とかげくん【やってみた】

 神様になるなんて無謀かな。無謀だよね。どうやったらなれると思う?

 ぼくはすいりゅうさんに訊かずにひとりで頑張りたい。まずはどうしようかな。


 すいりゅうさんとおんなじことをしてたらなれると思う? すいりゅうさん、いっつも何してるかなあ。


 あ。そうだ。

 お昼寝。



 ……。

 …………。


 あはは。そんな訳ないね。お昼寝してたら神様になれるなんて、もし本当なら笑っちゃうよね。

 他には何してるかなあ。


 ええっと。

 ……お昼寝。


 …………。

 違うよね。ええっと。何かもっと他のこと。


 うーん。うーん。

 他のこと。他の……。


 どうしよう。お昼寝してるすいりゅうさんしか思いつかないよ!

 すいりゅうさんがお昼寝していないのは、ぼくと遊んでくれてるときと(ぼくを特訓してくれてるときも、すいりゅうさんは遊んでるみたいだもん)、雨乞にお出掛けしているときだけだよ。困ったな。神様になったからもう修行みたいなことはしないのかな。


 そうなると、ヒントはもう雨乞しかないね。雨乞のときのすいりゅうさんとおんなじことをやってみよう。

 まずは雨降らしかな。雨を降らせるなんて、もう神様みたいだよね。ぼくに出来る訳ないか。でも試しに……。


「雨雲、やって来ーーい!!」


 なんちゃって。あはははは。


 ぼくは気合を込めて振り上げた手を頬にあてた。ちょっと恥ずかしいや。呼んで来てくれるんなら、誰も苦労しないよね。でも、すいりゅうさんが呼んだら来るんだよ。雨雲。

 ぼくはすいりゅうさんを見上げた。今日もきらきらしているすいりゅうさんはとってもきれい! な、はずなんだけど。

 ぼくの頭の上にちっちゃい雨雲があってすいりゅうさんが見えないよ! ぼくが両手を広げたくらいの幅の、小さな小さな灰色の雨雲。


 もしかしてこれ、ぼくが呼んだから来たのかな?


「シロツメクサにお水やって来てー」


 ぼくは試しにびしっと指を立てて雨雲にお願いしてみた。

 すると雨雲はふよふよとシロツメクサの群生まで漂って行って、さあっと雨を降らせる。


 !!!!


 ねえ見た? ぼくが呼んだ雨雲が雨を降らせたよ!! 嘘みたい! じょうろで水を撒くような頼りない雨だけど、大事なのはそこじゃない。ぼくが雨雲を呼べるってことだよ!

 これをもっと上手に出来るようになれば、神様になれるかもしれないよね。出来るってことは分かったんだから、ぼくは頑張れると思う。


「すいりゅうさん、今の見た? ぼく、雨雲を呼べちゃった!」


 ぼくは興奮して報告したんだけど、すいりゅうさんは退屈そうに欠伸をして。すいりゅうさんの顔のすぐ前まで浮かんでいっていたぼくは盛大に吹き飛ばされちゃった。

 だけどね。ぼくは見たよ。

 すいりゅうさんのしっぽ、嬉しそうに揺れてたよね。

 えへへへへ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る