第58話 家出! (22)


 もうね、こんな様子の僕だから、アイカ《あの人》と二人きりになるのは、もう無理です。とてもじゃないが、アイカ《あの人》の事を信用もしていませんし。もう家族でもない。只の赤の他人です……それにさ、ウォンと比べてみても、貧弱容姿な僕だけど……でもね、まだ男尊女卑が残る日本から来た訳ですから。男の浮気は、『男だから仕方がないか?』と、言葉が出ても、女の浮気は絶対に許しません。いくら温和な僕でも……それにね、仮にも数か月は、夫婦めおとをした仲ですよ。


『あああ……それなのに、それなのに……』と、僕は落胆した声しか出ません。


 だって奥さんと浮気相手の男との密談の中で、僕を処理するとか殺すとか、まるでサスペンスのドラマの世界のような出来事が。まだまだ華も恥じらう十六歳の僕に降り掛かって来た訳ですよ、本当に信じられない事が。もう、悔しいやら、情けないやらで……断腸の思いなのですよ。


 ……数か月、それも今頃になって、僕の事が飽きてきて、処理をしたくなるぐらいだったら。僕がアイカ《あの女》に情が入る前……最初転生させた時に、有無も言わせずに直ぐに仕留め──処理をして、煮るなり焼くなりして僕を殺してくれた方がましだった……それをそれをだよ、今頃になって、アイカ《あの女》が、再婚するのに僕が邪魔だからと、殺して処理するとか、述べなくてもいいと思わないかい?


 いいさいいさ、もう二度とあの集落には帰らない。君達の前から消えてやるよ。


「くそくそくそくそくそくそくそくそくそ……ふざけるなアイカァァァァァァ……絶対に許さないからな。それにもう死んでやる、死んでやるからな……」


 愚痴を言いつつ僕は、更に密林の奥へと進んでいった。


 そこは僕が今迄行った事もない。アイカさん達には一人で踏み込んでは行けないと、注意を何度も何度も受けた場所だった。



◇◇◇◇◇



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