第69話 長の苦痛…… (12)

 ウォンこの人の思惑通り、健太は、この場を去った──それも集落の反対側、他の種族や集落の縄張りで狩猟範囲だ。だから先ず健太の非力な力では生き残る事は不可能だと思う?


 まあ、運が良ければ途中で反転して集落に気落ちしながら帰ってくるかも知れない?


 で、でもね……。ウォンこの人もこれだけの事はした……私から健太を奪ったのだから。出来れば責任を取ってこれからの私を支えて欲しいから「ウ、ウォン?」と、声を掛けた。


「……ん? なんだ?」と、呆然としていたウォンこの人から気の抜けたような声が返ってきたよ。


 だから私は続けて「健太も多分いなくなったと思う? で……率直に尋ねるが、次の子の親にどうだろうか?」と、尋ねてみた。少し緊張もしたし乙女のような恥じらいで顔もほんのりと赤くなったと思うよ。


 特にウォンこの人への告白など、いつ以来だろうか?


 と、思うぐらいだから。とても緊張をしたよ。


「……わっ、悪いが、アイカ。少し考えさせてくれ……今は気が動転して返事が出来ん……」


 まあ、こんな感じでね、私の予想外の返事が、ウォンこの人から返ってきた……と、いうか、他人の子を身籠っている私には、こんな返事が返ってくるかな?


 と、予想は経てていたから「そうか……」とだけ、ウォンこの人声を漏らして、健太が走り去った方向を私は只々見つめるだけだったよ。




 ◇◇◇◇◇

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