???side
真夜中の犯罪者
深夜の町を、パトカーが慌ただしく駆けて行く。
町には未だに数台の車が走り、程よくアルコールの入った酔っぱらいが歩いていたけど、その多くは響くサイレン音に気を取られることは無い。
ただ、彼等は違っていた。五月蠅かったサイレンが遠ざかり、辺りが静かになってくると、物陰に身を潜めていた彼等は動き出した。その数は三つ。
「警察の動きが早くて嫌になるぜ」
パトカーが走り去った方を見ながら一人の男が言うと、残りの二人の男も同意するように頷く。
「あの店員が防犯ベルを鳴らしたからな。感謝しろよ、俺が気づいたから素早く逃げられたんだぜ」
「全く助かったぜ。お前の鋭い感覚が無ければ今頃掴まっていたかもな」
ニヤっと笑みを浮かべる二人。しかしもう一人は苛立ったように声を上げる。
「どうせなら鳴らされる前に、気付いてほしかったけどな。焦って逃げたもんだから、ロクな成果が得られなかったぜ」
そう言った男の手には、一万円札が十枚ほど、鷲掴みにされてだけれど、彼は不満げな態度を、隠そうとしない。
「苦労した割にはショボい儲けだよ。次からはもっとちゃんと見張っておけよな」
「なんだとっ! 俺がいなかったら、掴まっていただろうが」
怒りを露わにして胸ぐらを掴む。掴まれた方も、鋭い目で掴んだ男を睨む。そんな火花を散らす二人を、残ったもう一人が宥める。
「お前ら落ち着けって。確かに今回は失敗したけど、次頑張れば良いじゃないか。世の中上手く行くことばかりじゃねえって。ひたむきに頑張っていれば、いつかは報われるって」
そう言うと、今までいがみ合っていた二人はそろってプッと吹き出した。
「ハハッ、何だそりゃあ? ひたむきに頑張る?」
「それで俺達が報われたら、それこそ世も末だな」
さっきまでの怒りはいったいどこへやら。胸ぐらを掴んでいた男は手を放し、掴まれていた男も、もう気にしている様子は無い。
「けどまあ、確かに過ぎた事をとやかく言っても仕方が無いか。今日はもうずらかるとしようぜ。サツに見つからないうちにな」
そう言って辺りを警戒しながら、男達は夜の町に消えて行く。
先日起きたコンビニ強盗と同じ手口の犯行が起きたというニュースがテレビで流れたのは、その翌朝のことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます