246話 世界会議へ向けて 後編


 さてさて、カロフの話ではレオン達はリオウのところにいるという話。

 現在このヴォリンレクス城には"仮"の魔導師ギルド支部として一区画が割り当てられている。一般人は立ち入れないから本当に仮としてだけだがな。


「支部は確かこっちの方だったはずだが……」



「おーい! ムゲンー、セフィラー、そんなところで何してんだー!」



 おや? この離れた位置からでも耳を通り抜けていくようなはきはきした声はもしや。


「サティか」


「あっちの方からあたし達を呼んでるわね」


 声の方を向くと、こちらに手を振るサティと隣にはレイ。この二人に呼び止められるというのも最近ではよくある話だが、今回はどうも二人だけではないようだ。

 そちらに近づくと、サティ達とは別に二人の人影が……その正体は。


「久しぶりムゲン君! また会えて嬉しいわ」


「おお、リアか!」


 そういえばレイから世界会議に出席する王様の付き添いでこっちに来るとか言ってたな。

 となるともう一人は……。


「魔導師ムゲン殿、以前の争乱の際におけるヴォリンレクスとの同盟助力には本当に世話になった。改めて礼を言わせてもらいたい」


「こっちもか。まぁ今更改まって謙虚になることもないし、その言葉は素直に受け取っておくとしますか」


 リアやサティ達『紅聖騎団クリムゾンレイダーズ』が所属する国家『レインディア』の王様であるリオンだ。

 噂ではリアといい関係だという話だが……。


「ん、どうしたのムゲン君? そんなにまじまじと私とリオンを交互に見たりして」


「いやいや、特に深い意味はないんだ」


「本当か貴様……。姉さんを邪な目で見ることはこの俺が許さんからな」


 レイのシスコンも相変わらずか。

 ……しかし、私は試練の中でリアがレインディアの王女として存在している姿を見た。

 いや、あれは別の事象世界での出来事で、しかも十年後の話ではあるのだが……その世界では。


「……なぁリア、ミミは今どうしてるんだ?」


「え、ミミちゃん? ミミちゃんならお留守番。ちゃんと皆のお姉さんとしてしっかりやってるわよ。もしかして会いたかった?」


「あー……そういうわけじゃないんだけどな。実は記憶を取り戻して私に会いに来た……なんてことがあるかも。とか思っちゃって」


「流石にそれは希望的観測すぎるだろう。ムゲンらしくない考えだな」


 確かに人から見れば今の私は、ものすごい偶然に期待してる人、に見えるだろうな。経験と計算が中心で生きてきた私にしては不自然な考え方だと。

 ただあの可能性の世界は、あの流れのままに進めば実際に起こることが確定した出来事であることに変わりない。だから、同じ奇跡がこの世界でも起きるんじゃないかとちょっと期待したんだが。


「やっぱ、そううまくいくもんじゃないか」


「というより、誰よそのミミって子? また昔の女……」


「どぅわ!? いや違うってセフィラ。ミミとはそういうんじゃなくてだな」


「あ、もしかしてあなたがセフィラさん。サティ達の手紙にいろいろ書かれてたから知ってるわよ。ムゲン君も隅に置けないわよね、私達と別れた後こんなにカワイイ子と知り合ってイイ感じの関係まで進んでるんだから」


 なんかリアが急にイキイキしだしたぞ……こんなに恋バナ系の話に食いつく性格だったか?


「それで? 結局その子とはどういった関係なのよ」


「大丈夫よセフィラさん。ミミちゃんはムゲン君にとって妹のようなものだから」


「妹……それなら別に……。でも待って、恋愛シミュレーションだと妹キャラだって攻略対象なんだしそういう関係に発展する可能性だって……」


「ゲーム脳やめい」


 攻略対象とか言うんじゃありません。読者様にいろいろと誤解を招きそうな発言は控えよう。

 とにかく、この話はこれでおしまい。偶然ではあるがこうして出会えたんだし、ちょっと政治的な話もしておこう。


「しかし、こうしてヴォリンレクスにいるってことは、リア達も世界会議に参加するってことだよな」


「うん、レインディアはここの同盟国でもあるしね」


「ただ、同盟を結ぶ最大の理由であった魔導師ギルドの暴走がなくなった今、この先どう関係を保っていくかという議題は当然必要である……と、我々は考えている」


 そうだよな……私の第一目標としては世界間同士での争いを止め、終極神への脅威に対して協力しえる段階に進むこと。しかし国家としてはそこから先、平和が訪れた際の取り決めや領地、支配権など問題は山積みだ。

