第86話いなくなると分る長い友

 メグミ達がお風呂から出て脱衣場で着替えていると、脱衣場にアカリ達が入って来た、


「二人ともお疲れ様ーーでも無さそうね? なに? 何だか元気いっぱいってかツヤツヤしてる?」


「余り詳しく聞かないでメグミちゃん、話せないのよ守秘義務ですって」


「メグミ先輩、カグヤ寂しかったですぅ、延々カオリさんに引っ張りまわされてこの時間までですわよ、全く冗談じゃないですわ」


「ん? アカリさんと一緒じゃなかったの?」


「私の方にはシホルさんって戦兎人の受付嬢の方が付いて、その方と二人で彼方此方回ってましたわ」


「ああ、なるほど、それでハルミさん自分で出向いたのかな? 魔物以外の受付嬢、二人とも別件で出かけてたのね」


「あら? ハルミさん来てたの? 私はもう遅いから直接此処へ帰って来たので今日は昼間に一度会ったきりですわね」


「そうですね、昼食時にお会いしたきりですね」


「明日は応援の淫魔部隊が来てくれるんでしょ? アカリさん達は明日はどうするの?」


「私はシホルさんから何も聞いてませんよ? 淫魔部隊が来てくれるんですか? カグヤちゃんは何か聞いてる?」


「ワタクシも何も聞いてませんわ、流石に人数が多すぎますもの、応援が来てくれないと吐きますわ、本当に良かったですわ」


「何してるかは想像が付いてるけど、なんでかが分からないのよね、っま良いわ、明日プリムラさんも来るかもって言ってたわ」


「ああ、それなら安心ね、一応明日も朝から組合事務所に行く予定だけど、応援が来るなら任せて私達も迷宮に行きたいわ」


「そうですわね、一度顔だけ出して、その後ここに戻りますわ、無理そうなら連絡を入れるので待っててくださいメグミ先輩」


「ん、了解、けど多分また昼間ではここに居そうよ? 明日も朝から砂浜の魔物掃除なのよ」


「噂に聞いたわよ、随分派手にやったのね、今度は反対側ですって? 街の人達が良い小遣い稼ぎだって喜んでましたよ」


「カグヤも聞きました、ニュースになってましたわ、休憩で入った喫茶店のTVで流れてましたの、お祭り楽しそうでしたわ」


「うん、その件はノリネエの前で話すのは止めようか、ね、分かるでしょ?」


「ああ、そうね、私達はお風呂に入ってから食事しようと思ってるけど、メグミちゃん達はもう終わったのね?」


「うん、食事もお風呂も先に済ませちゃったわ、ごめんね、ああ、搾乳はこれからだけど、どうする? 食事止めて飲む?」


「待たせても悪いから良いわ、アリアさん達待ち切れなそうよ、早く行ってあげて」


振り返ると、アリア達を含めて、ノリコ、サアヤ達もすっかり着替え終わっている、メグミは、


「ああ御免、話し込んでる場合じゃないわね、サクサク着替えるわ」


「メグミちゃん、ちゃんと髪乾かさないと寝ぐせが酷いことになりますよ、結構伸びてきたんですから!」


サアヤがメグミの背後に回ってドライヤーを構える、メグミはバスタオルを脱いで下着を身に着けると、スエットの上下を着るとそのまま備え付けの籐の椅子に座らされる、その間にアカリ達は服を脱いでお風呂に入って行った。


「最初の短い時は拭くだけでほぼ乾いてたのに、短いとは言え伸びてくると面倒ね」


「でも良かったわ、プリムラ様に頂いた、育毛剤の御蔭ね、一日に1ミリ近く伸びるなんて、もうすっかりショートカットね、ベリーショートも可愛かったけど、この位も活発に見えて良い感じね」


そう言いながらノリコは育毛剤の瓶を取り出す、サアヤはドライヤーでメグミの髪を乾かしながら、


「けどその育毛剤、男性には効果ないんですって、開発した師匠が泣いてましたわ、自分達の為に開発したのに女性にしか効果がないって……今も男性用は鋭意開発中だそうですから、何れ開発出来そうですけどね」


