第16話 祝福を

教務課に学生はおらず、事務作業の音でざわざわしていた。


「留学の書類……提出に来ました」

「はい……あら、提出は本日までですが、時間がちょっと過ぎてますね」

「えっ」

「まあ、少しくらいなら大丈夫でしょう

次からは気をつけてください」

「はい……ありがとうございます

よろしくお願いします」


「っ、はぁっ、レイっ」

「ミオ、どうした?」


「やっぱり、留学するの、とめようと思って……でも」

「げ、提出した……」

「……みたいね」

「取り消してくるっ」

「はっ、なんで、提出したんだからもういいじゃんっ」

「……」

「……や、ややこしいこと言ってごめん」

「別に……」


「これから偉大な研究に立ち向かうレイに、がんばれって言わなきゃいけないのに」

「……」

「決意を揺るがすようなこと言ったらだめだよね」

「ミオ……」

「うん、大丈夫、私はレイを応援するんだから!」


ミオは潤んだ瞳をレイに向け、両手首を掴んだ。


「がんばれ、レイ」


「ああ、がんばる」


出国するまでにレイは、弱い力と強い力も見られるようになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る