 今回の世界会議はそのことについても話し合うこととなるのだが、この問題に関してだけは私が大きく口を出せる問題じゃないからな。


「ただ悪いやつをやっつけるだけじゃ世界は平和にならないってのが難しくてアタシにゃどうも頭がこんがらがりそうだよ」


「そこは俺達が考えることじゃない。俺達がやるべきことは……終極神を倒すこと。そうだろうムゲン」


「ああ、その通りだ」


 どれだけ先のことを思案しようとも、まずは私達が終極神の脅威からこの世界を救うことができなければ意味がない。

 だから私達は私達で、やるべきことをやればいい。


「さて、もっと話したいことは沢山あるが、私はまだまだ行かなきゃならんところがあるからな。お前達にこいつを渡して私は次にいかせてもらうよ」


「なんだこの紙は?」


「招待券ねぇ、またなんか面白いことでも考えてんのかい?」


「それは時間になってのお愉しみってことで。んじゃな、またあとで」


 私達はそのまま別れを告げて、途中だった魔導師ギルド支部への道のりを再び歩みだすのだった。




 そんなこんなで無事支部まで到着だ。途中寄り道してしまったがレオン達はまだ中にいるだろうか?


「おじゃまー、レオン達はおるかねー?」


「あ、師匠じゃないですか。ギルド支部に何かご用ですか?」


 お、いたいた。その隣にはエリーゼにシリカと……全員揃ってるな。


「お久しぶりです魔導神様。レオン君からお戻りになられてるとは聞いていたのですが、出迎えに行けずに申し訳ありませんでした」


「別にいいっての。リオウだってギルドマスターになってめっちゃ忙しいだろ? こんな時期だし手が足りないのは私も理解してるさ」


 ギルドマスターの仕事ってまじめにやってるとめちゃくちゃ忙しいからな。これも別の事象で体験済みだからリオウの苦労は嫌というほど理解できてしまうんだこれが。


「だからと言ってわたくし達をこうしてこき使うのは納得いきませんけど」


「エリーゼさん、私達は名目上だけでもギルドマスターである兄さんの補佐という形でギルドに在籍してるんですから、多少なりとも兄さんの手伝いをするのは当然です」


「それは理解してますわ。ただわたくしは自国の仕事も残っているのだからほどほどにしてほしいということを言ってるの。フィオやわたくしに仕えてくれてる魔導師の子達が補佐してくれてるとはいえ限界があるのよ」


 なんだかこっちもこっちで慌ただしいこって。

 しかしエリーゼに仕えてる魔導師の子……か。多分あれだよな……最初に出会った取り巻き三人娘。


(ってことは、アイラもいるわけだ)


 一瞬口に出してしまいそうだったが、またセフィラにあらぬ疑いをかけられてしまうため寸でのとこで飲み込む。

 そもそもあの事象でアイラを紹介されたのは私が忙しそうにしていたためと、一向に彼女ができない私を見かねてエリーゼが気を利かせてくれたからこそだ。


「……」


「どうしたのムゲン? 熱い視線はいつでも歓迎だけど、時と場合は選びなさいよね」


(今の私には……その必要ないだろうしな)


 それに、この事象世界でもアイラが私を好いてくれていたとしても、私はそれに応えることはできない。だからきっと、このままでいいんだ。


「して魔導神様、此度はどのようなご用件でいらっしゃったのでしょうか?」


「いい加減そんなかしこまんなくてもんだがな……。まぁ一応用事があったのはレオン達なんでギルド事態に用はないんだ」


「僕達ですか?」


「おう、とりあえず先にこれ渡しとくな」


 そう言ってレオン、エリーゼ、シリカの三人にカロフやレイ達に渡したのと同じ招待券を手渡していく。


「仕事もいいけど近を詰めすぎるのもよくないぞ。だから、その時間には必ず集合するように」


「またおかしなことでも考えてるんでしょうけど……まぁいいでしょう」


「セフィラさんも参加するんですか?」


「うん、あたしも詳しくは教えてもらってないんだけどね」


 そこはまだまだサプライズに取っておくということで。サプライズを先にバラしたら意味ないだろ?