「男が細かい事気にし過ぎよね、そんなんだから禿げるのよ!」


「ダメよメグミちゃん、そう言ったところに男性は敏感なんだから、無神経にハゲとか言ったら駄目よ」


「良いじゃない、大体禿げてきたら短くすればいいのよ! 海外とか素敵なハゲのおっちゃん一杯居るじゃない、俳優とかでも多いわよ? あのバーコード? あれは無いわ、サクッと短い方がよっぽどいいわ」


「メグミちゃん絶対本人の前では言ったらダメだからね? お願いよ? メグミちゃん本当に言いそうで怖いのよ」


「けどノリコお姉さま、私も男性の長髪はあまり好きではありませんわ、綺麗にしてる人なら良いのかもしれませんが、何処か不潔なだらしない感じがして、個人的には男性は短い髪型のほうが好きですね」


「けどサアヤちゃん、エルフの男性は大体長髪じゃない? あれもダメなの? 女性っぽい方が多いから似合ってると思うのだけど?」


「男性が女性っぽくて何が良いのですか? 私は男性は男性らしくあって欲しいですね、BLでも男らしい方と、年下の女顔の男性の組み合わせがツボです、双方が女々しい男性の絡みとか萌えませんわ」


「サアヤ、話が逸れてる、すっごい逸れてる」


「良いところでしたのに、まあ良いですわ、お姉さま乾きましたわ、後は任せますね」


メグミの髪を乾かし終わったサアヤが横に退けると、今度はノリコが育毛剤をメグミの頭皮に塗り込んでマッサージをしていく、


「ああ、でもあれね、この頭皮マッサージは最高ね! ありがとう、サアヤ、ノリネエ、何だかお姫様になった気分だわ」


「メグミちゃんは大げさね、けど私もメグミちゃんに髪の毛セットしてもらうのは気持ちいいわ」


「本当に貴方達は仲がいいわね、けど先ほどの男性の髪型の話、タツオ君は合格なのね二人とも」


「ああ、そうねあれは男の中では一番ましな方ね」


「お兄ちゃんは禿げそうにないですね、知ってますかメグミちゃん、お兄ちゃんのあの髪型、ツンツンしてるのナチュラルなんですよ? 前髪少し上げてるくらいで、後は自然とあんな風なんですよ」


「タツオお兄ちゃんの髪は結構剛毛ですよ、前に触ったら硬かったです、けどもう少し伸ばして良い気もしますけど」


「前に聞いたらタツオ君、伸ばすと剛毛が寝ぐせになって大変なんですって、だから短くしてるって話してましたよ」


「アレで伸ばしたらツンツンヘアじゃなくてウニヘアになりそうね、まああれで見慣れてるから良いんじゃないあれで?」


「カットとか何処でやってるんだろ? 結構あの髪の長さキープしてますよね?」


「ん? でもカットは3週間に一回位じゃない間隔としては?」


「そうね目立たないだけで偶に伸びてますよね、でもいっそ『ママ』がカットしてあげたら? 『ママ』ならあの位のカットなら余裕でしょ?」


「ノリコ、偶にはタツオ君にも息抜きが必要ですよ、それはタツオ君が望むならしますが、何時も私達ばかり、女性ばかりだと息が詰まるでしょ、良い息抜きになってると思うわよ、髪の毛のカットは」


「ねえ、メグミ、ソロソロ、胸がパンパンなんだけど!」


雑談をしていると少し話し込み過ぎたのか、ジェシカが急かして来る、


「ごめん、ジェシカ、もういいわ、行こうノリネエ」


頭皮マッサージをノリコにしてもらっていたメグミは、お礼を言って立ち上がるとジェシカ達の後を追う、ノリコ達も心なしか弾んだ足取りでそのメグミを追っていく。



 搾乳を終わらせたメグミはロビーに来ていた、何かお菓子かツマミになるものが欲しくなったのでフロントで買おうと思ってやってきたのだ、この施設、フロントには24時間人が居る、その横に併設されている売店も24時間営業だ、会計はフロントで行う、サービスの提供と小金も稼ぐことのできる良いシステムだと感心する。高級感は薄れる気がするが気にしてはいけないのだろう……


