013
やがて食事が一段落すると、男も女も食器を持って立ち上がった。近くの小川に洗いに行くそうだ。僕とTBも手伝おうとしたが、皆から一斉に座っていろといわれてしまった。
テーブルには僕とTB、バーニィの三人が残った。TBは小さな女の子ふたりにまとわり付かれて困った顔をしている。なぜかすっかりなつかれたようだ。
誰かが僕のうしろから酒瓶をテーブルの上に置いた。バーニィが声をかける。
「ジェシー、気が利くじゃないか」
ギターを持った老人が僕の隣に座った。
「リタ、エマ、お母さんが呼んでるわよ」
バーニィの部屋にコーヒーを持ってきたフランチェスカがやってきて女の子たちに告げると、彼女たちはTBに手を振って走り去っていった。
「あら、先を越されちゃったわね」
フランチェスカは抱えていたグラスをテーブルに置くと酒瓶に手を伸ばし、酒を注いで皆に渡した。
老人が僕のグラスに自分のグラスをカチンと合わせる。深い皺の奥で優しそうな眼が光っている。
ひと口飲んでみた。喉が焼けるように熱い。思わず僕はむせてしまった。
「あんたにはまだ早かったかの」
確かにそうらしい。正直いって僕にはこれのどこがおいしいのかさっぱり分からない。老人はおいしそうに酒を口に含んだ。僕には見当もつかないけど、マッコイ爺さんよりももっと歳をとっているみたいだ。
「おじいさんも盗賊なの?」
老人は大きな声で笑った。歯が何本も抜けている。
「私たちは全員が盗賊じゃないのよ」
フランチェスカが老人のグラスに酒を注ぎながらいった。
「ジェシーは陶芸家よ。あなたが飲んだコーヒーのカップは彼が焼いたの。私たちの多くは何かを作って町で売ったり、荷馬車の護衛をしたり、そうやって生活しているの。この人みたいに無茶やって賞金がかけられているのはほんの数人」
フランチェスカに指さされて、バーニィは苦笑した。
「義賊といってほしいな。それに、ジェシーだって昔はかなり無茶したらしいぜ」
「さてな。昔のことはもう忘れたわい」
僕はバーニィに向き直った。
「ここの人たちは何かの目的があって集まっている、そうなんでしょう」
フランチェスカもバーニィを見た。
「この子には知る権利があるわ、バーニィ」
「だが、知らずにいたほうが幸せな場合だってある。ドクはこいつに何もいわなかった。関わらせたくなかったんだ」
「もう関わってしまっているんじゃない?」
バーニィは溜息をついた。
「俺たちと奴らとはもともとは同じ集団だった」
「――『アーム』」
僕がそうつぶやくと、フランチェスカが驚いた。
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