 さて、こっちはこれでいいとして、リオウ達魔導師ギルドは世界会議でどう動くか気になるところだ。


「しかしリオウ、忙しそうだが世界会議の準備は大丈夫なのか?」


「今まさにそれに関する資料をまとめているところです。魔導師ギルド内には多くの情報が集まっていましたので、それをヴォリンレクスの文官の方々と協力して参加国同士の橋渡しのような役目を受け持っているところですよ」


 確かに魔導師ギルドの存在するブルーメは世界の中心ともいえる場所にあるからな、これまでは後ろ盾もなかったわけだしそりゃ集められる情報は嫌でも集めてるか。

 ……さらに、前マスターのマステリオンの周到さならその辺に余念はなかっただろうしな。


コンコン……


「っと、すみません魔導神様、どうやら来客のようです」


「みたいだな。そんじゃ私達は隅っこにでも避けて静かに出ていくことにするよ」


「せっかく来ていただいたのにロクにおもてなしできずに申し訳ありませんでした……。どうぞ、お入りください」


「失礼します」


ガチャ……


「ありゃ? なんでこんなところに?」


 と、そのまま入れ替わりでササっと退室しようとしたが、入ってきた予想外の人物だったためつい話しかけてしまった。


「限か、ここにいるということはお前も魔導師としてここに所属しているということか?」


「うんにゃ、私はたまたまここにいただけだ。そっちこそ珍しいな、魔導師ギルドに用事なんて」


 扉を開けて入室してきたのは星夜だったのだが、特に関わりのないはずなのにどうしてここに来たのか。


「やっほーゲンちゃん。あたし達はちょっとしたお使いできただけだよー」


「……です」


 フローラにミーコも一緒か。当然のように星夜の後ろにいるフローラだが、宿り場である魔導バイク“スターダスト”から一定距離しか離れられないため、現在はこの城内をギリギリ動き回れる程度しかなかったりする。

 それはいいとして……。


「用事ってなんだ?」


「第四大陸のセレスティアルから先ほど代表が到着した。ヴォリンレクスの者が対応してくれてるが、どうやらギルド支部にも伝える必要があるということなのでオレが直接伝えに来た」


