第274話 CIC

「エリス、教えてくれ。まず、あの大陸は何という大陸だ?」

 今、この部屋に居るのは、俺たち家族とアリストテレスさんだけだ。

「あの大陸は、ゴンドワナ大陸よ」

「ゴンドワナ大陸?ゴンドワナ大陸だという事はローラシア大陸もあるのか?」

「あるわ、私たちが居るアトランティス大陸もローラシア大陸の一部よ」

 なんと言うことだ。そうだったのか。

「では、北の国はローラシア大陸の事だったのか?」

「そうね」

「でもそうだとしたら、時代が合わないんじゃないか。アトランティス大陸はもっと後の時代だろう」

「ううん、この時代からあったわ。プレート移動でそのうちに別れるけど」

「それはいつ頃なんだ?」

「大体この時代だけど…。ただ、後何年かまでは分からない、明日かもしれないし、数千年後かもしれないし。この時代は1万年単位で数えるから」

「それで、どこで分断されるんだ」

「それも分からないわ。この時代の地図なんて無いし、シンヤさまの居た時代の地図はあくまで想像でしかないから」

 その時だ。ミズホががくんと揺れた。

「非常事態発生、非常事態発生、第一級戦闘体制、第一級戦闘体制」

 俺たちも急いで第一艦橋に行くと艦首の左舷の方から甲板の上に上がろうとする、でかいタコがいた。

 しかし、頭はタコでない。鬼の顔に角がある。見たことがない魔物だ。

 良く見ると足は8本ではない。数えると10本あるが、どうみても烏賊ではない。

 10本ある足の1本には首長竜と見られる恐竜が握られており、既にぐったりしている。その首長竜を口のほうに運んで食った。

「くそっ、甲板のところに居たんじゃ艦載機も出せない」

 スパロー大将が言う。

「フジも発進できん」

 ウォリオ艦長も悔しそうに言う。

「アミルナ艦長、あそこにはたしか大砲がありましたね」

 ミズホは甲板の下の階に大砲が前後左右の合わせて4砲塔がある。

「たしかに、あそこには砲塔がありますし、ぶっ放せば無条件に当たるでしょう。ですが、あそこに誰が行きますか?先ほど竜を食べたのを見たでしょう」

「私が行きます」

「ご領主さま、そんな事は許可出来ません」

「「「僕も行きます」」」

 見るとホーゲン、ウォルフ、ポールだ。

 俺たちはCICに集まった。

 アリストテレスさんが作戦を説明する。

「大砲であのタコをぶっ放します。それでやっけられればいいですが、多分無理でしょう。

 しかし、ある時間、隙ができれば、そこにミュさまに突っ込んで貰います。

 ですが、突っ込んだ後、脱出する必要がありますので、そこはマリンにお願いします。

 マリンはミュさまに抱き着いて突っ込み、海に入った後は急いで脱出して下さい。

 ただ、大砲をぶっ放した後、海に潜られるとやっかいです。

 そこでフジは緊急潜航して、下から魚雷を発射して下さい。海に潜らせないようにするのです。

 艦載機は上空から頭を狙って下さい。あの身体を見ると恐らく足を無くしても再生してくる可能性がありますが、頭ならそれはないでしょう」

「「「「了解!」」」」

「フジ、緊急潜航準備」

「おい、サブマリーナの腕を見せてやるぞー」

「「「「おおっ!」」」」

「艦載機、緊急発進、あのタコに気をつけろ」

「空で死ぬなら名誉だが、甲板で死んだら笑ってやるぜ」

「お前が一番下手だろうが」

 艦載機のプロペラが回る。

 俺とホーゲン、ウォルフ、ポールは居住区を走って第一砲塔までやって来た。

 第一砲塔に砲身は1本だけだ。その砲身の先には例の鬼頭のタコが居る。

 ここでぶっ放せば絶対当たる。

 俺はスピーカーが内蔵されたイヤーマフをして、CICと連絡を取る。その間に力持ちのポールが砲身に弾を込める。

 ホーゲンとウォルフは砲身の角度と方向を定め、ホーゲンが発射ボタンを握った。

「砲身に弾を込めた。発射の指示をくれ」

「こちらCIC、ミュさまとマリンさんは既に上空待機中、いつでも発射可能です」

「よし、撃て!」

「ドーン」

 発射の爆風が俺たちに来ることで、問題なく発射された事を体感した。

 タコの方を見るとミズホからは離れ、海に潜ろうとしている。

「よし、やった」

 その時だ。タコの頭の上に雷が走った。

「ホーゲン、ウォルフ、ポール砲身の陰に隠れろ」

 俺たちが砲身の陰に飛び込んだと同時に、砲身に雷が落ちた。

「ドーン、ガラガラ」

「第一砲塔、第一砲塔、大丈夫ですか?」

「ああ、俺は大丈夫だが、ポールが俺たちを守ろうとして、崩れた鉄板で足を負傷した。それと大砲の2発目はもう撃てない」

 見ると砲身は、ぐにゃりと曲がっている。

「こちらCIC、了解です。救護隊を向かわせます」

 その瞬間、「ゴン」という音がした。フジが緊急潜航したのだろう。

 それに伴い、「ブーン」という音が、イヤーマフを通していくつも聞こえた。

 これも艦載機が緊急発進したのだろう。

 イヤーマフを通して、アリストテレスさんの声が聞こえる。

「艦載機、あの魔物は雷を使います。不用意に近づかないように。フジが下から追い出したら、高高度からミサイルを発射して下さい」

 艦載機に備え付けられているミサイルは1本ずつしかない。艦載機全てのミサイルを合わせても40本という事になる。

「艦載機、ミサイルは右の角を狙って下さい」

「了解」

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