第293話 空戦

「アスカ、エリスと一緒に転移して陸亀ホエールをつれて来てくれるか?

 エリスはそのまま、シュバンカのところに転移してウーリカを連れて来てくれ。北の国の言葉が分かるのはウーリカしかいない」

 エリスがアスカを連れて、転移して行った。

「ホーゲンたちの隊は輸送機『ペリカン』で待機。陸亀ホエールが来たら向うに移ってくれ」

「向うの船に飛び移るんですね」

「そうだ、加速器重粒子砲や気化爆弾を使ってもいいが、それだと虐殺に成りかねん。

 ホーゲンたちならそんな事をせずに、剣術だけで対処できるだろう。

 最も、全員を相手にしなくていい。旗艦に居る者をどうにかできれば、相手は降参するだろう」

 CICで再度軍議を開く。

 アリストテレスさんから作戦について説明する。

「まず、投降勧告をするのは当たり前ですが、相手が投降しない場合、旗艦のマストを艦首砲塔で破壊します。

 コンピューター制御でオート発射でかまいません。

 そこで再び勧告しますが、それでもだめな時は、旗艦に移って制圧します。これはホーゲンさんたちの部隊が重要な役割になります」

 軍議をしているところに魔法陣が広がった。エリスが転移してくる。

 魔法陣の中に現れたのは、ウーリカとセルゲイさんだ。

「えっ、なんでセルゲイさんまで?」

「いや、カミさんが『こんなときに行かないでどうするの』って言ってな、まあ、身体もなまっているから丁度いいかなと、ガハハ」

「セルゲイさんが来てくれると百人力です」

 ウォルフ煽てるな。調子に乗るだろう。

「そうだろう、さすがウォルフは良く分かっている、ガハハ」

「ガハハ」

 おい、ウォルフ、笑い方がセルゲイさんに似て来たぞ。

 2時間が経過した頃に、モニターに陸亀ホエールが映った。

「では、行ってきます」

 ホーゲンたちが輸送機に向かって行く。部隊はミズホで待機しているため、ホーゲンたちだけ、輸送機でミズホに移る。

「ペリカン発進、陸亀ホエールに移動します」

 ホーゲン、フォルフ、ポール、ゴウの部隊にセルゲイさんが陸亀ホエールに移動した。

「ドローン『クノイチ』相手旗艦マスト突端に設置しました。集音マイク起動します」

 集音マイクのスイッチが入ると、旗艦の中の話声が聞こえてきた。

「ウーリカ、翻訳を頼む」

 ウーリカが、聞こえて来た声を翻訳していく。

「頭、あの竜を南側へ差し向けるのは大成功でしたね」

「ああ、ちょっと餌になるやつらが南側に行くようにするのが大変だったがな」

「ただ、脅しただけじゃないですか、ははは」

「まあ、10人程殺してみせたら、南側へ逃げて行ったからな、すると竜もそれを追って、うまい事南に行ってくれたし。めでたしめでたしってとこだな」

「今頃、南のやつら慌てふためいているでしょうね」

「ああ、こう、うまくいくとはな」

「ですが、頭、あの竜はどうするんで?俺たちも、襲われるかもしれませんぜ」

「なあに、南のやつらを餌に差し出せばいいだけだ。俺たちは北へ帰ればいい」

 ウーリカが会話の内容を訳してくれるが、信じられない内容だ。

「なんてやつらだ。こいつら『気化爆弾』で十分だ」

 話を聞いていた、乗組員が言う。

「タケルはどう思う?」

「私は父上の案の通りで良いと思います。全員が悪いやつでは無いと思います」

 タケルは割としっかりした口調で言う。

「うむ、当初の作戦で行く。抵抗しない者は、殺さないこと。いいか、では作戦開始」

 俺が当初の作戦のままで行く事を決定した。

「第一級戦闘体制に移行、第一級戦闘体制に移行。各員は持ち場につけ。繰り返す、各員は持ち場につけ」

 艦内がバタバタとし出した。

 ミズホの方からも、スピーカーを通して、指示する声が聞こえる。

「未確認飛行隊確認、未確認飛行隊確認」

「未確認とは何だ、直ちに確認しろ」

「分かりました。鳥人です。黒い鳥人の集団が飛行して来ます」

「陸亀ホエールを発進させて対処するんだ。それとブリマーに連絡し、ホーゲンと連携するように伝えるんだ」

 陸亀ホエールがヤマトの上空を飛んで行くのが、CICのモニターに映った。

 この時になると、上空を飛んで来る黒い鳥人も見えるようになった。

 そこに陸亀ホエールが突っ込んでいくと、陸亀ホエールの上で戦闘に入ったようだ。

「クノイチを使って戦闘の様子を映し出せ」

 スパロー提督が指示を出すと、クノイチの画像がヤマトCICのモニターに表示される。

 さすがにホーゲンたちの部隊はレベルが違う。剣の腕では相手にならない。

 上空から襲って来る鳥人もいるが、こちらはウォルフの弓が正確に射抜く。

 ウォルフだけでなく、セルゲイさんの強弓も唸りを上げる。

 2人を射抜くなんてのもあった。

 だが、いくら不利になっても引いていかない。

「あれだけ不利なのに、引きませんね」

 ブフコフ大将が言う。

 それに答えたのはタケルだ。

「もしかしたら、逃げても殺されるとか、家族が殺されるとか、あるかもしれません」

「奴隷の首輪はついていないようだが」

「北の国には奴隷の首輪はありません。力だけで従えます」

 俺の疑問に、今度はウーリカが答えた。

 モニターには戦闘が映るが、次第にホーゲンたちも疲労してきたようで、動きが鈍くなってきた。

 死者はまだ出ていないようだが、負傷者は出ている。

「押されてきたな。ミュ、行って貰えないか。あそこにはアスカもいる。これ以上押される訳にはいかない」

「「私も行くわ」」

 見ると、アヤカとホノカだ。

「分かった、十分気を付けるんだぞ」

 ミュがホノカを抱えて、アヤカはビビに乗って、ヤマトから飛び立った。

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