「なるほど、セレスティアルの方々の到着、確認させてもらいました。これで参加表明していた全国家が揃ったということになりますね。ありがとうございました」


 これで世界会議も全部集合か。聞いた話では参加を拒んでる国家もあるみたいだが……それもそれで、会議の議題に挙がることだろう。


「それでは、オレ達はこれで失礼させてもらう」


「っととぉ! 早い早いって星夜。私からはお前にもうちょっと用事があるんだよ」


 相変わらず簡潔としてるな星夜は。仕事人気質なのもいいがもうちょっと世間話に寄り道しても文句は言われないと思うぞ。


「はいはい、とりあえず皆にはこれを渡しておくぞ」


「しょたい……けん?」


「なになにー? 面白そー」


 これまで渡してきたのと同じものを三人に手渡して……これでコンプリート。あとはカロフがディーオやアポロ達に渡してくれてれば全員にいきわたっただろう。


「それと星夜、お前には今度時間が空いた際にこのパーツを作ってほしいんだ」


「設計図か。またオレの“救恤”で何か作ろうということか」


「まぁそういうことだ」


「え? ちょっと待ってムゲン、今“救恤”って言ったわよね?」


 ……あ、そういえば忘れてた。ドタバタしてたうえに疲れがたまっていたせいで言い忘れていたが。


「セフィラ、星夜はお前の“七美徳”を受け継いだ一人だ」


「あー! やっぱり! あんた数年前にあたしのところから逃げた方ね!」


「もしやとは思ったが……やはりあの女神か。限、どういうことか説明を頼む」


 というわけで、セフィラには逃げた星夜は第四大陸で活躍していたこと、星夜にはセフィラがもう女神政権とは関わりのないことをそれぞれ説明し納得してもらった。


「不思議な縁もあるものねぇ」


「お互いに執着する理由がないのならオレはとやかく言うつもりもない。それに、限にとって大事な人物だというのなら、オレは快く仲間として受け入れるつもりだ」


 流石元エージェント、割り切りも受け入れも明確な理由が示されれば即決即断。話が早くて本当に助かる。


「話は戻るが限、このパーツの形を見るに完成形は……腕、でいいのか」


 まぁ設計図を見れば大体どんなものを作るか予想はできるか。

 ただ、星夜の"腕"という発言に反応したのは、一緒にいたミーコ達ではなく……。


「師匠……その、"腕"って……」


「ああ、お察しの通り……レオン、お前が戦線に復帰するための新しい腕を作ってやろうって話さ。言っただろ? その腕は私がなんとかしてやるって」


 今のアステリムの技術では製造が難しいパーツばかりのためどれだけ時間がかかるか私も不安だったが、星夜がいてくれればその問題も一気に解決できる。


「なるほど、そういうことか。なら任せておけ、オレが最高の腕を作ろう」


「師匠、セイヤさん……ありが……ありがとうございます!」


 その涙は、ただ自分に新しい腕が与えられるからというだけではないだろう。

 無力となり、何も力になれずに悔しい思いをしていた自分が再び力になれると知った喜びからくるものだ。

 もう少し時間はかかるだろうが、世界会議が終わるころには完成させておくさ。


「さて、これで用事は終わりか?」


「おっと、引き留めて悪かったな。話はこれで終わりだ。この後はまだ予定が詰まってるのか?」


 正直言って星夜は私が戦力として連れてきてもらったため世界会議には関わりない人物のはずだが。


「あ、じゃあゲンちゃんも一緒に行く?」


「行くって、どこにだ?」


「セレスティアル代表のところだ。オレ達も一応護衛という扱いらしい。正確には、勇者である剣斗達のお供ということらしいがな」


「あいつらも来てるのか! それなら私も一緒に行くぞ」


 まぁ確かに、国の代表の護衛のためにあいつらがついてくるのもなくはない話だ。


「会いに行くのはいいが限……少し覚悟しておけ。セレスティアルの代表は、あのラフィナ王女だからな」


「……マジ?」




 その後、案の定セフィラからラフィナとはどんな関係だと問い詰められたので、第四大陸で起きた事件の内容を説明しつつその彼女達が待つであろう場所へと向かっていた。


「ムゲンって結構デリカシーないわよねー。そりゃ恨まれても仕方ないわよ」


「やめてくれ、その言葉は私によく効く……」


 私だってあの時はそうとう無茶な方法だとは思ってはいたんだ。ただ時間がなかったため手段を選んではいられなかっただけで……というのも言い訳にしか聞こえないか。

 実際どれだけ恨まれてても言い返せないことだし……。


「あ、いたいた。おーい、ギルドの人に伝えてきたよー!」


「おーうフローラちゃん! やっぱり君は俺の天使……ってあだだだだ!? 痛いってクレア!?」


 久しぶりだなこのノリも。勇者ケント……高橋剣斗は日本から転移してきた異世界人ということもあってなんだかそのノリに安心感さえ覚える。星夜は異世界人でもちょっと特殊すぎてな。

