第50話 アイカの落胆(その二)(26)

 女王アイカに、この国丞相であるシルフィーが嘆願を始めだしたのだ。


 それも? 顔色を変えながら、自身の身体を震わせ怯える健太を抱き締めながら嘆願──。


 自分の物に酷い仕打ちをしないで欲しい……とでも言わんばかりの様子で嘆願を始めだしたのだよ。


 と、なれば? やっと収まった女王アイカの二人への嫉妬心が再び燃え上がる──炎のようにメラメラと。


 だから女王アイカは、自身の顔色を変えるのだよ。柔らかい表情から、二人への憎しみを込めた表情へと──。


 まあ、そんな女王アイカの様子を見れば。彼女の横で建ち並ぶ漢──。


 先程自身が計略した離反の策が不発──、失敗に終わったウォンの顔の表情が緩む──。


 それも? 自身の口の両端をつり上げ『ニヤリ』また苦笑を始めるのだよ。


 でッ、女王アイカ! 健太! シルフィー! ウォン! この四人以外の者達の様子はどうだろうか?


 我らも少しばかり四人の周りを確認してみる。


「ちょ、ちょっと、長~。シン相手に御方では無理だよ~。シルフィーさんの言う通りで、やめさせた方がいい~」


 シルフィーに続いて今度は、ウルハが女王アイカを諫め始めた。


 う~ん、でもね~? 今の女王アイカは、健太とシルフィーに対して、フタタ燃え上がり始めた嫉妬心と憎悪の、悪しき想いしかないので。


「うるさい~! 皆黙れぇえええ~! これは、この国の女王アイカとしての命令だぁあああ~。今直ぐ健太はぁあああ~。円の中心に入り~! シンと生死をかけて相撲をとれぇえええ~。分かったなぁあああ~。今直ぐにだぁあああ~」


 女王アイカは周りの嘆願に対して一喝──!


 女王アイカとして下知をくだすのだよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る