006
「ちっ」
『眼帯』の舌打ちが聴こえたのと、賞金稼ぎがすっと腰を落としたのが同時だった。
「よせ!」という少女の声を銃声がかき消す。
弾丸は正確に賞金稼ぎのいた床に穴を開けた。でも、そのときにはもう彼女は跳躍していた。
その巨体からは考えられない、人間離れした跳躍力だった。
彼女は空中で器用に体を半回転させると、天井の梁を蹴って『眼帯』に襲いかかった。
『眼帯』は彼らがMAと呼んでいた乗り物まで吹き飛び、動かなくなってしまった。
右腕を突き出して腰を落とした姿勢から、賞金稼ぎはゆっくりと起き上がった。息ひとつ乱れてない。今度は少女に向き直ると、その腕をつかんだ。
賞金稼ぎを見上げる少女にはちっとも臆した様子がない。その横顔がかすかに笑ったような気がした。すると――。
賞金稼ぎの膝が、がくっと崩れた。立ち上がろうとするけど、足に力が入らないみたいだ。
いつのまにか少女は賞金稼ぎの腕を逆に握り返していた。でも、なにか特別なことをしているようには見えない。膝をついた賞金稼ぎの苦しそうな顔に少女の顔がゆっくりと近づいた。
「怪物はお前たちだけではないんだよ、TB」
少女が腕をはなすと、賞金稼ぎはしりもちをついて座り込んでしまった。
そのとき、頭を抱えながら『眼帯』がふらふらと立ち上がった。
「ったく、なんてばか力だ」
『眼帯』は落ちていた銃を拾うと、座り込んだまま動かない賞金稼ぎに銃口を向けた。
「やめろ。無駄だ。行くぞ」
機械の乗り物に手を触れながら少女がいった。透明なガラスでできている蓋が開き、その中に乗り込む。
「へいへい、わかりましたよ」
『眼帯』も彼女の後ろの座席に座った。
「また会おう、少年。家を壊して悪かった」
少女はそういい残し、彼女たちを乗せた機械は壁の残骸と土煙を家の中に撒き散らしながらジャンプした。
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