115話 脅威の度合い


「ところでこれから討伐しにいく"悪竜"ってどんなのなんだ?」


 そろそろ目的の村へ到着する頃、私はふと今回の依頼内容を思い出していた。

 そもそも依頼内容事態曖昧な記述であり、それでいて方方に……それこそ大陸を越えてまで救援を要する程切羽詰まった内容だというのに。


「そんなことも知らずに僕達に同行……もとい依頼を受けたんですか? 少々あなたという人間に不安を覚えてきましたよ」


 なんでこいつ私に対してだけこんなに喧嘩腰なの?

 しかしまぁ私が此度の依頼に関して何も熟知していないのは事実。

 元々この依頼に関してはぶっちゃけおまけみたいなものだと考えていたし。


「それじゃあそんな不安を覚えるような私にもわかるように今回の依頼内容を説明してもらいたいのだが」


「なんで僕があなたに……」


「あ、私も知りたいです。私も何も知りませんから……。お願いできますか?」


「そんな、ヘヴィアちゃんはつい先日成り行きで同行することになったんだから仕方ないよ。うん、わかった。僕達も丁度再確認したかったし」


 フォローするようにヘヴィアが横から入ることでなんとか状況の確認ができそうだ。

 しかしヘヴィアもこちらを見てニヤリとした笑顔を向けてきたためわかっててやったなこりゃ。

 ま、私がうっかりヘヴィアの本性をバラさないよう私に対する警告のようなものか。


「そうだね、"悪竜"を一言で表現するなら……女性の敵、ですね」


 ……わからん!

 どうして一言で表した、しかもなぜかドヤ顔だし。


「へ、へぇ~そうなんですかー」


 ヘヴィアも顔は笑ってその場に合わせているが、若干笑顔に無理がある。


「あ、あの……補足させていただきますと。"悪竜"はこの近辺からさらに北にある火山地帯の山脈付近に住み着いてるそうで……一年前から突然現れてこの周辺の村々にある要求を申し付けてきたんです」


 補足、というよりまったく説明になっていなかったエリオットに変わって真面目そうなメガネの子、シェスタだったか が一から説明してくれる。

 几帳面な性格なのかその手の中に使い込まれたメモ帳をパラパラとめくり内容を確認している。


「しっかし魔物が要求たぁね……。んでどんな内容なわけ?」


 私としては魔物が口頭で要求なんて本来ありえない事態に凄く疑問なんだが。

 まぁここは最後まで聞いてみないとわからんな。


「はい、"悪竜"は火山地帯に近い……とは言ってもどこもかなり距離が離れていますが。とにかくその各村に対して同じように現れ同じ言葉を残していきました。……高く日が昇った正午に太陽を背にして『この中で一番の未婚の娘を『龍皇の火山』へ連れてこい』と」


 メモの内容をなぞるようにその時の情景を語るシェスタ。

 『龍皇の火山』……なんか既視感を感じる単語なのは気の所為だろうか……。

 それにしても女性を要求するドラゴンか……よくある昔のRPGだと要求する前に無理やり連れ去ってしまうが、こっちのドラゴンは何がしたいのかわからんね。


「人々に恐怖を与え、か弱き乙女をその毒牙にかける……なんて非道な悪竜だ。今も美しい女性達は震えてまともに日の下を歩けず震えているはず。だから僕達が倒し、救うんだ。正義のためにね」


 はいはいイケメンイケメン。

 エリオットと取り巻き達は最初の趣旨も忘れてキャーキャーと騒ぎ始めてしまった。

 ま、こちらも一人で考えたいことがあるからゆっくりと後ろにフェードアウトさせてもらいましょうか。

 しかし『龍皇の火山』は聞いたこともない地名だ、気になる。


「[map]起動。音声認識モード、『龍皇の火山』」


ピポッ!


