Chapter5 『美しいもの』

Chapter5 『美しいもの』 5-1

「さて。 診てみましょうか。」


(彩は、診察用具のならんだ個室で、夏樹と向き合い。 小さな丸椅子に腰かけた。)


「どれ、ゆっくり深呼吸して。」


(赤いマニキュアの指先で、小机の上の診察機器を操作し。 彩は自分の方を向いて、

すぐ目の前に座る夏樹をあらためて見つめた。)


「すぅ・・。」


(緊張気味に呼吸する夏樹の様子に、思わず見入ってしまう。)


(蒼白なほど真っ白な肌に、深い大きな紺色の瞳。 少しくせづく紺色の髪が、

額と、白い頬に流れている様子は。 幼さが残るものの、魅力的だった。)


「・・私がもう少し、若ければね。」


「は?」


(彩の小声の独り言に、夏樹の緊張が解けた。)


「何でもないわよ。 ふふっ。」


「どれ?」


(きらきらするネイルの指の両手で、夏樹の首元にそっと触れた。)


「ふむふむ。 相変わらず冷たいわね。 でも、昨日よりは良いかもね。」


「胸を診るわ。」


(服の下から、聴診器をあて、そっと耳を傾ける。)


(夏樹は、診やすいように。 ティーシャツをめくった。)

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