第66話木を隠すなら森の中

 メグミは御茶とお茶菓子を摘まみながら、アカネとトウコにお礼を言った。今までも冒険者ギルドに行って何度か会っている筈だし、言葉も交わした覚えが有る、顔は覚えていたが名前までは知らなかったのだ。綺麗な受付嬢のお姉さん、そんな認識だった。だが外に居るサキと言う受付嬢を含めて、その程度の認識のメグミを庇ったのだ、それがメグミには嬉しかった、そして自分は名前すら知ろうとしてこなかった事を恥じた。

 確かタツオが昼前にお姫様抱っこをしていた時にも居た3人組、この機会に名前を覚えようと念入りに手を握って一人一人お礼を言っていく。


「何? 良いわよお礼なんて、だって貴方達が笑ってくれていた方が私が嬉しいのよ、見習いの子で明るく笑ってる女の子って貴方達位なのよ? 不安で心細くて暗い顔の子が多いの、そう、そんな子たちのフォローが私達の仕事よ、もちろんそれが嫌なわけじゃないわ、でもね、やっぱりみんなに笑って欲しいのよ、笑顔で居て欲しいの。そんな中で貴方達の存在は私達の癒しなのよ。

 だからって本当は色々アドバイスとかしないとダメだったのに、自分達で色々調べてドンドン成長していくからって貴方達の事を後回しにして、ほとんど放置だったわ。だったら貴方達が困っている時位助けさせて、それで今までの事が帳消しにはならないけど、せめてその位はしたかったのよ」


 アカネは微笑んで手を握り返してくれる、クルクルとパーマの掛かったボブに近い短めの明るい色の髪が、その明るい表情と相まって活動的な雰囲気に見える、背はメグミより少し高い、引き締まったスタイルに受付嬢の制服が良く似合っている。エミの話では受付嬢は全員中級冒険者以上との事なのでアカネも相当強いのだろうが、武器を持って戦っているよりもOLをしているといわれた方がよほど納得できる女性だった。


「あら? お姉さんにまで手を出すつもりなの? なら私もメグミちゃんの御眼鏡に適ったのかしら? それは嬉しいわね。 ふふっ、他の子に自慢できるわ。

 お礼? そんなのは良いのよ、私はね貴方の保護者の一人の心算よつもりよ? 受付嬢はね見習いや、初級の子達の保護者なのよ? 保護者が自分の子を庇うのは当たり前でしょ? そうね、何かお礼がしたいなら、何かあったら直ぐに相談に来なさい。それが一番うれしいわ、手の掛からない子はそれはそれで楽なのかもしれないけど、お姉さんは寂しいわ」


 そう言って微笑むトウコは、メグミの肩をポンと叩く。長い黒髪をアップに綺麗にまとめた、少し色っぽいお姉さんタイプだ、口の左下の黒子がそれに輪を掛けている、大きな胸が受付嬢の制服を押し上げる。『戦慄の挨拶』のハナと同じく年下の男子には堪らないお姉さんだと思われるが、何故かメグミは自分と同じ雰囲気を感じる……


(……もしかしたら同じ嗜好の人かもしれない……手を握った時に絡めてきた指、綺麗で長くて細くて、スベスベだったな、けどその絡み方が……イヤ、私の勘違いかも知れないし)


 メグミは取り合えずその思考から現実に戻ってくるが、肩を叩いたトウコの手はそのままメグミの肩を撫でている……メグミは気を取り直してトウコを見つめて曖昧に笑いかけると、艶っぽい笑みを返して来る。


(ガチかもしれない!!)


