気づいたら空を見上げて泣いていた。
※※ 死ネタです。
気づいたら空を見上げて泣いていた。
最近体調が著しく悪かった。
前まではこんなにひどくなかったのに。
病院に行って検査してもらったら末期がんだと診断された。
あちこちに転移していて、助かる術はない、と。
余命は、後一年。
高校生活最後の一年を病院のベッドの上で過ごさなければならなくなった。
最悪な気分だ。
その日から、俺の入院生活はスタートした。
入院してから一ヶ月位して、いろんな人がお見舞いに来てくれた。
クラスメイト、部活の先輩後輩、先生。
ただ、一人だけ来なかった。
幼馴染みのあいつだけ、顔を出さなかった。
連絡もとれない。
心には、大きな穴が開いたかのように、何をしても満たされなくなった。
月日がたつにつれ、抗がん剤治療の副作用でどんどん髪は抜けていった。
ある日、病院の中庭を散歩していた。
散歩するぐらいは平気だった。
元気に走っている子供達が視界に入る。
「いいなぁ、」
もう二度と、走ることは許されなかった。
余命一年と言われてから11カ月が過ぎた。
後一ヶ月の命。
大切に、生きようと思った。
残された人生を、一生懸命生きようと思った。
幼馴染みのあいつは、まだ来ない。
後一週間で一年が経とうとしているとき、やっと、あいつが来てくれた。
「よぉ、やっと来てくれたのか。」
本当は、嬉しくて嬉しくて泣きそうで、精一杯の強がりだった。
「ごめんね、ずっと来れなくて。」
彼女はどこか泣きそうだった。
「いいよ。……受験は?」
「推薦で決まった。」
「さすが。」
笑顔を作っても、今にも泣きそうで、うまく笑えていなかった。
きっと俺も、情けない顔をしていたのだろう。
「ねぇ、あのね。」
「ん?」
彼女は、ここに来てからの最高の笑顔で言った。
「好き、大好き」
「俺も。」
そして俺たちは、最初で最後のキスをした。
一週間後、彼は息を引き取った。
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