 出てきた出てきた。

 なになに……『龍皇の火山』の名の由来は、その昔悪夢のような恐ろしい大噴火が起きた。

 その時に一匹のドラゴンが他の巨大なドラゴン型の魔物を次々に半殺しにして麓に流れてくる溶岩をせき止め、ドラゴンの亡骸で冷え固まった溶岩と災害から麓の村々を救ったドラゴンを称えて『龍皇の火山』と呼ばれるようななった……か。


「うーむ、なんというか……ここまで状況証拠が多いとただの私の勘だったものが現実味をおびてきそうだ」


「ワウ?(なんすかその勘って?)」


「犬か。いや、まだ半分疑ってるところはあるんだが、もしかしたら今回の依頼の"悪竜"というのはもしかしたら龍族の可能性があるんじゃないかと推測してな」


「ワウン?(龍族って、ドラゴス先輩みたいな?)」


 そう、私達に馴染みのある龍族といえばまず一番に名前の上がるのが奴だ。

 というか召喚後に出会った龍族があいつしかいないのだから当然といえば当然なのだが。


 しかし、龍族は基本表舞台に出てこない、人の寄り付かない僻地で少数がひっそりと暮らしているのが前世での普通だ。

 それはその昔栄えた龍族の一大帝国が滅んだことに起因する。

 強大な力を持っていたが故に繁栄し、その反面すべての種族に恐れられ、その果てに滅ぼされた。

 これが『龍皇帝国の悲劇』……帝国以外のすべての国がたった一つの帝国を滅ぼすためにだけ手を組み、龍族以外の魔法使い全員がその帝国を攻撃した。

 以後、龍族は国を挙げることはなくゆっくりとその存在を影へと落としていった……ドラゴス以外は。


「しかし参ったな、もし本当に龍族なら脅威の度合いがまるで変わってくるぞ」


 エリオットも倒しているよくある竜型の魔物と龍族では対応が全く異なってしまう。

 まず龍族は魔物とは違う知性ある"種族"だ。

 今の時代の人間にはその存在すら伝説とも言われている彼らの存在を簡単に受け入れられるかどうかもわからん。

 それにその"悪竜"と呼ばれる存在がもし本当に龍族だとして、そいつの実力によっては確実に全滅する。


「おいおい……適当に済まそうと思っていた任務だと思ったら命の危険まで出てくるとかシャレにならないぞ」


「ワ、ワウ? ワウン……(そ、そんなにヤバイんすか? でもご主人の実力なら結構いい勝負ぐらいできるんじゃ……)」


「相手の練度による。生まれて百年そこらの青二才ならまだ充分渡り合える余地はあるが……これが数百年の熟練だとしたら数回せめぎ合って確実にこちらがお陀仏だろうよ」


 実際龍族というのはまず他種族と身体の作りからして大きく異なる。

 今の私でなら小細工を駆使すれば数分は生き延びれる保証はある。

 が、兎にも角にも龍族というのはアステリムに存在する中で最も戦闘に優れた種族。

 魔法……魔術の扱いこそそれほど得意では無いのだが、その攻撃一つ一つにバカにできないほど強大な魔力を乗せた攻撃を放つ。

 さらに龍族はその肉体に基本自らの得意属性を関した鮮やかな色の強固な龍鱗(ドラゴンスケイル)を持ち、鍛え上げた年月に応じてその強固さを増すというどこまでもとんでもない戦闘種族だ。


「そういえばもう一つ気になるのは……『龍皇の火山』の溶岩をせき止めたのも実力的に龍族っぽいよな」


 まぁそれが今回の悪竜とどう繋がるかは依然未知数であり、もしかしたら杞憂に終わる可能性もなくはないのだ。

 ただ常に最悪の状況をいくつも想定して先を見据えるというのが私のスタイルだ、こればかりは直しようもない。


(できることなら私だってラノベの主人公のように思考停止のチートパワーで無邪気にはしゃいでみたいさ)


 唯一チートと呼べるものがあるとすれば今現在手に持っているこのスマホ……正確にはその中に勝手にインストールされた[instant magical]という謎のアプリ。