そんな事をメグミがしていると、


「じゃあみんな一端帰って、シャワーでも浴びて着替えたら指定した酒場『黄金の子羊』亭に午後6時に集合でいいね? 時間に余裕は持たせたからのんびりしても余裕の筈だよ、まあ未成年も居るし、皆飲み過ぎは厳禁だよ! 予約は済ませたから、店に着いたら『北極星』のアキの名前を店員に伝えて、座敷に案内してくれるからね」


手早く通信魔法球で予約を済ませたナツオが皆に知らせるように大声で言って回る。


「飲み放題なんでしょ? 食事は?」


 アキが尋ねると、


「飲み放題は頼んだけど、さっきも言ったけど未成年が居るんだから泥酔は厳禁だよ、料理はお任せコースを人数分頼んだけど、幾らか決まった物が出るだけで個別注文もOKだ、食べれないものが有る人はそちらで頼んでくれ。他に質問がある人は居るかい? ……居ないみたいだねでは解散!」


 全員がゾロゾロと会議室から出ていく、タツオとヒトシ達『暁』メンバーは折り畳み椅子を片付けて居る。アカネとトウコもテーブルの上の湯飲みを片付けて茶菓子を下げてテーブルを拭いている。その様子を見ながらメグミも仮設本部を出ると受付に居たサキの所に行く、


「え? どうしたのやっぱり何かしたの? え? ただのお礼? ああ、さっきの連行されてきたときに庇ったから? あんなの当然よ、気にしないで良いわよ、メグミちゃんが殊勝だと何だか変な感じよ。貴方は余りそんなの気にしない子だと思ってたわ。

 ねえ、貴方最初に冒険者ギルドでなんて私に声かけたか覚えてる? [ねえねえお姉さん、可愛いですね、ちょっと教えて欲しいですけど!]ってクエストの受け方を聞いてきたのよ? その後も[可愛いお姉さん。ありがとう!]ってニパッと笑ったらクエストを受けて駆けて行ったわ。その後も毎回そんな感じ、3人組になってからもよ? 

 貴方受付嬢全員に、可愛い、とか綺麗、とか色っぽいとか言ってたのよ? 面白い子が居るって評判だったんだから、そんな元気な後輩を可愛い先輩としてはちょっと庇うくらいは何でもない訳よ!

ん? 名前覚えてくれたの? じゃあ次からは[可愛いサキお姉さん]って呼んでね!」


 お茶目に笑うサキ、小柄でメグミよりも10センチ以上背が低い、長い腰まである髪の毛を首の所でリボンで纏めてそのまま背中に垂らしている、抱き心地の良さそうな細すぎない体を受付嬢の制服に包んでいる、顔も童顔で本当に可愛らしく幼く見えるが、間違いなく年上であろう、しかし私服でそこら辺を歩いていれば年下にしか見えない。そんな可愛らしい先輩がお姉さん振るのはとても微笑ましい。思わず頭を撫でようとしたメグミをノリコとサアヤが必死で止め、そのままメグミを引きずるようにその場を離れた。



 タツオを待ってから一緒に家に帰ったメグミ達は、『ママ』に打ち上げの事を話す、


「あら、まあ付き合いも有るでしょうし仕方ありませんね、ではタツオ君が引率してちゃんと連れて帰ってくるなら特別に今日は門限を午後10時にしましょう。これ以上遅くなってはいけませんよ?」


 そう言って許可してくれた。


「今日は一人で夕飯ね……」


 少し寂し気に溢す『ママ』に一緒に来ないかと誘ったが、


「保護者同伴で打ち上げに行く人なんて居ません、大丈夫だから楽しんでいらっしゃい。でもお酒はダメよ? 特にメグミ! 絶対にダメですからね?」


「ねえ『ママ』なんで私だけ特になのよ?」


「その場のノリで飲みそうなのが貴方だけですからね、分かるでしょ? ノリコは絶対に飲まないでしょ? サアヤはそもそもお酒、アルコールが苦手でしょ? 可能性が有るのは貴方だけなのよ?」


「うううっ、……ん? ああ、そう言えばカグヤやアカリさんもこの家に今度引っ越して来るわ、『ママ』勝手に決めっちゃったけど良かったかな?」


「あら? 正式にパーティ組むのね、良かったわね、ではカグヤちゃんもアカリちゃんも、もうウチの子ね、歓迎します、空き部屋が幾つかあるから好きな部屋を今度選びなさいね」


 この家には部屋が多い、庭から見て地下は家の裏から見ると一階で、その昔、この家に前の持ち主が住む前は大きな店舗だったらしい、今は入り口を残して頑丈な石の壁で塞ぎ半分を工房兼研究室にして、残り半分は大きなシャッター付きの倉庫にしている、裏からの荷物の搬入は道路から即倉庫に入れて便利だし、工房用の機材などの搬入にも便利だった。これらのリフォームは前の住人が既にしていた。

