?」
「はい、これで目的達成です」
「そっか。じゃあみゃーこちゃんの事を話しつつ帰ろっか」
そうして目的であるスキルの種――付与魔法を手に入れた末に習得し、ダンジョンから帰ることとなった。
ここではスキルの他に思いも寄らない収穫が二つほどあったと言えよう。
一つはフランさんの戦闘力の高さ。二つ目は、みゃーこの白虎化だ。
二つともこれからの戦闘、ひいては魔神との最終決戦に多大なる助力となり得るだろう。もっとも二人の参戦は強制ではないので、もし参加してくれるのならば、という話だが。
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