 便利といえば便利だがどれもこれも良くて小細工程度が限界。

 まぁどれも使い方次第で様々なピンチを切り抜けられたのも事実なので重宝しているが。


「なにしてるんですかムゲンさん?」


「うおっ……なんだヘヴィアか。驚かすな」


 画面に集中していたらいきなり目の前にヘヴィアの顔があってびっくりした。

 どうやら先行するエリオット達の輪から抜けてきたようだ。


 いかんな、あまりスマホに集中しすぎていると思わぬ事故に繋がりそうだ。

 皆もアプリが面白いからって集中しすぎながらの歩きスマホはやめような、私との約束だ。


「それで、なにをそんなに真剣に見ていたんですか?」


 っと、それよりこっちの問題をどうにか誤魔化さなければ。


「ああ、この辺りの地形を少々確認していてな。……それと気になったことが一つあって、結局一年前の悪竜の要求ってどうなったんだ? 今の今まで気長に待ってる……ってのはありえないだろうし」


 話題をすり替えながら本当に疑問に思っている内容を主題にすることで話も逸れて上手くいけば知りたい内容もゲットできる、まさに一石二鳥。


「要求ってことは、村の人々が未婚の娘を差し出したかってことですよね。それならさっきエリオットさん達との話題に出てたのでバッチリです」


 お、それは丁度いい。

 もっと詳しい話、結局差し出したのに満足がいっていないからこその今の状況だろうし、どこかしらから何か言い伝わってるだろう。


「確かに悪竜の要求後、この周辺で一番美しいとされる未婚の少女が選ばれ護衛とともに一月後に向かったようです。けれど、悪竜はこれまた空高くから太陽を背にして待ち構えており、少女を見た瞬間にこう言い放ちました、『そんな華奢な娘が我が花嫁に足りうると思っているのか』と」


「つまり悪竜の意にそぐわなかったと」


「そのようです。なのでその二ヶ月後、また別の娘が選ばれましたがそれも却下。また三ヶ月後、四ヶ月後と何度も訪問しても悪竜は首を縦には振らず、最早いつしびれを切らして村へ襲い掛かってくるかわからない恐怖に耐えかねてこうして各所に救援を要請した。というのがことの発端です」


 つまり悪竜の好みにジャストミートする娘が未だ選出されていないので悪竜が逆ギレして襲ってくるかも、怖い! って感じか。

 しかしその悪竜も随分気長なことだね、要求して一年経つのに数ヶ月待っては好みじゃないから取り下げてまた数ヶ月後に……。


「てか悪竜への訪問期間が段々長くなってるのはなんでよ?」


 毎回一ヶ月単位で遅れてるのはなんでや。

 まさか毎回期間を増やして悪竜の求めるような娘を吟味する期間を増やしてるわけでもあるまいし。


「あ、そこはキチンと理由があって、道中に問題があるんです。なんでも『龍皇の火山』までの道は険しい上にこの付近なんかとは比べ物にならないくらい強力な魔物の巣が密集してるそうで、護衛する人が毎回重症を負ってしまうので手が足りなくなるそうです」


 確かに言われてみればこの大陸は奥へ進むほど強力で濃いマナが発生している地域も少ないくないため、それに伴って魔物の脅威度も上がってくるからな。

 さらに険しい荒れ地や昼でも薄暗くジメジメした密林、終わりが見えない砂漠地帯なども各地に点在している過酷な大陸だ。

 それらもすべてはこの地から溢れる特殊なマナが関係しているが……これについてはどうしようもないからなぁ。


(そうだな、せっかくだし先に『龍皇の火山』の場所ぐらいは調べておくか)


 またエリオットに馬鹿にされるのも癪だし。

 そんなわけで[map]を使ってサクサク検索開始っと。


「お、でたでた。……ええっと、この先の依頼者の村から北東に……ぶっ!?」


「ど、どうしましたムゲンさん!?」


「あ、いやなんでもない……。まだちょっと胃の調子が悪いみたいだ、先に行っててくれ」


「はぁ……?」


 ヘヴィアを先に行かせ、最後尾には私と犬のみ。


「ワウ? ワウ……(それで、本当はどうしたんすか? 何かヤバい事実がわかったんなら早急に対処しないとマズいんじゃ……)」


「いや、今の私達にとっては特にマズいことでもない。ただ『龍皇の火山』の場所がな……地図上で見たところ私の知ってるこの大陸で最も危険な場所の隣りにあって若干焦っただけだ」