 その上の1階部分は玄関にキッチンにダイニング、リビング、お風呂場と脱衣所と洗面台そして大きな洗濯機もここにある。トイレが2つに、『ママ』の部屋、客間が2部屋。現在タツオが1部屋使用中、各部屋に2個ベット設置。

 2階はメグミ達が3部屋使っているが後3部屋空きがあり、更に1部屋客間が2階にもある。そこは現在アカリとカグヤが使用中である、2階にもトイレが一つに、そこに併設された洗面所、そして大きなベランダが有る。メグミ達のリフォーム前は2階の屋根裏にも使用人用の部屋があったが流石にそこまで必要ないと、屋根裏部屋に続く階段と廊下を取り外し現在は客間を除いた2階の各部屋ののロフトとして使っている。そして客間は梁を残して屋根まで吹き抜けとした。

 庭は広く、石造りの塀で囲まれ、庭に入るための大きな鉄製の門も有る。本来はこの門が正面入り口で庭に面した現在のリビングが玄関だったのかもしれないが、前の住人がリフォームしたのか、もしかしたら勝手口だったかもしれない所が現在の玄関になっている。まあそっちの方が便利なのでメグミ達もそのレイアウトでそのまま使用している。

 日本人の感覚だと家と言うより屋敷と言った方が良いのかもしれない広さが有るが冒険者のパーティが一緒に住むのならこれ位が丁度いいらしい。

 これで家賃が一か月9万円はリフォーム代を入れても破格の安さである。因みにリフォーム代は当初、格安で手に入れた木材込みで材料費150万円、工賃は自分達でやるので無料、といった予算で進めていたが、結局師匠達が悪乗りして材料費が嵩み250万円程掛かった。だがその仕上がりはその値段の十倍の価値はあったと思っている。この広いボロボロの屋敷が新築同様に仕上がって、家具まで付いてきたのだ、たとえ10倍の値段であっても格安であろう。


「うんうん、そうよ、だからね……」


『ママ』は、カグヤにも注意して、と言おうとしたメグミを遮り、


「では貴方達二人も言っておくわね、この家の子は普段は門限は午後9時よ、その他のルールも追々説明しますが、多分貴方達二人なら直ぐに慣れますでしょ、心配ないわ。そして未成年者はお酒は禁止よ? お酒は二十歳迄お預け、良いですか? まあ二人は心配なさそうね」


「あれ? カグヤは怪しくない? ノリで飲みそうじゃない?」


「ん? 何言ってるのメグミ、カグヤちゃんはメグミみたいに男の子にノセられたりしないと思うわ、見ればわかるでしょ?」


「流石は『ママ』ですね、良く分かってますわ、ワタクシが男など相手にする筈有りませんわ、メグミ先輩」


「そうねカグヤちゃんは女性陣の中でお喋りするのが中心で、男性の傍に寄りませんよメグミちゃん」


 カグヤやアカリまでが突っ込む、


「ぐぬぬっ、なんだろう、今日は私が集中攻撃を受けている気分なんだけど……釈然としないわね」


 不満顔のメグミは、取り合えず先に『カナ』を研究室に連れて行こうと手を引いて階段に向おうとすると、それを見た『ママ』は、


「あら? そう言えば『カナ』はもう外に連れ出して平気なの? 完成したのかしら?」


 嬉しそうに尋ねてくる。


「まだもうちょっと改良するけど、日常動作には問題は無いわ」


「そう、良かったわね『カナ』、メグミちゃん」


 『ママ』がにっこり微笑む。

 『カナ』の今着ている服は『ママ』お手製だ、メグミの希望を『ママ』縫って仕上げてくれた。因みに下着は真っ先に『ママ』がサイズを測って買ってきてくれた。当初簡単な手術着の様な服を着せて下着なしで居たが、そのままで良いんじゃないかと言うメグミに『ママ』が断固反対して買ってきたのだ。『カナ』はメグミの偏執的なこだわりの結果、疑似的な子宮や女性器まで備えた完璧な人造人間と化しており、その姿を見た『ママ』は激オコでその日のうちに下着を上下3セットも買ってきた。


