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ファントムの対地上攻撃用レーザー兵器でヨミの母親をピンポイントで消滅させる。それがバーニィのふたつ目の計画だった。
「いったいどうやって……」
呆然としているカウントたちに僕はいった。
「イースト・オブ・エデンの『アーム』が切り札を使ったんだ。彼らはあなたたちのネットワークに侵入するプログラムを開発していた」
サキが東部地区に渡って彼らと交渉していた。そして、この計画の発案者はヨミだった。ヨミの母親、ナオミのグループはかなり以前にファントムのネットワークセキュリティのプロトコルを解読していた。
ファントムのプロテクトは強力で、タイムリミットは数分間。でも、各地区が保有しているレーザー兵器SOLのひとつは、他の地区のセンターを常に攻撃できる位置に配置してあった。各地区のファントム同士がお互いをけん制するために。
ファントム――地球人(テラン)は一枚岩ではないということだ。そこに僕たちのつけ入るスキがあった。
「まさかここまでやるとはね」
まだ窓の外を見たままカウントがつぶやいた。
「カウント、ヨミは……」
「お嬢さんなら、あのあとすぐにセンターの外に送り出したよ。無事だろう。まあ、彼女にはあれを防ぐ力があるしね」
ザザッという音と共に、シルの姿が復活した。服の色が白に戻っている。
「ネットワーク回復しました。プロトコル書き換え終了。ただし、東部地区のステーション『天龍(ティエンロン)』は物理的に乗っ取られています」
物理的に――ということは、東部地区の『アーム』が低軌道ステーションを占拠したということなのか。僕はそこまでやるとは聞いていなかった。
「シル、『天龍』は無人だったの?」
イルザの質問にシルが答える。
「はい。無人でした」
「くそっ」
僕に懐中時計を渡してくれたブーンが唸った。
「火星人(マーシャンズ)ふぜいが舐めやがって」
そういって、ブーンがシルのほうを向く。
「シル、W―SOL一号機で『天龍』を狙えるか」
「可能です」
「待て、ブーン」
制止するカウントに、ブーンが食ってかかる。
「これ以上奴らを野放しにしておくわけにはいかんでしょう。それとも、火星出身のあんたは結局奴らの肩を持つというわけですか」
「やめて、ブーン」
イルザが割って入った。
「今、仲間割れを起こせばそれこそ奴らの思うつぼよ」
「いいや。力で排除すればいいだけだ。簡単なことだよ。非常事態だ、東部地区も理解するさ。そうでしょう、カウント」
カウントが口を開きかけたその時、窓の外で小さな光がきらめいた。
「何が起こった、シル」
カウントの質問にシルが即座に答える。
「東部地区のE―SOL二号機がステーション『天龍』に向けてレーザー攻撃を行いました」
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