第244話 王国軍

 3日目、ゼラルド派を攻める攻撃が始まった。

 作戦はガルバ派と同じで、囲んでおいてヤマトからの艦砲射撃を行う。

 タウロー邸を守る必要はないので、全軍で出撃し、リシュジル邸を囲んだ。

 取り敢えず、忠告する。

「お前たちは、既に逃げ道はない。おとなしく投降しろ」

 門前で勧告に行った使者に対し、矢が飛んできたが、届かずに落ちた。

「それが、答えと受け取っていいのだな」

 使者が帰って来たのを見計らい、攻撃を開始する。

「では、信号弾を上げろ」

 俺が指示して、戦闘が開始される。

「ヒュルルルル、ドーン」

「ヒュルルルル、ドーン」

 ヤマトから撃たれた大砲の弾2発がリシュジル邸の壁に当たり、タウロー邸と同じように穴が開く。

「よし、突撃!」

 ユーリが命じると、全軍が開いた穴に向かって殺到する。

「おおっー」

 だが、ガルバ派と違ったのは、ゼラルド派はリシュジル邸に立て籠もる事をせず、反対側の門を開け逃げ出したのだ。

 そのため、港側が勝負になると思っていた裏側に居た兵士たちは動揺し、いきなり攻め込まれたので、囲みが崩れた。

 ゼラルド派も元は兵士たちだ。その乱れを見逃す事はしない。

 崩れた隊列を突破し、騎馬のみ30騎ほどが、逃げ出した。

 残ったのは雑魚だけだ。雑魚は突撃した兵士たちによって、捕らえられていく。

「しまった。幹部たちを逃がしてしまった。ミストラル、追跡してくれ」

 ミストラルが、空へ飛び上がった。

 騎馬集団はまっ直ぐ、ギブ要塞に向かって走って行く。

 ギブ要塞に兵士は配置していない。このままでは、逃げられてしまう。

 ユーリとアンドリューヌは騎馬100騎ほどを追跡に回しているが、今からでは追いつけないだろう。

 俺たちもキチンに乗って追いかける。

 ところが、ギブ要塞を過ぎたあたりで、追跡していった100騎と戦闘している。

 追いついたのかと思ったら、向こう側に王国軍が見えた。

 ゼラルド派はギブ要塞を抜けようとしたところ、進行してきた王国軍と鉢合わせになったらしい。

 それで、数が少ないユーリ側との戦闘を選択したのだろう。

 全員で戦闘に加わる。

 ラピスがペガサスに乗ると、ペガサスは白い身体を更に白くし、翼を出した。

 ラピスがペガサスに乗ってレイピアで戦う姿はさまになる。

 ペガサスは空中を駆け、相手にあたり、馬に乗っている賊を蹴落としていく。

 賊は挟み撃ちになればもうお手上げだ、この地では両側が崖になっているので、横への逃げ道はないのだから。

 それほど時間も掛からずに、賊は御用となった。

 向こうから来る王国軍を率いるのは、エドバルドだ。

「シンヤさま、お久しぶりでございます」

「エドバルドさん、どうしてここへ?」

「王国がヴェルサルジュの平定命令を出しているという事は、当然王国軍も出兵します」

 それはそうだ。俺も馬鹿な事を聞いたもんだ。

「やあ、エドバルド、お前が来てくれたのか」

 ユーリが親し気に声をかける。

「おお、ユーリさんじゃないか。あなたも来ていたんですか?」

「お二人とも知り合いで?」

「ええ、貴族学院で先輩後輩の仲です」

 エドバルドに食料事情の事を話すと、文官も連れて来ているので、そちらの方については、至急対応するとの事だ。

 とりあえず、工作兵を使ってギブ要塞に代わる食料の集荷場を作らなければならない。

 その後、領内から食料の収集を行う触れを出した。

 ヴェルサルジュの街には王都軍が駐留することになったため、臨時のキバヤシ軍はここで解散だ。

「それでは、我々はここで、お別れです。いろいろとありがとうございました」

「シンヤさま、お待ち下さい。今回の報酬については、追って陛下から連絡があると思いますが、領地だと大陸の西側になるので面倒になると思います。

 領地に代わる報酬で、希望される物はありますか?」

 そう言われても、報酬を望んだ訳ではない。

「いえ、特に報酬の希望はありません」

「そう言われましたも、今後このような事があった時に、他領の領主へ示しがつきません。何かご希望を言って下さい」

「では、アリストテレスさんと協議して後ほどご連絡いたします」

 アリストテレスさんと協議するが、二人の意見は一緒だった。

「エドバルドさん、それでは要望を言います。一つは王国内の道路の整備をお願いしたい。物流が良くなると経済が発展します。これはお互いにメリットのある事です」

 エドバルドは、呆れた顔をして聞いている。

「そして二つ目は、エルバンテから王国に至る鉄道の敷設を許可願いたい」

 聞きなれない言葉が出たので、エドバルドが首を掲げている。

「鉄道とは?」

「鉄のレールという物の上を鉄でできた物が走るのです。

 説明するより、もうしばらくすると、トウキョーとエルバンテ公都の間を走るので、見に来られたら良いと思います」

「承りました。必ず国王陛下へお伝えいたします」

 俺たちはエドバルド、ユーリ、アンドリューヌに別れを告げてヤマトに乗り込んだ。

「ジョニー船長、それでは我が領地に帰りましょう」

「ヤマト出港」

 ジョニー船長が発令する。

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