《ありがとうございます、サブマスター『ママ』》


 『カナ』はお礼を言って頭を下げる。この家で誰が一番偉いか既に学習済みなようだ。


 その後地下に下りたメグミは、階段を降りきるとその脇にあるスイッチを操作して真っ暗な研究室に明かりを灯す。するとその研究室が明かりの中に浮かび上がる。その広い研究室の中心を埋め尽くす装置、魔法球が複数付いた制御装置や様々な薬液の入った複数のタンク、魔力供給用の小型魔結晶炉、それらから伸びるコードがのたうつ様に床を這いまわり、その中央に設置された金属性の棺と手術台の中間の様な装置に繋がる。その中央の装置の前に『カナ』を連れてくると、


「では『カナ』装置に寝てスリープモードで待機していなさい」


《イエス、マイマスター、スリープモードで待機します》


 答えてその装置に横たわると目を閉じて動かなくなる。装置が自動的に起動して『カナ』の状態をスキャンして3D映像装置に映し出す、メグミは異常がないことを確認して制御装置に向かい、装置を操作してそちらもスリープモードにする、そして徐におもむろに装置に横たわる『カナ』に近寄ると、その顔に自分の顔を近づける、今にもキスしそうな位近づくと『カナ』の瞼が開く、それを予感してたかのように平然と見つめるメグミはその距離を保ったまま、


「ねえ『カナ』? スリープモードよ」


《マイマスター、接近を感知しスリープモードが解除されました》


「ではもう一度命令よ、全機能を停止しなさい」


《マイマスター、一度起動した後は完全破壊されるまで全機能停止は不可能です》


「では外部センサーと触覚を機能停止してスリープモードで待機しなさい」


《マイマスター、キスをお望みでしたらどうぞこのまましてください》


「それはダメよ、今日はね、色々あって私も反省して少し落ち込んでいるのよ、だからねちょっと誰かに慰めて欲しいの」


《マイマスター?》


「だからね出来ればカナデとキスしている気分に浸って自分を慰めたいのよ」


《マイマスター、ではどうぞ》


「貴方は『カナ』よ? カナデじゃないわ、『カナ』にカナデを重ねてキスは出来ないのよ、それは貴方にとても酷いひどいことをする行為よ、けどカナデそっくりの人形にキスをするのは構わないでしょ? だから命令を実行しなさい」


《マイマスター、私はカナデ様の身代わりで構いません、私はマイマスターの為に存在します。マイマスターの望むようにしてください》


「ダメよ、貴方はカナデの代わりじゃないわ、カナデとの愛の結晶よ、だからダメ、貴方とキスをしたいなら起動している時に、今この時にでもキスします、けど今はカナデとキスした気分に浸りたいの、身勝手かもしれないけどお願い言うことを聞いて」


《マイマスター、聴覚を機能停止した場合スリープモードの解除命令が認識できません》


「強情ね、誰に似たのかしら? では足の裏の触覚だけ残しなさい、擽ったくすぐったらスリープモードを解除しなさい、それでどう?」


《イエス、マイマスター命令を実行します》


 『カナ』は再び目を閉じる、するとメグミは『カナ』の頬をぺろりと舐める。スリープモードが解除されないのを確認すると今度は『カナ』の胸に手を伸ばし、服の中に手を入れる。

ゴソゴソと手を動かすと袴と胴着の間付近からビー球の様な透明な玉を取り出す。それを見てニマァと笑うメグミはそのビー玉を自分の服のポケットに素早くしまうと、周囲の気配を探る。暫く探って満足したのかそのまま再び『カナ』の唇に自分の唇を近づけるとキスをした。暫く唇を合わせると、


