第43話 成長
チャプン
次に何が起こるか頭が働かないため全く予想が出来なく、泡と豆鉄砲を食っている僕が入っている浴槽の反対側――すぐ隣に、さくらが背を向けた状態で入ってきた。
僕とさくらが一堂に会しているこの浴槽は、1人で入ることを前提に考えられているのか、この世界特有の物かどちらかは分からないが、あまり広い方ではなく、と言うか狭い方で、大人が2人も入ると寿司詰め状態かつ、お互いの体と体が触れあうぐらいの大きさだ。
テンパって長くなってしまったが、要するに現在、僕とさくらの身体は狭さという不可抗力のせいで、がっつりと触れ合っている状態。しかも、服など何にも介していない直に。
小さい頃は度々一緒に入っていた、と親からからかい様に聞いていたが、今はもう成長してお互い高校生。加えて、思春期真っ只中なのだ。
全国津々浦々、男子高校生の憧れのシュチュエーション100選に入っているかもしれない、いや入っているだろう。が、しかし実際、いざ自分がその立場になってみると、楽しめる余裕も、度胸も一ミクロンも持ち合わせていないので、頭が真っ白になってパニックになってしまう。
故に、
数分の間、浴槽内でT字のような感じで2人浸かっていたのだが、さくらに対して横向きだと目のやり場に困るので、またまた理性をフル稼働させ、さくらに背を向ける。
これでお互い背を向けた状況となる。
お互いが背を向ける状態になってからしばらく経った頃、何を言うわけでも無く、何の前触れも無く、さくらがおもむろに僕の背中に体重を預けてきた。
初めて触れる女の子特有の吸い付くような柔肌と、改めて触れる幼なじみの女の子の部分に、緊張が最高潮へと達し、心臓の拍動音が皮膚を通じるどころか、空気さえ振るわせてさくらにまで伝わってしまうのではないか、と思うぐらい、僕の身体の中で騒がしく鳴り響いている。
もしかしたら、心臓の音が聞かれてるかもしれないと思うと、無性に恥ずかしくなり、理性が決壊するのを必死に堪えながら、さくらに聞いてみた。
「……な、なんで入ってきたの!?そんなに長く入ってた?」
過度な緊張で、静かな浴室に響く言葉が震えているのを自分でも感じていたが、一度乗りかかった船なので、オールという名の心が折れそうになるも、勢いで漕ぎ切った。
無言による緊張は、僕の一言で霧散し、お風呂の湯気のように消え去ったが、次のさくらの一言でまた別の緊張感が漂い始める。
「大事な話をしようと思って……」
さくらは、なんとも歯切れの悪い返答をしてきた。
普段は何に関しても、相手が誰であろうと、自分の意見を遠慮せずに、しかし礼節を弁えながら伝えられるさくらなのだが、そこまで言い淀むということは、今回だけは本当に言い辛いことなのだろう。
おそらく、さっきのウィルの話だろうと大体は予想できるが、大事な話と前置きをする位だから、僕が先読みして答えてしまうと、双方のためにもならない。なので、ここは本人の口から直接聞き出すことにした。
好意と決意は、本人の口から直接聞かないと、本当の形から歪んでしまう。
「それってどんな話?」
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