 それでもこの動揺から私の素性を根掘り葉掘り聞かれることは避けたかったので他の者には聞き取れない距離まで下がりたかっただけということだ。

 私の素性に関わること……それはつまり。


「ワウ……ワウン?(ご主人の前世に関係深い場所……ってことっすか?)」


 犬のくせになんて鋭い……。

 犬の言うとおり、先程確認した『龍皇の火山』の先の場所は前世でも少々因縁深い場所だ。


 [map]に記されている内容には特に説明もない他の地帯と同じような山のマークが置かれているだけだが私は騙されない。

 この第一大陸中央北の火山地帯は他とは違う一線を画する危険地帯であることを私は知っている。

 先程この大陸には危険な場所が多く点在していると言ったが、すべての元凶はここにある……。


「以前濃密なマナが集まる土地には魔物が多く繁殖し、そのマナの影響を受けた姿になりやすいことは説明したな」


「ワウン(確か『巨人の爪痕』とか『世界樹ユグドラシル』の時とかに聞いた気がするっす)」


「今回も同じだ、この地帯から発せられる異常なマナが魔物の生態系や大陸の環境そのものを大きく狂わせている」


「ワウ!? ワウワウ……ワウ!?(ちょ、ちょっと待ってくださいっすご主人!? ファラの姐(あね)さん程の人物が育てた"世界樹"も結構なものっすけど……それを鑑みてもこの規模は尋常じゃないっすよ!?)」


 姐(あね)さんて……ドラゴスに続いてまた謎の敬いしてるな。


 と、そんなことより……犬の言ったことはごもっともだ。

 世界樹のマナの影響だろうと大陸の気候を永久に変えることや環境の変化、生態系の変化は難しい。

 犬のように世界樹の凄さを知った上でこの大陸の実態を知ることなど今の時代では理解できない者の方が圧倒的に多い。

 私も前世で大陸が変化していく様を経過観察していたからこそ納得しているが、改めて考えれば異常だからな。


「この大陸を異常な気候にしている原因、それは前世で“火の根源精霊”と呼ばれていた存在だ」


「ワウ? ワン(根源? 普通の精霊と何か違うんすか)」


「まるで違う。そもそもの話、実は精霊と呼べる存在は私の前世の時代のさらに昔……それこそ生物が誕生する前の原初の時代に世界の基盤を構成する役割として生み出されたのが七体の根源精霊だ」


 アステリムという世界の誕生秘話、それは火、水、地、風、雷の五つの精霊の調和によって世界が生まれ、光と闇の精霊によってこの世に心と意思が芽生えた……というのが私の長年の研究成果だ。

 そしてその影響で生まれたのが各属性のマナだ。

 私が属性をハッキリと分類化できたのはこういった理論の積み重ねであり、世界の真相に近づいたからこそとも言える。


 以上の話を聞いた上で、「どうして分類わけされている生命、重力、時空の精霊は存在しないのか?」と疑問を抱く者も少なくないと思う。

 これにも理由があり、生命属性というのは人の体の中で変換して造られるマナであり、魔術を使用するというのはこの魔力にさらに変えて体外の属性マナと触れさせるか体内でそのまま使用するかの違いなだけなのだ。

 そもそもこの世界の生命誕生の起源は、重なり合ったすべての属性マナが集合し命が生まれたのがはじまりだと私は推論付けている。

 この世界に多くの種族が存在しているのは、そうしていくつか生まれた中にマナのズレが生じて変化したものだという説は非常に有力だ。


「さて、話が大分それたようだが。では犬の疑問でもある精霊族と根源精霊はどう違うのかということについて話そう。まぁ簡単に言えばそれらは起源ルーツが違う、ということだ」