「ねえ、『カナ』なんで解除されてるの?」


《マイマスター、口内は外部ではありません》


 そう『カナ』はメグミが偏執的に拘って造り上げた、食事の必要はないが経口摂取で素材を吸収できるようにもしているのだ。体分泌液を生成するためには多少の有機物も必要とする。将来料理をさせようと味覚すら備えているのだ、当然不要な物質の排出も人間のようにする。更に酸素は必要ないが呼吸もしている、これは空気中の魔力を効率よく吸収するために行っているだけで例え止まっても全く問題は無い。だが音声はこの呼吸を利用し、疑似声帯を使用して行っている。それらの機能から舌が器用に動き、且つ敏感で、口内には唾液すら生成されている。


「くうっ、なんて融通の利かない、まあ良いわ、ご馳走様、もういいわ普通にスリープモードで待機していなさい」


《イエス、マイマスターおやすみなさい》


 『カナ』は再び瞼を閉じる。メグミはそれを確認すると研究室の明かりを消して階段を上がっていく。



 階段を上がるとノリコが脱衣場の扉から出てきて、


「メグミちゃんお風呂が沸いたわよ、早く入りましょ」


 そう声を掛けてくる、


「ごめんノリネエ先に入ってて、ちょっと部屋に用事が有るの、直ぐに行くから」


「分かったわ、カグヤちゃんが2階の客間にいるから声を掛けてねくれる? 他の2人はリビングだと思うから私が呼ぶわ」


「分かった、上がるついでに声かけとく」


 そのまま2階への階段を上る。階段を上がると一番手前が客間でその隣がノリコの部屋で次がメグミの部屋、そしてその隣がサアヤの部屋だその奥に空き室が3部屋ある。廊下を挟んで客間の向かいにトイレと洗面所が有る。そのため階段に近い部屋の方が何かと便利なのだ、因みに物干しのあるベランダは階段を挟んで客間の隣にある、今日は既に取り込んだのか何も干されていない。

 客間の扉をノックして返事を待つと直ぐに、


「はーい、どうぞ」


と返事が有る、扉を開けるとカグヤがベットの上に服を色々広げていた。


「カグヤ、ノリネエがお風呂沸いたって、呼んでるから入っちゃいな、この後タツオも入るし後が支かえつかえててるよ」


「分かりました、ねえ、先輩ぃ、ところでこの家に引っ越した後の部屋なんですけど」


「何? もう決めたの?」


「いえ、希望がですね……この部屋はダメなんですか?」


「どうだろ? でもこの部屋収納が少ないよ? 他の部屋はロフトが有るし、一階の客間は収納も広いわよ? 元々屋根裏部屋に行く階段あった場所と物置だった部屋を階段取っ払って壁の仕切りを付け替えて客間にした部屋だから、寝るだけなら良いけど、生活の事とか考えられてないのよね、この部屋」


「でも窓が大きくて見晴らしは良いし天井高くて開放感あるし、階段に近くて、トイレや洗面所にも近いし便利じゃないですか、この家、壁がしっかりしてるのか防音も出来てるし、階段の上り下りの音も、廊下の足音も、洗面所やトイレの扉の開け閉めの音も気にならないし、収納は何かチェストかクローゼットを置けば何とかなりそうなんですよね、ベットも一つにすれば、そんなに狭くないし」


「まあカグヤが良いならそれでもいいけどね、まあお風呂にみんな居るから他の二人にも確認してみて、私はOKよ」


「分かりました、他の御二方にも聞いてみますわ」


「ん、私は自分の部屋に用が有るから一度よってから降りるわね、じゃあ」


 メグミは扉を閉めて、自分の部屋に急ぐ、扉を開けて部屋に入るとそのまま扉の鍵をロックする。そして演算通信魔法球、日本でのパソコンに近い装置の乗った机に近寄ると、その机の引き出しを引き出す、そこには先ほど『カナ』の服の中から取り出したビー玉の様な物が20個ほど入っている。その中にポケットから取り出したビー玉を入れるとメグミは、ニタニタと笑いながら、


「木を隠すなら森の中、記録魔法球を隠すなら記録魔法球の中よね、念には念を入れないとね」


と呟く、そして再び気配を探り、問題がないことを確認すると、引き出しを締めるとそこに仕込まれた魔法球で『施錠』を発動し、引き出しをロックすると、部屋の扉のロックを解除して部屋を出ていく。

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