第23話 洗濯屋健ちゃん(3)

「頼むよ。サラ……。今日。今日だけでいいから、姉の私の頼みを聞いて欲しい。お願いだ。サラ」と。


女王アイカは自身の紅の瞳をウルウルと潤ませ、今にも泣きそうな顔と声色様子で、健太の付き添いを代わって欲しいと、自身の頭を何度も下げながら嘆願をおこなうのだ。


だからサラは、「はぁ」と溜息をつき。


「アイカ姉。今回だけだからね。次からはだめだからね。わかった? アイカ姉」と。


今回は少しばかり荒々しく、プンプンとお姫さまは、姉上さまに不満を漏らすのだ。


「うん。分かったよ。サラ。今回。今回だけにするから。次は、次こそは、私も我儘を言わないから。サラ御免ね」と。


今日の、夫の洗濯の付き添い。警護を代わってもらって上機嫌の女王アイカなのだが。実は彼女がサラや、その他の妹達、従妹。義理の母であるシルフィーに対して我儘を言う。告げる。嘆願をするのは今日が初めてではないのだ。


そう。健太がウォンの邪な策にかかり堕ちて、練習試合の最中に屍、骸になった日から。女王アイカはこんな調子で、夫にべったりと寄り添い甘え、離れない状態が続いている彼女。女王アイカなのだが。自身の夫である健太が他界をして初めて、自分には彼、健太が必要。愛してるのだと彼女は悟り。悟った迄は良かったのだが。


当の健太はあの世、冥府へと既に誘われて魂が抜けた亡骸。骸へと変化して、女王アイカアイカは涙も出ない程、絶望の淵に立たされ呆然としていた。


でも時間が経てば我に返り。夫の健太に詰め寄り。泣き崩れ、悲嘆に暮れようとしたら。


此の国の丞相であり。健太の筆頭妃と言っても過言ではない立場の。女神シルフィーに。


『くるなぁっ!』、『私(わたくし)の大事な物に触るな!』、『触るなぁ!』と。


気が触れたように怒号を吐かれ、後ずさり。その場で泣き崩れ、嗚咽を漏らし始める。


でも女王アイカの義母であるシルフィーは、悲しみに暮れ、嗚咽を漏らす。義理の娘に対して、一言も優しい言葉をかけずに。

『あなた。いきましょうかぁ~』と、夫の健太の亡骸に声をかけ。そのまま抱きかかえ連れ。エリエ集落から気が触れたように高笑いをしながら姿を消した。






だから女王アイカは泣きに泣いて。泣き崩れたのだ。

自身の妹エリエとウルハと三人で抱き合いながら悲しみに耽る。


でっ、三人は泣くに泣いて時が経てば、自国の神殿。屋敷へとシクシク、重たい足取りで帰宅をしてみれば。

「お帰り。三人とも。おそかったね。シルフィーが久し振りに僕へと手料理を作ってくれたから。早くみんなで食べよう。食べようよ」と。

微笑みながら催促してきたから。

三人の妃は、「…………」、「……?」、「? ?」で、困惑。動揺を始めるのだが。

「私(わたくし)がこのひとを【リザレクション】で蘇生魔法をしようして生き返らせました」と。


『フン! フン!』と、シルフィーが鼻息荒く告げてきたのだ。


だから三人の妃達は、仲良く口を揃え。


「「「うそぉ、おおおっ!」」」


「「「本当にー⁉」」」と。

驚愕! 絶叫を吐く。放つのだ。


でっ、その後は三人のお妃さまは、食事どころではない。慌てて自身の主へと三人が一斉に抱きつき。甘え始め。夫貪り始めながら。本当に彼が、健太が生きているかを確認しながら愛を。夫婦の絆を深めたのが前回の話しの終わりの続きでね。


それ以降女王アイカはこの調子なのだ。だから女王アイカの義母を筆頭に従妹。姉妹達も皆困っている状態なのだ。


だって先程も説明した通りで、女王アイカは義母や従妹、妹達の『今日だけだから』と、毎度嘘を偽りをしては、此の国の男王を独占するから困っているのだ。


皆も平等に王の寵愛。愛を頂きたい。貰い受けたいからね。


だから此の国の男王であり。女性達の洗濯屋健ちゃんである。健太が、自身の片目ウインクしながら。

「サラさん。後で髪を洗い。結ってあげるから。待っててね」

彼は後で妻の更に奉公、尽くすから。機嫌を直してくれと遠回しに告げるのだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る