 売店に入るとそこには、タツオとシルフィ、それに貴族の御付きの眼鏡のメイドさんが一人買い物に来ていた、メグミとしてはメイドさんに声を掛けたかったが切っ掛けが無い、シルフィは露骨にメグミを避けるし、仕方なくタツオに声を掛けた、


「よっ! タツオなに? あんた暇なの?」


「なあ? 声を掛けるにしても他に言い様は幾らでもあるだろ?」


「忙しいの? 何してるのこんな夜分に?」


「いや、忙しいとは言ってねえよ、暇だよ、こんな所で夜に何やるってんだ?」


「やっぱり暇なんじゃない、なんで否定したのよ?」


「暇なのは確かだが、お前だって同じだろ? それに今は買い物中だ!」


「めんどくさい男ね、で何買ってるの?」


「ああ、何かツマミをな、部屋でTVでも見ながら何か喰うかなと思ってな?」


「あんたの買うものって、なんか爺むさいわね、もしかして部屋で一人寂しく酒盛り?」


「まだ未成年だよ! 酒は飲んでねえよ! なんだ爺むさいってお前本当に口が悪いな」


「けど、スルメに柿ピーに貝柱ってお酒のツマミにしか見えないわよ? お父さんが晩酌のツマミで食べてた様なチョイスよ?」


「スナック菓子はどうも苦手なんだよ、ほっとけよ、それに結構美味いんだぜここのは」


「へえ、まあこの街で作ってるみたいだし、そんな物なの? ヘルイチで売ってる物と一緒じゃないの?」


「ヘルイチで売られているのは大魔王迷宮の水棲階層の物が多いな、此処のはシーサイド産でこの海で取れた物っぽいな、こっちの方が俺は好みだな」


「原材料と職人さんの差かしらね? そんな物なのね」


「お前こそこんな遅くに、そんな甘い物とかスナック菓子ばっかりで……太りはしねえな、お前の場合」


「私一人で食べるんじゃないわよ? そうだアカリさん達も帰ってきてるし、タツオも来なさい明日の予定の打ち合わせと報告会をするわよ、暇ならいいでしょ? それにこれでも最近多少体重が増えたわよ!」


「なあ普通お前くらいの年頃の女って体重増えたら落ち込むものじゃねえのか? なんで自慢げなんだ?」


「はぁ、これだからタツオはダメなのよ、良い? 私はね女としてランクアップしたのよ!」


「何言ってんだお前? 頭でも打ったのか?」


「何だと、この鈍感男が! まあ良いわ、あんたも来るの?」


 そんな話をしていると背後でかみ殺したような笑い声がする、振り返るとシルフィが後ろを向いて肩を震わせ、メイドさんが口元を手で覆って笑い声を押さえていた、そちらをメグミが見ているとそれに気が付いたメイドさんが眼鏡の位置を直しながら、


「ごめんなさいね、聞こえてしまってつい、失礼しました。けど貴方達って仲が良いのね、それにもっと怖い人達かと思ってたら、普通ね、普通の若い子達だったのね」


「怖かったですか? 何故?」


「私達にはこの街の冒険者はみんな怖いのよ、貴方達はこの地域に居るから違和感がないのでしょうね、この街の冒険者は異常よ、皆異常に強いのよ」


「そうなの? 多少自分達が強いかなとは思ってるけど、この地域の冒険者全体がそこまで強いの?」


「そう、自覚が無いのね、この地域の普通クラスの冒険者はオークを一人で何匹くらい相手にするの?」


「私はまだオークと戦ったこと無いわ」


「まあ女はな、男の話なら、『黒銀』クラスが大体平均だろ? それでまあ一人で相手できるのは5・6匹じゃねえか? 一寸強い奴なら後2・3匹位なら行けるだろうな」


「そんな物なの? あんた前にオーク位なら群れで来ても平気だって言ってなかった? 確か男はオーガとタイマンで勝ったら一人前なんだっけ?」


「まあそんなもんだな、『黒銀』クラスに上がるのに男はオーガとタイマンで勝てる程度ってのが有る、あと今の俺ならオーク位なら2・30匹位ならたいした手間じゃねえな、オーガでも10匹位なら負ける気がしねえ」


少し顔を青くしながらメイドさんは、


「普通の国の冒険者や兵士はオークと戦って勝てたら一人前なんですよ、オーガと一対一で勝てたら余程の強者、戦士長クラス、大隊長クラスでしょう、普通の兵士はオーガと一対一で戦いません、複数人で囲んで戦って、犠牲者が出なければ褒められます。オークでさえ人よりも大きいんですよ? ここの地域の冒険者は異常ですよ」


「へえ、なんでそこまで差が付いてるの? 恩恵はこの世界の人達も持ってるでしょ? この地域の召喚者じゃない人達もそこまで弱くないわ、普通に召喚者と一緒に戦ってる」


「さあ? なんでだろうな? 武器や防具の差か? 戦い方の差か? この地域は上に化け物みたいに強い奴らが居るからな、感覚がマヒしてる感はあるな」


「貴方達は魔法を無詠唱で使うでしょ? 他の国だと無詠唱で幾つか魔法が使えるなら大魔術師と呼ばれます、貴族の一部では英才教育をして幾つか無詠唱で魔法を唱えれるものがいますが彼らはエリート、なのにこの地域の住民は一般市民に至るまで無詠唱が基本です」


「でも他の地域でも無詠唱出来る人が居るなら、他の人だって出来るでしょ? そもそも何を詠唱してるの? 同時詠唱とか呼ばれる技術も有るけどあれ名称が同時詠唱なだけで、やってることは複数の魔法式を同時に構築して、魔力をコントロールしてるだけよ? 詠唱の必要性が分からないわ」


「貴方達の言う魔法式が私達には理解できません、そもそも全員が魔法を使えることが前提の話になっているのが分かりません」


「ああ、あれだな、教育の差だ、この地域は原理を明らかにして、基礎から魔法を教え込む、実際に試しながらその感覚を覚えて基礎から学ぶ、多分、他の地域は魔力操作とかの基礎を飛ばして、いきなり魔法を覚えさせてんだろ、だから基礎的な才能如何で、覚えて使える奴と使えねえ奴が出るんだな」


「無茶するわね、魔法組合とかで『供与魔法』で魔術式だけを転写されてそれをいきなり使ってるの? その魔法式の仕組みどころか魔力操作も知らないで? それは魔法が使えない人が居ても仕方がないわね、殆ど偶然だよりじゃない、偶々魔力を流し込んだ魔法式が発動するかどうかに掛けてるなんて……」


「そうか、だから詠唱が居るんだな、魔術式が良く分かってねえから、イメージだけを頼りに、魔法式に魔力を注ぎ込んでんだろ、何だかすげえ魔力を無駄に消費してる気がするがな」


「あれね溢れ出るほど魔力を注いでやっと魔法を発動させてんのね、もしかして加護や武技も同じで、無駄に力使いまくってるのかしら?」


「分からねえが、魔法だけ特別ってわけじゃあねえだろ、あれだ基礎が全く出来ねえんだろうな」


「私達にはその基礎がなにかすら分からないのですわ、ですから貴方達との間に隔絶した差があるのね」


「そうなのね、教育って大切なのね、というか、この地域の先人がその基礎を解き明かしてくれているから、その教育方法を確立してくれているから、私達は大分楽をさせて貰えているのね」


「そういやあ、他の地域だと文字の読み書きできる奴がそもそも少ないって聞いたな、計算が出来るのも商人や貴族位だとかごく一部って聞いたぜ」


「そうですね、文字の読み書きができるのは極一部の人だけです、計算もそう、なのにこの地域の人達は庶民の子供でも出来る、以前少しこの街に買い物に出たのですけど、街の住人が、魔物でさえ普通に読み書きして計算までしていました。本当に驚きですわ」


