052

 次の日もアナサインド・テリトリーを突っ切って、デッドウッドに着いたのは日が暮れてからだった。

 デッドウッドでの『アーム』の拠点は宿屋だった。一階の酒場で『アーム』の人たちからの情報を待っていると、男が飛び込んできて僕たちのテーブルに着いた。

「クリスが捕まった」

 僕たちは一斉に腰を浮かせた。バーニィだけが落ち着いている。

「詳しく話してくれ、ジャック」

 ジャックと呼ばれた男の話によると、レッドフィールド達は夕方、町の反対側に到着したらしい。

「奴らは何故か宿に泊まらず、町から少し離れたところに野営した。俺は近くの岩場の影から様子を窺っていたんだ。えらく少人数だった。レッドフィールドもドクターも見当たらなかった」

 どういことだろう。

「恐らく途中でレッドフィールド達だけルートを変えたんだろう」

 バーニィが分析する。

「でもよ、デッドウッドを通らないとすると、シルバーレイクまでかなり遠回りになるぜ。沼地や岩場が多い土地だ」

「確かにキャットのいう通りだ。それに護衛を捨てて移動したというのがよく分からん」

 バーニィが地図を広げた。

「たぶんオートモービルを使ったんだろう」

 ヨミが地図を覗き込む。

「レッドフィールドの昨日の野営地点はこのあたりだろう。そこまでオートモービルが迎えに来て、レッドフィールドとドクを拾ってシルバーレイクに向かう」

 地図を指でなぞりながら説明するヨミに、バーニィがうなずいた。

「なるほど。クリスは奴らの昨日の野営地点で追いついたはずだ。そこで捕まったか。ジャック、クリスの姿を見たか」

「いいや。いつの間にか俺の背後にファントムが立っていたんだ」

 ジャックはぶるっと震えた。

「そして、奴は俺にいった。クリスは預かっている、明日の朝、野外劇場へ来い、と」

「ファントムの顔は見たか?」

「ああ。男だった」

「ジャック、そいつはファントムじゃない」

「え。でも、黒ずくめで、すごいジャンプ力だったぞ」

「ファントムはヘルメットを脱げないから、素顔を俺たちにさらせない。たぶんそいつはレッドフィールド子飼いの『先祖返り』だ。噂に聞いたことがある。姉弟の『先祖返り』が手下にいると」

「鉱山を襲ったのはそいつらだな」

 ヨミの言葉にバーニィがうなずく。

「で、お嬢ちゃん、どうする」

「決まっているだろう。共同戦線を張るっていったんだ。クリスを助けに行く」

 TBがバシンと手のひらに拳を叩きつけた。バーニィが口元を歪める。

「フランチェスカは到着したか?」

「夕方ここに着いて、すぐ町外れの工房に向った。何か武器を取りに行くといってたな。そっちにも人をやって、クリスのことは伝えてある」

「上出来だ、ジャック。目に物見せてやる」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る