「ワウ?(起源ルーツ?)」


「根源精霊は世界誕生と共に自然発生した存在だが、精霊族の起源は人の歴史が始まってから……この世界にとって一番新しい種族なんだ」


「ワン? ワ、ワウン(歴史が始まってっから……。あれ? でも人が生まれたのは……な、なんかこんがらがってきたっす)」


「そうだな、小難しい経緯は置いておき結論から言おう。精霊族はいにしえのエルフ族が人工的に根源精霊を生み出そうとして失敗した結果だ」


「ワウ!?(ええっ!?)」


 古代のエルフは古くからその存在に気づいており、エルフが世界の覇権を握るために根源精霊誕生の真似事をし、失敗した……。

 その結果、人の生まれと同じ原理で生まれはしたが肉体を持つには不完全になってしまい、そのため彼らの多くが魔力を凝らさなければ視認はおろか会話すらできない存在としてこの世界に生まれてしまった。

 その為ファラやフローラなどの肉体を保持できる精霊は古代のエルフが想像したのとは別の形で完成された存在となったと言える。


「そして今では精霊族は一種族としてしっかりこの世界に息づいています……と、この話はここまででいいだろ。それよりも、根源精霊の脅威度についてだ」


「ワウン(そう言われてもぶっちゃけ危険さがわんねえっす。手っ取り早く強さを数値化して教えて欲しいっす)」


「私はあまり強さをを数値に置き換えて考えるのは好きではないのだがな……」


 ゲームと違い現実での戦いというのは単純な数字では到底測れないものだと私は考えている。

 強さとはその時その時の環境、感情、状態によってそれこそ細かく変わってくる。

 まぁ今回はどうしてもというのでやってみるが……。


「あくまで目安だからな、鵜呑みにするなよ。……そうだな、今の私を仮に10とすると、先程話した戦闘に特化した龍族が50ってとこか」


「ワウ(単純計算で5倍っすか)」


「あくまで目安だと言ったろう」


 単純な戦闘能力ではという話だけだ。

 仮に本当に戦うことになるとしても私の魔術5発が相手の攻撃1発で相殺されるとは限らない。


「ワンワン?(単純な力比べじゃ測れないのはわかったっす。それを踏まえて根源精霊の力はどんなもんすか?)」


「そうだな……5万くらいか」


「ワ!?(ぶっ!?)」


 犬が吹き出すのも無理はない。

 先程の単純計算で言えば、戦闘に特化した龍族1千人でやっと互角と言える戦闘力。

 まるでナ○ック星編時点でのクリ○ンとフ○ーザ程の力の差があるからな。


「ワ、ワ、ワウン!(そ、そ、そんなのが暴れまわったら世界なんてすぐに崩壊じゃないっすか!)」


「安心しろ、根源精霊は基本的に世界と同化しており自然を維持する役割を持っている。この世に顕現することなどほとんどありえない……火と闇を除いてな……」


「ワウ……(待つっす、聞き捨てならない発言が聞こえた気がするっす。これから行く火山地帯の近くに火の根源精霊がいるんじゃないっすか……)」


 まぁ普通気づくわな。

 私が懸念していたのもそこだ……こちらに危害が加わるようなことは無いだろうと考えているが、それでもアレの凄さは一線を画する。


「火の根源精霊はその昔……私の前世で相対した強敵の一つだ。だが安心しろ、その時に一番デカい火山に封じ二度と出てこれないようにした……はずだ」


「ワウ……(なんか曖昧っすね……)」


「……そこは私も不安な部分なんだ。おそらく、世間で噂されている“炎神”……それの正体がおそらく火の根源精霊の可能性が高い」


 以前リアから“七神王”の話を聞いた時四つの内三つは見当がついた。

 一つは言わずもがなすでに会っていた“龍神”であるドラゴス。

 そして半信半疑だったが前回の任務で確定になった“精霊神”であるファラ。

 そして今私が前世から知っている存在でほぼ確信を持っているのがこの“炎神”だ。


 “七神王”……まだ出会ったことのない“魔神”は未知数だが、今まで見た中で私の予想が正しければ、“炎神”と“幻影神”は他とは次元が違う。

 それらと本気で敵として相対するのなら私は命を諦めるだろう。


「ワウウ……(まさに脅威の度合いが違うってことっすか。できることなら出会いたくないっすね……)」


「お前それフラグだからやめろって」


 まぁ今は見えない脅威よりも目の前の悪竜だ。

 そろそろ村に着くだろうし、ちょっとは気を引き締めていかないといけないかもな。


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