「前にアツヒトが言ってたわね、この地域の識字率は100%、田舎の開拓村にも学校が有って教育してるって」


「本当に、この地域の事を知れば知るほど恐ろしくなってきます、こんな人達に勝てるはずがない」


「けど今は貴方達だってこの地域に保護されているのでしょ? だったら学べばいいんじゃない? なんで恐れるだけで学ぼうとしないの? 貴方だって学べば色々出来るようになるわよ? 私達だってまだ学び始めて半年立ったくらいよ?」


「半年で今朝のアレなんですか? 基礎ですか、少しお嬢様方とも相談してみます」


「ああ、あれだぞ? こいつは少し規格外だからな、あんまり参考にするなよ、普通はあれださっき話したようにオークで5・6匹だ、それ位ならあんたでも倒せるようになるさ」


「それは……」


「本当にそこまで強くなれるの!」


後ろで黙って聞いていたシルフィが声を掛けてくる、目がとても真剣だ、何か決意を秘めた目に見える、メグミはそのシルフィに、


「強くなれるわ、その位なら誰でも、基礎から学べば成れる! 才能があればそれ以上にだってなれるし、努力次第では更に高みに昇れる、けど何もしなければそのままよ」


「そう、そうね、私はエルフ、貴方達より時間は有るもの、そうよね、次は……」


何かを決意したシルフィがオヤツを手に売店から出ていく、シルフィ達は売店の品物の料金は要らないらしい、保護されているのなら持ち合わせも当然ないのだろう、フロントの受付のおばさんは品物だけ確認すると布の袋に入れて手渡している。メイドさんも、


「今日はお話し出来てよかったですわ、私はメリルと申します、名乗るのが遅れて申し訳ありません。では失礼いたします」


メリルさんもそういうと籠一杯のお菓子をフロントの受付のおばさんに確認してもらって大きな袋に詰めていく、此方もお金は必要ないらしい。メグミは去っていくメリルさんを名残惜しそうに眺めながら、隣に立つタツオを見上げると、


「この異世界も色々あるのね、ってタツオあんたも、また髪の毛伸びたわね」


「なんだ突然、まあソロソロ切らねえとな、どうするかな、たかが髪の毛でヘルイチに戻るの面倒だな」


「『ママ』に頼んだら? さっき話題になってたから気になったんだけど、『ママ』はタツオが良いならカットしても良いって言ってたわよ?」


「そうなのか? なら頼むか、けどどういった流れでそんな話になったんだ?」


「ああ、育毛剤の流れで、髪の話になって、タツオって禿げるのかしらって話から、タツオの髪型の話になったんじゃなかったかしら?」


「ハゲとか言うな! うちは親戚一同にハゲは居ねえから禿げる可能性は低い!」


「だからタツオは禿げそうにないって話になったのよ」


「なあメグミ、ハゲハゲ言うなよ、お前俺でも言われるとドキッってするんだから、少し薄い男の居るところで言うんじゃねえぞ?」


「ねえなんでそんなに気になるの? なに少し薄くなってきてるの?」


「あのなあ俺はまだ10代だ! 流石にどこも薄く成ってねえよ! けど偶に将来どうなるのか禿げてるおっさん見てると想像しちまうんだよ」


「小さいわ、タツオあんたの肝っ玉もっと太くて大きいと思ってたのに、鈍感な癖に小さいわね」


「男に向かって小さいとかも言うなよ? 俺はまだいいが他の奴には絶対に言うなよ?」


「なによ? ああ、あんたはあそこ大きそうだものね、けどそこの事を言ってるわけじゃあないわ」


「分かってるよ! なあなんでお前はそんなに下品なんだ? もう少し慎みを持てよ」


「細かい事気にしてると禿げるわよ!」


「だから禿げてねえし! ハゲとか言うな! いい加減にしろよお前!」


「はぁ、あんたも、『髪が後退しているのではない、私が前進しているのだ!』位言いなさいよ」


「もういい、お前は喋るな! 受付のおばさんが笑ってるだろ! ほら買い物したら打ち合わせするんだろ、サクサク選べ!」


受付のおばさんは爆笑していた。

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