049
「彼らがそうだったのか」
団長がつぶやく。
「その辺はあまり詳しくはいえないし、いわないほうがいいだろう。ただ、これだけはいっておく。ドクは決して悪い人間じゃない。少なくとも、ドクにニキを預けたあんたの判断そのものは間違っちゃいなかった」
バーニィの言葉に、TBが大きくうなずく。
「それは私にもわかっていた。彼らは信頼できる人間だと」
僕はヨミにたずねた。
「アナサインド・テリトリーって?」
「お前は本当に何も知らないんだな。ファントムの領域だ。足を踏み入れると二度と戻って来られない危険な場所だと思われている。一般的にはな。もちろん、ファントムが流した噂に過ぎない。奴らの施設が点在していて――」
「おいおい、そのへんにしておけ」
あわててさえぎったバーニィをヨミが横目で睨む。
「ふん。この程度の情報でファントムが動くなら、私たちは今頃皆殺しになっている」
相変わらずなふたりを無視して、僕はTBのほうを向いた。
「それからTBは父さんたちとファントムの施設にいたの?」
TBがうなずく。バーニィがあとを続けた。
「正確には元ファントムの施設だ。その頃にはすでに『アーム』のものになっていた」
「前にいったライブラリだ」
ヨミが僕に告げた。
「そこに二年間いたあと、ドクはニキをある人物に預けた。そこもアナサインド・テリトリーの中だ。ドクたちはファントムとの関わりを一切絶って、今坊やが住んでいる場所、代々医者をやってきたあの診療所に戻ってきたんだ。それから十年近く経って、ニキは賞金稼ぎ(バウンティハンター)としてこちらの世界に出てきた、というわけだ」
「そうか、今は賞金稼ぎ(バウンティハンター)か」
「それもとびっきりの腕ききだ」
バーニィの言葉に照れながら、TBは胸のポケットから賞金稼ぎ(バウンティハンター)のバッヂを取り出した。
「ニキ。立派になったな」
TBは嬉しそうにうなずいた。
「ヤーナは結婚して東部地区で暮らしている。子供はいないが、おしどり夫婦として有名だ。あいつも妻も、お前のことをずっと気に病んでいる。今さらこんなことをいうのもなんだが、ニキ、戻ってくる気はないか」
TBは立ち上がると、僕たちの背後に立った。そして、両手を広げると、僕とヨミ、反対側のバーニィの肩を抱え込んだ。ヨミには直接触れられないから、フードをつかんでいる。
「わっ、なにをする」
ヨミがあわてている。
「そうか。ヤーナにいい土産話ができたよ」
TBは、にっと笑った。
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