 そしてケントのハーレムパーティーの三人も相変わらずのようだ。


「おっす、元気そうだな」


「おお! 久しぶりだなぁムゲン! また会えて嬉しいぜ!」


「以前の事件では大変お世話になりました」


「また少々厄介になるが、よろしく頼むぞ」


「この国すっごい大きいよねー。ランにはちょっと空気が合わないけど」


 そういやケント達も第四大陸の外に出ることなんてなかったから新鮮だろうな。

 まぁこいつらに関しては何も問題は……。


「あー!? ちょ、ちょっと! なんでこいつが生きてるの!?」


 あったな……。そういやケントもセフィラを出し抜いて逃げ出した“七美徳”保持者だった。


「キミはまさか……あの時の女神ちゃん!? おいおいまさかこんな運命的な出会いが待ってるなんて思ってなかったぜ! よければキミも俺と一緒に……」


「それはこの私が許さん」


 セフィラに近づこうとしたケントへ組み付き、そのまま華麗に……。


「背負い投げ!」


「どぅおわ!?」


 決まったぜ。まったく、ケントの女癖も相変わらずか。


「人のヒロインに手を出すんじゃない」


「ヒロインって……ええ!? マジかよ!」


「ちょっとムゲン! これってつまりどういうことなのよー!」


 というわけでセフィラとケントに再びかくかくしかじかと説明をし……。


「なんであたしこんなに出し抜かれてるの……」


「まっさかあの女神ちゃんがムゲンのヒロインとはなぁ。ついにムゲンも"主人公"って感じだな!」


「ここまで長かったぜ……」


 てかこれまでもこれからも主人公は変わらず私であることに変わりはないがな! そこんとこ間違えないでもらいたい!

 まぁとにかくこいつらも元気そうでなにより……。


「あら、人の恋路をズタズタにした魔導師さんはとても幸せそうな恋人ができて楽しそうですね」


 というだけでは終わらないかやっぱ……。セレスティアル第一王女ラフィナール・クラムシェル……現れて早々嫌味をぶつけてくるとは。


「ど、どうもどうも。これはお久しぶりで、お元気そうでなによりです……」


「ええ元気ですよ。誰かさんにとんでもないことをされた後は何もかも嫌になるほど絶望していましたけど」


 これでもかというほど私の胸に突き刺さること言ってくるなぁ。最初に出会った頃は外の世界にあこがれる系純粋お姫様だったのに……。


「……ラフィナ王女が私を恨むのは当然です。だが、私は今でもあの行動が正しかったと思っているし、後悔もしていない。だが、あなたに何をされようと仕方がないとは思っていますよ」


 結果としてラフィナを絶望させてしまうことにはなった。しかし私はそれで彼女に選択肢を与えた……真実に目を向けるか、虚構に逃げるか。その結果ラフィナは真実へ進み絶望にみを投じた……。

 なんだかんだ言って私もアレイストゥリムスと同じようなことしてたな。


「確かに、あなたに恨みはあります……。ですがそれはもう過ぎたことです。今のわたくしには、あなたへの恨みよりも重要なことができたので」


 それがどういう意味なのか私にはわからなかったが、その眼差しが私に向いていないということだけは理解できた。

 彼女にもなにか……心境の変化があったということなんだろうか。


「限、話し込むのもいいが、そろそろこの招待状に書かれた時間に近づいてるんじゃないのか?」


「ってもうそんな時間か! ヤバいヤバい! 急がないと」


 いつの間にかそんなに時間が経っていたとは。主催の私が時間にルーズでは示しがつかないから急がねば。

 目的の場所までダッシュだ。


「よし、それじゃ星夜達も一緒に行くぞ」


「というか、結局どこで何するのよ」


「それは着いてからの……っと、あれは?」


 少々急ぎながら城内を進んでいると、目の前の角からよく見知った人物と一匹の獣が現れ……。


「よかった、ここにいたのねゲンさん」


「ワウ(匂いを辿ってきたっすよ)」


「クリファ、もう起きて大丈夫なのか?」


「ええ、少し寝たらスッキリしたわ。それよりも急いでるようですけど?」


 おおっといけねぇ、危うく立ち止まってしまうところだった。

 よし、クリファも合流したならちょうどいい。


「会場はすぐそこだ。クリファも一緒に行こう」


「いいけど……いったい何をするの?」


「あたしもわかんないけど、なんか企んでるのは間違いないわよ」


 企んでるとは人疑義が悪い。まぁ企んでることには変わりないが……企みは企みでも楽しいサプライズさ。


「というわけで……到着だ!」


 バゴンと扉を開けると、そこには少し離れた位置に二つに分けられたパーティー会場が設立されており、私の要望通り数々のごちそうが用意されていた。

 そして会場には招待状によって集められた英雄とそのパートナー達が集まっている。


 さぁ、これですべての準備が整った!


「それではこれより! 世界を救う英雄達の親睦を深めるため……男女に分かれて食って飲んでの楽しいパーティーの開幕だぁ!」


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