第72話 明けた先
トンネルが明けた先では、何時突然何かが牙を剥いてくるか予想も付かないので、気と身を必要以上に構えながらゆっくりと入っていく。
「――――」
目を思わず瞑ってしまうほどの眩い光に一瞬包まれ、ようやく光から解放され視界が安定した後、前方に広がっている部屋の中央には宝箱が鎮座していた。
「少し罠っぽいわね」
フランさんはさすがと言うべきか受付嬢の力を遺憾なく発揮し、瞬時にそう分析した。
前回、異世界に来たばかりで舞い上がっていたということもあってか、何も考えずに無鉄砲で闇雲に突っ込んで罠に引っかかった僕とは大違いだ。
「モンスターハウスの時もこんな感じでした」
「そのー……まさかとは思うけど……」
フランさんは僕の顔を訝しげに見つめてきた。
「…………」
僕が起こした行動は、おそらくフランさんが今考えているそのまさかなのに加えて、そのまさかは冒険者として一番やってはいけない行動だと今は理解しているので、あの時の余りの無知振りから羞恥心を感じ思わず黙ってしまう。
「そのまさかなんだ……」
ずばりと僕の表情で言い当ててくる辺りは、年上の余裕からなのかは分からないが、僕は渇いた笑いでそれを誤魔化し、
「それよりどうやって中を
「モンスターハウスだと分かっていて挑むって聞いたこと無いから、今一分からないわね……」
真剣な眼差しで考えるフランさんは頼れる方のフランさんなのだが、どうもこの局面だと最善手は思いつかないらしい。と判断した瞬間、フランさんの表情がこれまでと一変し、考えるときに顎にやっていた手を握り、反対の手の平を打つようにして、
「真冬くんのスキルなら何か良い手を見つけられるんじゃないかな」
僕のスキルとはナビーのことなのだろう。
僕もナビーに打開策を教わるのは考えていたが、ナビーが前に言った――ナビー自身が封じられたときのことを考えて――言葉は的を射ているので出来るだけ頼らないようにと考え、思い浮かんでまもなく排斥した。しかし、今回ばかりは経験を積んでおくと言った具合で、ナビーに頼むのも良いのではないか。
(ということでナビーさん。ここはどうか一つ頼まれてはくれないでしょうか)
ナビーには僕の考えは筒抜けなので、間を端折って用件だけを伝えた。
それを受けたナビーは、ため息を吐きながらしょうが無いと言った様子で、
(……今回だけですよ。あの宝箱に触れた途端、罠が発動され魔物の大群がこの部屋に召喚されます。魔物自体の強さは分からないですがおそらく真冬さん、あるいはフランさんのどちらか一人でも対処できるでしょう)
僕はナビーから聞いたことをそのままフランさんに伝え、それが終わるとナビーが訳の分からないことを付け足した。
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