018

 バーニィたちは表立って動けないから、そのあとのことは宿屋の主人に任せるしかなかった。保安官事務所には通りで起こった喧嘩沙汰と報告したみたいだ。事務所の男たちが遺体を引き取っていった。

 僕たちはマックスという発明家――さっき窓から顔を覗かせてヨミに怒鳴られた人だった――の部屋に集まった。

『眼帯』はTBを警戒していたけど、彼女が休業中だと分かるとほっとしたみたいだ。ふたりは念のため窓際に陣取っている。

「なるほど、あいつはこれを撃ったわけか」

 マントルピースにひじをついてバーニィはベットを見た。人が寝ているように膨らませたベッドに穴が開いている。

「今どきこんな古い手にひっかかるとはな。で、あんたはなんで自分が狙われたか分かってるのかい、マックス・フィッシャーさん」

 マックスは壁にもたれて、手に持った鳥の模型の頭の部分をくるくると回している。

「ええ、知っています」

 模型を目の高さに掲げてそっと手を離すと、それは本物の鳥のようにぱたぱたと翼を動かして空を飛んだ。

「すごい!」

 僕は思わず叫んだ。 

「ありがとう」

 マックスは微笑んで眼鏡のツルを押さえた。鳥の模型は羽ばたきをやめるとベッドの上にぽたりと落ちた。

「このおかげでボクは命を狙われている。ヨミから話は聞きました。にわかには信じられなかったけど、筋は通ってる。ボクがこれまで疑問に思っていたことにも説明がつく」

「で、どうするんだ。明日あんたは派手にやらかすつもりなんだろ。奴らは必ず襲ってくる。今度こそ確実に消されるぞ」

「それでもボクはやります。もちろん命は惜しい。でもこれは命と同じくらい大事なことなんです。馬鹿みたいだって思うでしょうけど」

「私は馬鹿みたいだとは思わない」

 ヨミの言葉に、バーニィは首を振った。

「ファントムから守りきれると思っているのか」

「守りきるなんていってない。でも、できる限りのことはする。お前たちに付き合えともいわない」

 バーニィは溜息をついてTBを見た。

「どうする、TB」

 TBは不敵な笑みを浮かべて、左の手のひらに右手の拳をバシンとたたきつけた。『眼帯』がびくっと体を飛び上がらせた。やる気満々だ。

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