第六十一回 漢軍は計にて王浚を破りて退く
「あれほど諌めたにも関わらず、
翌日、漢の諸将が会して進退を諮った。
「祁弘を欠いた王浚の軍勢など怖れるに足りぬ。しかし、将士の士気は低く、漢の首将を討ち取ったと王浚の意気は上がっている。彼我を比較すれば、劣勢を覆すのは容易ではない。かつ、持久戦をするにも、敵地に入っているために糧道に不安がある。ひとまず
姜發の言葉に
「軍師の意見が妥当だろう。劉子通の戦死を知って将士には戦意がない。此処で王浚との対峙をつづけてはならず、まずは平陽に還るべきであろう。ただ、軍勢を返そうとすれば、必ずや王浚はその機を狙って動いて来よう。退くにも備えを置いて一軍を蹴散らせば、それより後は安全に退けよう」
「計略はすでに成っている。
諸将はその策に従い、それぞれ軍勢を整えると相継いで軍営を発した。
※
晋の間諜はそのことを知ると、軍営に馳せ戻って王浚に漢兵の撤退を報せた。
「劉霊を討ち取られ、漢賊どもは胆を失っていよう。すみやかに追撃してただで還らせるな」
王浚はそう言うと、
二十里(約11.2km)ほど行くと、萬安山の隘路に行きあたる。漢兵はすでにそこを抜けて先の平地に出ていた。関防は晋の旌旗が近づくと見ると、関謹とともに軍勢を披いて晋軍の到来を待ち受ける。
孫緯たちの軍勢が姿を現すと、関防は陣頭に出て言う。
「祁弘を喪っては、
「お前たちの首級を挙げ、その先に進んで平陽を陥れるために参ったのだ。お前たち賊徒を見逃すわけもない。早く馬から下りて投降し、身命を保つがよい。少しでも遅滞するならば、すぐにも大軍が現れてお前たちを微塵に切り刻むであろう」
それを聞いた関防は怒って言う。
「井の中の蛙と変わらぬ匹夫めが。劉霊あるを知ってこの関将軍があると知らぬのか」
その言葉が終わると漢軍の砲声が響き、八十斤(約47.4kg)の大刀を手にした関防が馬を拍った。羊の群に飛び込む虎のような勢いで晋の軍列に飛び込むと、大刀を振るってあたるを幸い、見る間に晋兵の屍がその足元に倒れ伏す。晋兵たちは軍列を乱してほうほうの態で逃げ惑う有様であった。そこに孫緯が駆けつけると、死力を尽くして食い止める。
王昌が孫緯の加勢に向かおうとすると、関謹が前を阻んで行かせない。孫綸が慌てて孫緯を救いに向かうと、伏兵を発した呼延攸と黄命も同じく馬を馳せ、関謹の加勢に向かう。そこに晋の後軍が到着し、胡矯と王甲始が攻め寄せてきた。
隘路に伏せる関山と関心が砲声を聞いて伏兵を発すると、鬨の声が周囲を震わせて大軍とともに王浚が到着する。関山は晋から降った
関山と関心に退路を断たれ、孫綸は軍勢を返して突き崩そうと図る。陣頭にあった関心は攻め寄せる孫綸を一刀の下に馬から斬り落とした。
孫緯は劣勢と見ると、
この一戦に王浚の軍勢は一万以上の戦死者を出し、漢兵の強盛を知ると敗卒をまとめて
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます