第14話『はい、あーーん』

 シャワーから出てきたメグミ達はお昼ご飯を食べた岩の上に3人で座っていた。火照った体に草原を吹く風が気持ち良い。

 まあ三人とも、シャワーのお湯で火照ったと言うより、メグミは散々セクハラを堪能して、その手の感触に興奮して火照っていたし、ノリコとサアヤは、メグミに散々セクハラをされてその手の生み出す快感に興奮して火照っていた。


 メグミ達は午前の採掘を早めに切り上げていた為、今は丁度昼過ぎ。

 他の冒険者の昼食や昼休みが終わった時間だったのが、メグミには幸いし、ノリコとサアヤには不幸だった。

 シャワールームに他に客が誰も居なかったのだ、メグミ達の貸し切り状態……そうメグミは誰に遠慮することなく好き放題に出来たのだ。


 メグミはセクハラに満足したのか艶々とした顔で笑顔、ノリコとサアヤは相当際どかったのか若干モジモジとしながら頬を染めている。それでも三人は岩の上に仲良くノリコを真ん中にして座っていた。


 座っているノリコとサアヤの髪の毛は綺麗に編み上げられ、結い上げられていた、流石にやり過ぎてご機嫌斜めの二人に、メグミがせめてものお詫びにと腕を振るった結果だ。

 午前中は編んだ髪の毛を前に垂らしていたノリコも、今は綺麗に編み込まれた髪の毛を頭にティアラのように巻いている、この髪型だとその美貌と相まって、本当にお姫様のように見える。


 サアヤの方も、髪を編み込んで結いあげている事には変わりがないが、さらに細かく編まれた髪の毛を、今度は左右にお団子のように巻いている、飾りと髪留めの為に巻いたリボンが風に揺れて大変愛らしい、メグミの大好きな耳も良く見える。今は若干赤みが刺しているがピクピクと動いて見ていて飽きない。


 メグミの髪型も変わっていた、単にヘアピンで前髪を無造作に止めていただけの髪型から、左右の前髪から側頭部に編み込まれた髪の毛を後頭部で一つに纏めた髪型になっていた。サアヤとノリコの力作だ。


 そんな三人は今、岩の上でアイスクリームを食べていた。右側に座ったメグミが手に持ったガラスの容器からアイスクリームを金属の匙ですくって、


「はい、あーーん」


そう言ってノリコの口元に持っていく。


「……あーーん」


 ノリコは躊躇いがちに、口を開いてそのアイスクリームをパクっと食べる。

 するとすかさず反対側から今度はサアヤが、


「はい、お姉さま、あーーん」


そう言ってメグミと同じく、アイスクリームを匙ですくってノリコの口元に持っていくのだ。


「……あーーん」


 ノリコはやはり躊躇いながらもパクっと口を開いてそれを食べる。

 それを横目にメグミは一匙すくって自分で食べ、そしてもう一匙すくって、


「はい、あーーん」


ノリコの口元に持っていく。


「…………」


 ノリコが口を開けない、だがメグミはもう一度、


「はい、あーーん」


少し語気を強めて繰り返す。


「あーーん」


パクッ


(今一瞬抵抗しようとしたな、まだ諦めてないのか往生際の悪い)


 メグミとサアヤはアイスクリームを延々一口、自分で食べては、一口、ノリコに『あーん』する作業を続けていた。



 シャワーの後、ノリコは購買にてスポーツ飲料を3本と、アイスクリームを2個を買ってくれた。

 そしてメグミとサアヤに、スポーツ飲料の瓶とアイスクリームのガラスの器を渡し、自分はスポーツ飲料の瓶を右手に持ち、左手を腰に当て、それを一気に煽る。


ゴクゴクッ………クッ


ゴクゴク


一気飲みは無理だったようだ……


「フゥーー、お風呂上りの体に水分が染みる渡るわね♪」


 少し爺むさい行動をするノリコに、横で同じようにスポーツ飲料を煽っていたサアヤが、


「ノリコお姉さま、アイスクリームは食べないんですか?」


そう尋ねる。


(確かにそうね、なんで一緒に食べないのかしら?)


 サアヤと同じ疑問を抱きつつ、メグミは湯上りの2人のうなじを、


(うーーん、湯上り美少女も良いわね! こう若干上気している頬に、水分を含んだ艶やかな髪の毛、そして服とその髪に挟まれたうなじが色っぽいわ!)


そんな事を考えながら眺めていた、メグミは既に本当に一気にスポーツ飲料を飲み干していた。メグミは普段は湯上りは牛乳派なのだが、今日は流石に水分とミネラルが足らない。コーヒー牛乳に心惹かれつつも皆と同じスポーツ飲料にしておいた。


「んーー、私は二人見たいに汗かいてないから、あんまりカロリー取ると太るかなって思うのよ。二人は遠慮せずに食べてね」


 ノリコはそう言って微笑む、そのノリコを見てメグミとサアヤは顔を見合わせ、


(はあ? 太る? 何処が? 胸か! 胸が更に大きく成るのかっ! ノリネエ太って無いじゃん! 胸以外に肉着いてないじゃん! ダイエット? 必要ないでしょ!)


抜群のプロポーションを誇る、目の前のノリコを見ながら、二人同士に、全く同じ思いで心の中で突っ込みを入れる。

 だが、それは表には出さず、白々しく二人は、


「「はーい、ゴチになりまーす」」


そう答えるのだ、密かな決意を胸に秘めながら……



 今日は本当に天気がいい、春の麗らかな日差しが昼下がりの草原に降り注いでいる。オープンテラスではないが、折角なら外に座って食べよう昼食を食べたベンチ代わりの岩までメグミ達はアイスクリームをを持って歩いてきていた。

 

 ふと視界に入ったゴロウ達は随分前にシャワーから上っていたのか、装備を整えて、岩の手前の草原でメグミ達が渡した新しい武器を振って、調子を確かめながら待っていたようだ。

 一言でシャワーと言っても、まあ、女の子のほうが何かと時間が掛かるのだ。髪の毛を乾かしたり、お肌のお手入れしたり、そう色々と時間が掛るものなのだ。三人とも殆どお化粧をしないだけ、他の女子よりは遥かに時間は掛かってない!

 

 そう、男は黙って女の子の準備が終わるのを待っていればいいのだ、多分……きっと! うん、間違いない筈!


 そんな男共を横目に、岩の上にノリコを中心に座ったメグミは、なにやらゴロウ達三人の視線が、何故か自分にだけ集中してるのを不思議に思う、


(湯上り美少女よりなんで私に視線が来てるの? あれ? 私何か変? いやもし何か変なら二人が教えてくれるはず……何? ああっ、アイスクリームが欲しいの? 自分で買いなさい! 野郎におごってやる趣味は無いわ!)


 サアヤも同じくアイスクリームを持っている事をすっかり忘れて、メグミは心の中で男子三人に理不尽な罵声を浴びせる。まあ例えメグミの勘違いでも問題はない、心の声だ、三人には聞こえない。


 そんな事を思いながらメグミは先ほど考えた作戦を実行に移した。一口、アイスクリームを匙ですくって自分で食べる、


「んーーんぅ! おいしーい」


思わず感嘆の声が漏れる。


 この世界の食べ物は美味しい、不要な添加剤が無い為か、素材そのものが良いのか、作っている人の腕が良いのか……あるいはその全部か分からないが、本当に美味しい。

 このアイスクリームも本当に美味しい。乳脂肪分が高いのだろう、ラクトアイスの様な水っぽさが無く、アイスミルクの様な雑味も無く、本物のアイスクリームの味がする。


(甘さがしつこくなくて上品なのよね、それに口に入れるとフワっと溶けて消えていく……これ幾らでも食べられそう、ヤバい奴だわ、御代わりだけは絶対NGな奴だ、エンドレスで食べ続けちゃう)


 そうこのアイスクリームは柔らかい、しかし薄いとか溶けているのではない、先も述べたが乳脂肪分は高い、乳の味は濃いのだ。

 それにしっかりとガラス容器も冷やされている、容器自体に魔法で保冷効果が付与されているのか持ち手は冷たくないのに容器の中はキンキンに冷えている、その為アイスクリームはこの陽気でも全く溶けることが無い。

 にも拘らず柔らかい、クリームの様な柔らかさだ、ここまで空気を含ませるその製法、見事の一言に尽きる。そしてそれはフワっと口の中で消える食感を生む……もしかすると日本で売っている某高級アイスクリームより美味しいかもしれない。


 しかもこの異世界、ケチ臭くない。ゴロウ達が食べていた昼食のおにぎりやパンなどもそうだが、この購買で売られている食品は分量が多い、元の世界の運動部の少年でも一つで満足するだろう……ノリコが太るのを気にして遠慮するのも分からないではない。

 そんな結構な量がガラスの器に盛られているのに値段は100円……本当に儲けが出ているのか心配になる。


(冒険者を豚にでもする心算なのかしら? まあ運動してるから普通の人よりカロリー多くとっても構わないんだけど……そう言えば『力』、三つの力の消費でもカロリーを消費するんだったわね、ならこの量はそれを補うことも考えられた分量なのかしらね?)


 容器や匙は返却するようになっているから赤字では無い筈だが……まあ、冒険者組合が管理する鉱山事務所で売られているのだ、儲けとか余り考えていないのかもしれない。

 少し位の赤字は、見習いや初級冒険者が魔物の前で『ハンガーノック』になって動けなくなり、怪我をされるよりは大分ましと考えているのかもしれない。


「そう、良かったわ」


 嬉しそうに、美味しそうにアイスクリームを食べるメグミの姿を見ているノリコも笑顔だ、メグミが喜んでいることが自分の事のように嬉しいのだろう。


「ノリコお姉さまおいしいです」


 サアヤもニコニコとして口に運んでいる、そちらにもノリコが笑顔を向ける。ノリコの視線がメグミから外れたこの瞬間、メグミはアイスクリームを一口分、匙ですくって、


(よし!! 今だ!! このタイミング)


温めていた作戦を決行する。


「はい、ノリネエ、あーーん」


そう言ってアイスクリームの載った匙をノリコの口元に差し出すのだ、ノリコは戸惑って、


「え!? あ、いや、私は良いから、メグミちゃん食べて」


そう言って遠慮するのだが、ここで引くメグミではない、


(美味しいからノリネエも一口どうぞ作戦、ふふふっ、人の善意の行為、無碍には出来まい、ノリネエ!!)


「いいから、はい、あーーん」


メグミは重ねて『あーん』をしてノリコに口を開くように要求する。


「う……」


 決心がつかないのかメグミの顔を見つめるノリコ。だがそこには内心をおくびにも出さない、善意に溢れた笑顔のメグミが居る。


「はい、あーーん」


 更に、今度は少し悲し気に、


(え? 何? 私の善意を無碍にするの、ノリネエったら酷い!)


そんな表情を浮かべながらメグミが迫る。無論演技だが、そんな事はお人好しのノリコに分かろう筈もなく。


「……あーーん」


ノリコは諦めたのか戸惑いながらも若干嬉しそうにその口を開く、


(掛かった!!)


メグミは心の中でガッツポーズをする、そう、獲物がエサに食いついたのだ。スッとアイスクリームの載った匙を、ノリコの口の中に入れると、


パクッ


ノリコが可愛らしい口を閉じる、それを見てメグミは匙を引き戻す、匙の上のアイスクリームはツルリとノリコの口の中に残る。

 暫しその味を確かめ、嬉しそうにその美貌を綻ばせると、


「ん、おいしいわね、有難う♪」


メグミにお礼を言う、自分が罠に掛ったとも知らずに……

 その時、ノリコを挟んでメグミの反対側に座るサアヤの目が光った気がメグミにはした。


(メグミちゃんだけズルい!! 私も『あーん』する!!)


口には出さなくてもサアヤのその目がそう物語っている。

 メグミはこちらも自分の作戦通り、計画通りに行った事を確信する。そうサアヤがこの状況でどう動くか、そんな事はメグミには手に取るように分かるのだ。


「はい、ノリコお姉さま、あーーん」


サアヤは鼻息も荒く、ノリコに『あーん』をして口を開けるように要求する。


「えっ?? ええぇっ? あ、あのサアヤちゃん?」


「私はダメですか? 姉さま……」


ウルウルとした目でノリコを見つめるサアヤ。


「えぇ……」


ノリコは戸惑ってはいるが嫌では無さそうだ、サアヤはニパッっと微笑んで。


「お姉さま、はい、あーーん」


無邪気にアイスクリームの載った匙をノリコの口元に差し出す。


「……あーーん」


サアヤのウルウル攻撃に負けたノリコは素直にその口を開ける、


パクッ


 メグミはそんなサアヤとノリコのやり取りを眺めながら、アイスクリームを一匙すくって自分で食べる。


(んふぅ、美少女と間接キスゲットォー!! サアヤもやるわね、これはエンドレス確定でしょ!)


 目的を果たし、至福に浸るメグミ、だがメグミの作戦は未だ計画半ば、素早く、もう一匙、アイスクリームを掬うと、


「はい、あーーん」


そう言ってサアヤのアイスクリームを一匙食べたばかりのノリコの口元に持っていくのだ。


「えぇ!? 一口食べたよ……メグミちゃん?」


そう訴えるノリコに対してメグミは、


「いいから、はい、あーーん」


有無を言わせぬように、語気を強めながら『あーん』を強要する。


「うぅ……あーーん」


パクッ


反対側で、自分でも一匙アイスクリームを食べていたサアヤは、当然のように次の一匙を、


「はい、お姉さま、あーーん」


そう言ってノリコの口元に持ってくるのだ。

 こんな感じで冒頭に戻る、これだとメグミとサアヤアイスクリームを半個、ノリコは一個食べたことになる。


(一人だけダイエットとか無駄な小細工を考えるからだ、胸が萎んだらどうする、ノリネエは胸以外は細いんだからダイエットとか必要ないわっ!)


 そんなことを思っているメグミだが、別にノリコのダイエットを阻止するのが目的ではない、今作戦の主目的は『美少女』との『間接キス』、まあ少し、ほんの少し、倒れるまで『精神力』と『魔力』を使ったノリコのカロリー補充の意味もある。マジックポーションで力は戻っても、消費されたカロリーまでは補充されないのだ。


 それに先ほどの心の声も真実だ、ノリコの体が失ったカロリーを何処から補充するのか、ノリコの無駄な脂肪の無い細い体、そこには唯一、脂肪の塊が二つ、その存在を誇っている。


胸だ!!


 そうその巨乳から失ったカロリーを補充するしかないではないか、ならばこれは仕方がない、メグミがその巨乳をその口で味わう前に、それが、巨乳が萎むことなどあってはならない!


(アレだけ美乳で垂れてないのにめっちゃ柔らかいわ、信じられない柔らかさよ、そうよ手では散々洗う振りして揉みまくった巨乳、滅茶苦茶柔らかいわ!

 それに肌が綺麗だから手に吸い付くような感触が有るのよ、しかもあの手から零れる様なボリューム!

 絶対何時か味わって見せるわこの口で! この舌で嘗めまわす! きっと今日のアイスクリームより柔らかくて美味しいに決まっているわ!)


 そんなメグミの下卑た決意を他所に、三人の少女は表面上は仲睦まじくアイスクリームを食べさせ合う。まあ実際に中は良いのだ、一人不埒な考えに支配されている獣が紛れているだけで……



 アイスクリームを食べ終わった三人は、その容器を購買に返しに行こうと岩の上から腰を上げる。

 するとゴロウ達三人がメグミ達の所に来て、何故かメグミに話しかけてきた。ノリコではなくメグミに……


「あのメグミちゃん、ちょっといいかな?」


「えっ?? あたし?」


(なんでノリネエじゃなくで私なんだろ? え? そんなにアイスクリームを分けてあげなかった事が不満なの? 野郎と間接キスなんてお断りよ! 自分で買いなさいよ!)


 そんな疑問を心の中に抱えていると、


「うん、メグミちゃん、メグミちゃんに相談があるんだ。いきなり下世話な話になって悪いんだけど」


(下ネタは大歓迎だけど? けどノリネエ達には聞かせたくないわね、特にサアヤはダメよ、私がティタおばあさまに怒られるでしょ! サアヤ直ぐ喋っちゃうんだから!)


「この武器の代金なんだが、何とか50万位に負けて貰えないだろうか? 流石に3人で280万とかキツイんだ」


(何? 武器の代金? 下ネタじゃないの? 下世話な話ってお金の事ね、クソっ期待しちゃったじゃない! 思春期男子の下ネタ話、どれだけ欲望にまみれているのか興味があるのに!)


惚けたメグミの心中など関係なしにゴロウの話は続く。


「何とか頑張って150万、6か月で用意するから……利子を含めて払うと言って置きながら情けないんだが、どうか、それでお願いします」

「「お願いします」」


 三人が同時にメグミに頭を下げてくる、下手したら土下座する勢いだ。

 その勢いにメグミは慌てて、


「ちょっと何言ってるのかわからないんですけど?? 3本で50万でラッキーじゃなくて? 280万?? どこから出たのよ、その数字、私は1本15万くらいに吹っ掛けて13万位で売れたらラッキーだと思ってたんだけど?」


ゴロウに話の内容を確かめる。

 そのメグミの言葉に、顔を見合わせるゴロウ達は、戸惑いながら、


「いや、メグミちゃん達がシャワーを終えてここに来る前に、中級冒険者の人たちがここを通ってね。その時、俺達は早めにシャワーが終わったからね、スポーツ飲料を飲みながら、そこで新しく造って貰ったこの武器の試し振りをしてたんだ。

 そしたらその人達がこの武器を見て、『ちょっとっ見せてくれないかって』て声を掛けてきたんだ。先輩言われたら見せない訳に行かないだろ? 

 で見せたら、『是非この武器を譲ってほしい、1本60万……いや70万出すから、是非!!』って武器の売却を迫られたんだよ」


「俺達もさ、まだお金も払ってない武器だからって無理だっていったんだぜ」


「そうなんだ、借金してるからって、ツケで特別に造って貰ったからって、ちゃんと断ったんだ、ノリコ様に下賜頂いた武器を売るわけないだろ、先輩だからって強引なんだよ!」


「そう、俺達は断った、先輩相手だけど断固として断った……けど……しつこくって、売るときには是非って名刺まで貰っちゃってね」


「そうなの、大変だったわね、ゴロウ君達、先輩に絡まれて」


ノリコは眉を顰める。


(ゴロウ!! 絶対にノリネエにその先輩たちの素性を教えないでよね! 絶対にノリネエその人達に抗議に行くわ! こんな可愛いノリネエが抗議に行ったらカモネギも良いところよ、良い、こっそり後で私にだけ教えなさい。ぶちのめしてあげるわそいつ等!)


 ノリコのその様子に危機感を覚えながらもメグミはそんなことを思っていた。

 後輩相手は確かに不味いが、ただ武器の売却をお願いしただけで、ぶちのめされたらその先輩たちもいい迷惑であろう。そして相手が中級冒険者と知っても、自分が負けるとは全く思ってないメグミだ。

 そんなメグミが、


「いやーー? この武器、素材は大した物使ってないわよ? メインはそこの鉱山で採れる魔鉄だし、その他の素材もまあ初級の武器としては悪くはないけど、安いものよ?

  そりゃ造るのに手は抜いてないし、我ながら良い仕上がりだとは思うけど、1本70万って相場知らないのかしらその人たち。師匠の造った物なら安い材料でも、もっと高い値段だけど、初級鍛冶師の武器に70万は無いわ」


 メグミは珍しく鍛冶に嵌った見習い冒険者で、師匠達に大変目を掛けて可愛がってもらっている。

 この見習い期間中に、『見習い鍛冶師』を卒業したのはメグミが史上初だ、だがその事をメグミは知らない。師匠達がメグミにワザと知らせなかったのだ。


 メグミは『見習い鍛冶師』を卒業したら、冒険者と同じ『初級鍛冶師』になると思い込んでいるが、実際は鍛冶師の世界では見習いを卒業したら一人前の『鍛冶師』であってそこに初級などと言う階級は無い、一流か二流、三流等と他者から評価はされるが、そこは同じ土俵で戦う一人前の『鍛冶師』なのだ。

 

 そしてメグミは、その中級冒険者の相場感を疑っているが、実際に間違っているのはメグミの相場感だ、確かにメグミが『見習い』の頃の武器は先にメグミが言ったような値段でしか売れなかった、いや、師匠達が売らなかった。『見習い』の『習作』の武器なのだ、それでもその値段で売れるのが異常なのだが、メグミのはそのことを知らない。



 バタンッ!!


 勢いよく扉が開くと、その扉から弟子が師匠の作業場に無遠慮に入ってくる。


「師匠! 次が出来たわ! 試し切りしてきたけどまあまあね、最初よりは大分良く成ってるわ、けど少し軽すぎかしら? どう?」


 そしてその手の刀を、師匠の胸に押し付けて来る。

 師匠はその勢いに少々戸惑う、弟子のその態度や礼儀は何度も注意したが、もうすっかりおなじみとなっていて、注意しても弟子は一切改まることが無い。

 半ばあきらめ顔で、その胸に押し付けられた刀を手に取り鞘から抜き放つ、


「ふむ、ほうぅ、頑張っておるな、うむ、確かに少し軽いか? だが腕力の低い者にはちょうど良いかもしれんぞ?」


 手にする刀は既にそこいらの二流鍛冶師の打つ刀よりも余程出来が良い。すでに何時でも一流鍛冶師になれる。『名工』と呼ばれても良い出来である。

 そうこの目の前の無遠慮な、そして可愛い弟子は鍛冶師として天才、天賦の才を持って生まれていた。


「私の為の武器を造っているのよ、それじゃあダメよ、まあ良いわ、次よ次! 次こそは満足の行く剣を打って見せるわ!」


 僅か数か月、見習い冒険者となり、始めて鍛冶を習ったこの娘は、たったそれだけの期間で多くの鍛冶師を技量で抜き去りながらも、その剣の出来に不満なようだった。


「そうじゃのう、次は付与魔法で『重量軽減』を使用しつつ、少し肉厚にしてみるんじゃな、満足する出来になろうよ」


 基本的な技巧で既にこの弟子に教えることは何もない、砂が水を吸うかの如く、教えたことを全て吸収していくのだ。

 後はセンス、持って生まれた才能と、それを花開かせるための努力次第だ。そしてこの自慢の弟子は、その両方を持っている。


「なるほど、その手が有ったわね、重くすると切れ味が鈍るし、軽くすると脆いし、バランスが難しいわね! 師匠ありがとう、もうちょっと頑張ってみるわ」


 何か思いついたのか、その弟子は来た時と同じ勢いでそのまま扉を開けて出て行こうとする。その様子に師匠は己の弟子の後姿を満足そうに眺めていたが、ふとその手の刀に思いいたる。


「無理は余りするでないぞ、ってこの剣どうするんじゃ! 置いていくな!」


 師匠が呼び止めるが、その弟子はそのまま扉から出て行きながら、


「それはもういいわ、材料費の足しにするから売れるなら売っておいてね、頼んだわよ! さあ次よ!!」


 声だけを置いていく。


「全く、人の話を聞かん娘じゃ、嵐の様じゃのう、ふむ、まあ良いかアレは言っても聞かん」


 師匠は大切に丁寧にその手の刀を鞘にしまうと、鍛冶場の表にある、武器屋の店主を呼び付ける。


「巨匠、何か御用ですか?」


「むう、巨匠は好かん、師匠でよいと何時も言っておるだろう!」


「『神匠』持ちのお人を、師匠と呼ぶのは憚られるんですけどね、で何用でしょうか?」


「ふむ、弟子がの又剣を造って置いてい行ったのでな、これを店に置いてくれ」


「もうっ? 凄いペースですね……これはまた、良い出来ですね、ふむ、もう十分うちの店で一般の武器……いや、一流の武器として売れますぜ? 値段どうしますか?」


「『習作』じゃ、弟子がそう言っておる、材料費が出ればよいとな、まあ少し材料の値段で色を付けてやればよい」


「最近店に出した瞬間に売れるんですけどね、転売目的の客は断ってるんですが、口コミで噂が広がってます。信じられない安値で一流の武器が買えると……もう少し値段を上げた方がいいと思いますがね」


「『習作』が一般の武器より値段が高いなどあってはならなん、ふむ、良い具合の値段にしておいてくれ、買い手選びは任せたぞ」


「相手を見て武器を売ってます、その辺はお任せを……しかし、お弟子さん、もう直ぐ見習い卒業ですかね」


「自分で納得したらそれで卒業じゃな、それまではワシの可愛い弟子じゃ」


「卒業したって師匠と弟子、変わらんと思いますが?」


「卒業したら、そうしたらこうも頻繁にここに来んじゃろう?」


 少し寂しそうに言う師匠に、


「そうですね、お弟子さん、素材は良いですものね、あの雰囲気と、あの格好さえ何とかすればねえ」


店主はそう言って弟子の容姿を思浮かべる。


(黙っていれば美少女、そう黙ってさえいれば……あの口の悪さはな……巨匠相手にあの調子、あれで弟子? 時代の変化なのだろうか?

 『近頃の若い奴は』か、年は取りたく無いものだな。

 後はあの格好だろうか? 幾ら何でもあの格好は年頃の娘としてどうなのだろな?

 ウチの娘達は自分が土下座して頼んでもあの服は絶対に着てくれないだろうな……)


「ワシの可愛い弟子に手を出す奴は、ワシの槌の錆にしてくれる! アレはあのままで良いんじゃ!! その方が変な虫がつかん」


「はいはい、分かりました、余計な事は言いません、では店に戻りますね」


「のう店主、弟子は鍛冶以外で遊びに来たりせんかのう?」


「巨匠、ご自分から遊びに行けばいいのではないですか? 家のリフォームを手伝ったんでしょう?」


「ウザがられんかのう、いやあの時は少し飲み過ぎての……弟子のベットで寝てしまってな、大分怒られたんじゃ。

 それにな、弟子は、あの子は、ヤキンの事も師匠と呼ぶ、それどころかあの時手伝いで連れて行った弟子のエルネスト、顔を合わせるのも初めてじゃろうに、アヤツまで師匠とっ!」


 この巨匠を怒る? だれが? 弟子が? 店主には信じられないが、しかし弟子の少女を思い浮かべる……あり得る、あの弟子ならば容易に想像がついてしまう。

 そしてあの弟子ならば……


「もしかしてドワーフの見分けがついていない?」


その疑いが否定できない店主であった。



 ヤキン、そうヤキン・ドゥーエ(272歳)は見習い冒険者に鍛冶を教えているドワーフの鍛冶師だ。

 それが初体験となる鍛冶を教えて、そこで試しに一本剣を造らせる、自分で武器を造れば、武器の構造、メンテナンス等も同時に学べる、そんな体験学習の師匠だ。

 また巨匠アルバート・エクドル(512歳)の数多くいる弟子の一人でもある。

 ある日、巨匠アルバートの元にそのヤキンが、


「巨匠! ワシの手には負えん、とんでも無い新人が居るんじゃ、お願いじゃ面倒を見てやってくれんか!」


そう言って一本の剣を持って訪れたのだ、


「巨匠と呼ぶな、師匠と呼べバカ弟子が!!」


そう言って弟子のヤキンが持ってきたその剣を鞘から抜く、


「ふむ、中々良い出来じゃな、何じゃヤキン、弟子でも育てとったのか? これならばもう一人前じゃのう、うむ良い筋をしとる。

 しかし、この程度ならば、まだまだお主の足元にも及ぶまい、ワシに頼まんでもお主で面倒が見れるじゃろう?」


 ヤキンは既に『大名工』伝説の鍛冶師と呼ばれる鍛冶師だ、教え方も上手いし、教えるのも好きな筈だ、そうでなければ見習いの面倒など見たりはしない。


(そのヤキンが『神匠』である、ワシの所に弟子を預ける? フム、確かに素質は有る、ワシの弟子にしても良いだけの技量じゃ、じゃがまだまだヤキンの手に余るとは思えんがのう?)


「巨……いや師匠、それは体験学習で造った素人の人生初の一本目の剣じゃぞ! 弟子どころか基本を教えただけの本当のど素人の造った剣じゃ」


ヤキンの言葉に巨匠アルバートは暫し言葉を忘れ、そして、


「はぁ? 何を言っとるんじゃヤキン、お主騙されておるんじゃろう、この剣を見れば分かろう? 素人? あり得んわ、これで素人ならこの街の鍛冶師の大半は素人じゃ」


(素人が初めて剣を打って、その出来がワシの弟子になれる最低ライン、一流鍛冶師と呼ばれる者達と同レベル、あり得んな、そんな事はあり得えんわ)


 この街の鍛冶師のレベルは高い、世界一と言って誰憚ることなく高い。

 日本人のもたらす技法、そして『大魔王迷宮』から産出する希少鉱物、それらに引き寄せられたドワーフ達やその他の種族の『名工』、『大名工』が凌ぎを削る為、この街で『名工』になれなくても、『一流鍛冶師』と呼ばれるだけで、他の国ではその国お抱えの『宮廷鍛冶師』になれる、そう言われるほどのレベルの高さだ。


「だが師匠、その剣を造ったのは本当に召喚されたての少女、子供じゃ、手だって綺麗な物で、とても鍛冶の経験がある様な娘じゃあないわい、一度連れて来るからの! 会ってやってくれんか!」


 ヤキンは重ねて言う、ヤキンとてこの街の『大名工』、嘘偽りなどを言う男ではない、そうでなければ自分の弟子などと名乗らせはしない。


(嘘ではない、ヤキンの勘違いでもないという事か、少女じゃと? 子供じゃと? ヤキンとて嘘ならもっとましな嘘をつくじゃろう)


手にした剣をもう一度見る、


(『神匠』の職能を得て『巨匠』そう呼ばれて久しいが、さて、ワシがこの剣と同じレベルの剣を打てるようになったのは何時だったかのう?)


 時が流れ過ぎていて確かな事は思い出せない、しかし、少年、そう呼ばれる年で打てていた記憶はない。

 そしてその後ヤキンが連れてきたのが今話題の巨匠の愛弟子、自分の後を継ぐであろう未来の巨匠。



「のう店主、ワシはハイ・ドワーフ、そこらのドワーフとは違うと思うんじゃがの? どうじゃろう? 人族の娘っ子には同じに見えるのかのう?」


 ドワーフとは思えない大きな体、それに負けない位太い腕、赤銅色の焼けた肌に、銀髪、銀色の立派な髭は細かく編みこまれ、樽の様な腹まで垂れている。意志の強い、怒ると非常に怖いギョロっとした目が店主を見つめる。

 流石にこれで他のドワーフと一緒には見えないと、店主も信じたいが、あの弟子、あの弟子の少女は細かい事には全く頓着しない、特に男には……


「微妙……としか言えませんな、以前、娘にドワーフは同じ髭ダルマに見えると聞いたことが有ります。あの弟子ならば或いはその体格の違いすら無視する可能性が無いとは言い切れませんな」


「むうぅ! やはりそうか! あの弟子、もしかしたらワシ個人でなく、この作業場とセットでワシを認識しとる可能性があるんじゃ、全く困ったものじゃ……」


寂しそうにその大きな肩を落とす。

 その姿に店主は思い出す、この巨匠、以前あの弟子に、


「師匠、ちょっと臭いわよ、匂うわ」


そう言わて、それから巨匠は毎日朝晩お風呂に入っている。


 あの巨匠が、その弟子に好かれようと、そんなことまでしているのだ。別に恋をしているわけではない、孫どころか自分の1/20も生きていない小娘だ、恋愛の対象などには成りはしない。

 しかし可愛いのだ、あの弟子が可愛くて仕方がない。それが見ていてわかる。


「目に入れても痛くないと孫の自慢をしていた者が居ったんじゃが、その時はな、何を馬鹿なと笑っておったがの、その気持ちが今は良く分かるんじゃ」


 そんな事をこの頑固で気難しい老ドワーフに言わせるほどに、あの弟子は巨匠に可愛がられている。そうまるで孫のように……


 この年まで独身の巨匠には孫どころか子すらいない、しかしそれは、別段独身は女性の数が極端に少ないドワーフ族には珍しくはない。

 まあその所為で、又そのドワーフ族の女性の見た目から、度々、ドワーフは他種族から『ロリコン』疑惑を掛けられるが、そうではない。


 性欲よりも創造意欲が勝っている!

 

 それだけなのだドワーフは! 第一その体格に見合わぬ巨大なソレは大人であっても他種族には受け入れがたい。子供になど入れようものなら死んでしまうだろう。

 それに巨匠はロリコンではない、ちゃんと定期的に娼館で処理している。この年でも結構お盛んなのだ。


「フランちゃんも良いが、エミリアちゃんもええのう!」


 そんな事を店主相手に猥談する位に大人の女性が好きでお盛んなのに、にも拘らず、あの弟子に対しては性的な気持ちは微塵もない様だ、ただ出来の良い、無茶ばかりする元気な弟子を、才能に溢れる愛弟子を、そこら辺の只の祖父のように慈しむのだ、あの巨匠が……


 いや違う話が逸れた、そう弟子だ、あの弟子! あの弟子にその作業場以外でちゃんと巨匠として認識してもらうにはどうしたら……それにあの家に遊びに行く理由、


「うむ、難問だのう……」 


そんなくだらない問題であの巨匠が真剣に悩んでいる。



 そんな巨匠の姿に肩をすくめて店主ザッツバーク・スエィン(45歳)はその巨匠の愛弟子の剣を手に店に戻る。

 店主も元々は鍛冶師だ、昔から武器が好きだった。子供のころから自分は鍛冶師になるのだと決めて、そして努力した。努力に努力を重ねて、巨匠アルバートの弟子にまで成った、だが、そこで店主は自分の限界を知った。


(自分はこれからどんなに努力しても巨匠の足元にも及ばない、自分にはそこまでの才能がない)


 店主には才能がなかった、鍛冶師としての才能がない、これはずいぶん前から気が付いていた、だが努力で一流鍛冶師、そう呼ばれるまでにはなっていた。

 

 だが店主は巨匠の打った剣を見て思い知る。


 店主には鍛冶師としての才能はなかった、しかし、武器の鑑定眼、その才能は飛び抜けていた。それ故に分かってしまった。


(自分の打つ剣は決してこれ以上良くはならない、巨匠の打つ剣の様にはならない)


 その確かな鑑定眼が冷酷に自分に自分自身の限界を告げる。


(もしもドワーフであったなら、その長い寿命で努力すれば巨匠の足元に位はたどり着けたかもしれない)


 そう思はなくはない店主だったが、しかし、店主は人族、その寿命はドワーフと比べはるかに短い。


 しかし、自分の才能を思い知っても店主は武器が好きだった。諦めきれなかった。そんな時、巨匠が店主に言った、


「のう弟子よ、お主、わしらの武器を売る店の店主にならんか? 何、鍛冶の合間でいい、わしらドワーフはな商売が下手じゃ、物を売るより物を作りたいんじゃ。

 じゃがお主は金勘定もできるし、何よりもその目じゃ、その鑑定眼はワシ並じゃろう。お主なら安心して任せられる、わしらの武器を任せられる、どうじゃやってみんか?」


その時、煮詰まっていた店主にはそれが天啓に思えた。


(鑑定眼だけなら巨匠と並べる、そう武器鑑定と人物鑑定、その鑑定眼だけなら巨匠と並びたてる!

 武器商人、大好きな武器に囲まれ、更に売るのは史上最高の巨匠の武器! これこそ我の生きる道!)


 以来店主はすっぱり鍛冶の道を諦め、武器商人として、その任された店の商売に邁進した。鑑定眼をそれから更に磨きに磨き、鉱物鑑定も魔道具鑑定も出来るようになった。

 何時しか店主の任された店は、五街地域一の高級武器店となり、店主は五街地域一の武器商人、そう呼ばれるようになっていた。

 五街地域一、それはこの世界では世界一と同義だ。そう店主は世界一の武器商人になったのだ。

 綺麗な嫁を貰い、可愛い娘も三人生まれ、息子も一人順調に育っている。

 そんな時だ、その巨匠の弟子が現れたのは、すっかり壮年となり、腹も少し出っ張り、娘に、


「お父さん少し臭いわよ、しっかりお風呂で洗ってよね! あと洗濯物はお父さんの靴下だけは別にして、匂いが移るのよ!」


そういわれ落ち込んでいる、そんな時だった。

 上の娘とそう年も変わらない、そんな人族の娘が突然、巨匠の弟子になったのだ。


(あり得ないっ! あり得ないだろ!! 俺が巨匠の弟子になるために、どれだけ努力したと思っている! 30歳だ、30歳になるまで寝食を忘れて努力した! それをあんな小娘が巨匠の弟子だと!)


 だがその娘の打った剣を見たとき、店主は自分の考えが間違っていたと思い知る。その優れた鑑定眼がザッツバーグに冷酷に告げるのだ。


(間違いない、この娘は、この自分の娘とそう年の変わらない子は、間違いなく巨匠になる、その才能がある。

 今まで生きてきて巨匠以外で初めて見る……迸るほどの才能、その才能に満ち溢れている。

 この娘ならドワーフを超える!! 人族で有りながらその才能はドワーフすら超える!! 巨匠を超えるかもしれない)


 嫉妬が無い、そういえばウソになる、しかしその弟子が一心不乱に剣を作るその様は、若いころの自分と似ていた。

 まるで迷いがない、そう、そこまで才能に溢れて居ながら、その弟子は奢ることなく努力するのだ。


 嫉妬はある、だがそれ以上に、この娘に、この弟子に、自分の果たせなかった夢を託したいのだ……

 そして店主は決心する。


(この弟子を、この子を必ず巨匠にして見せる、そしてその武器を自分が売るのだ)



 店に戻った店主の前にはすでに中級・上級冒険者が待ち構えている。

 そうあの弟子は、あの娘はほぼ毎日剣を打つ、多い時には日に数本も打つのだ。

 これはこの地域の鍛冶師としては異常な製造本数だ。


 普通の鍛冶師は一週間に一本打てば多い方、一か月に一本しか打たないものも多い。

 例えば巨匠は殆ど剣を打たない、気に入った者の為に、自分の認めた相手の為に、その時だけ剣を打つ。

 この地域の鍛冶師は自分の打つ剣の買い手を選ぶ、決してお飾りのコレクション、転売の種などにしない。


 武器は造れば造るだけ売れる物ではない。


 武器との相性もある為、その使い手を選ぶ、また不出来な武器を売ればその鍛冶師の信頼は地に落ちる……命を賭けて戦っているのが冒険者だ。万が一が有ればそれはそのまま自分の命に直結する。

 一度地に落ちた信頼・評判を取り戻せるほど生ぬるい世界ではない。

 そのため鍛冶師は自分が納得するまで武器を造りこむ、不出来なものは鋳溶かされ、再び素材に還し、繰り返し、繰り返し、満足な出来になるまで只管打つのだ。


 それでは生活が儘ならない、そう思うかもしれないが、この地域の鍛冶師の主な収入源は新たに打つ武器の売却益ではない。

 既に売られた武器のメンテナンスこれこそが主な収入源だ。それを請け負い、それで糊口をしのいでいる。

 中にはメンテナンス専門の鍛冶師もいる位だ。新たに創り出す能力は劣っていても、整備し、その武器の力を引き出すことに長けた鍛冶師もいるのだ。


 鍛冶師の造りたい武器と、冒険者の求める武器の不一致。

 

 本来武器は冒険者の依頼を鍛冶師が受けて、その冒険者の為だけに造られる。

 しかし、初心者には自分にどんな武器があっているかわからない。

 鍛冶師も、その冒険者にどんな武器が合うのかわからない。

 そんな両者の間を取り持つのがこの地域の武器屋の役割だ。


 お互いに付き合いが長く成れば、本来の専用の武器を鍛冶師に造ってもらうが、その間隙を埋める、その為の武器屋。

 鍛冶師は腕を磨くため、またその創造欲を満足させるために、使い手を定めずに武器を打つ。

 冒険者は自分の求める、自分に合う武器を探して、様々な武器を試す。

 その場を提供するのが武器屋の役割、そう店主は思っている。


 店主は、ザッツバーグはその武器屋、そう、世界一の武器屋!


 この店に並ぶ武器は多くが巨匠の弟子の作品だ、それも巨匠が認めた物しか置いていない。たとえ巨匠の作品でなくても、その認めた品であれば、目が飛び出るほどの高値が付く……そんな一流の武器しか置いていない事が店主の誇りだ。

 故にこの店の客は限られた冒険者しか来ない、そんな一部の限られた一流の冒険者にしか買える値段ではないのだ。五街地域一の高級武器店の名は伊達ではない。


 その店に、そんな店が冒険者で溢れる、連日、そう連日店に並ぶ、その弟子の、あの弟子の武器を手に入れようと、店主が巨匠に呼ばれた、その瞬間から店に詰めかけるのだ。

 ある者はギルドの者を交代で寄こし、この店を見張っている、それほどまでしてでも手に入れたい武器。


 店主は当初は納得が行かないながらも巨匠の言うように安値で武器を店に並べた、この店の武器としては破格のその値段、そして破格ながらも、安い素材ながらも、他と一線を画すその出来栄え。

 直ぐにそれは評判となり連日店にはギラついた眼をした商人や、冒険者が一攫千金を夢見て集まり始めた。

 だが、値段は安くとも、店主は買い手を厳選した、決して転売目的や、相応しくない冒険者には売らないのだ。

 しかし、それでも店には、この店に相応しくない者たちで溢れ、買えなかった者の怨嗟で満ち溢れる。


 困り果てた店主はそこで一計を案じた。曰く、


「武器の価値に相応しい素材を持ってくるように! 一番良い素材を持って来た者にこの武器を売りましょう。お金とその素材、それと交換でこの武器を売りましょう、これならばどなたからも文句はないでしょう?」


 その弟子の作る武器の素材は魔鉄が多かった、極偶にミスリルが混じることもあるが、ほぼ魔鉄だ、そんな武器にお金以外で素材として何を持ってくるか?

 これで迷惑な転売目的の商人が消えた、また転売目的の冒険者も消えた。なにせこの剣の価値が本当に分かっている本物の冒険者達は、


「店主、オリハルコンだ! 俺はオリハルコンを50キロだ」

「しょべえ、そんなものは引っ込めろ、こっちはアダマンタイト20キロ!」


信じられない値段の素材を持って来て、買うために必死でアピールするのだ。転売するには割に合わな過ぎた。


 金は一般に1キロ500万円程で取引される。100万円金貨が200グラムだから丁度5枚で1キロだ。


 ミスリルは同じ重さの金の2倍の価値がある。1キロ1000万円、一般の鍛冶師が加工できる金属としては最高級な素材だ。その装備をミスリルで揃えることに憧れる冒険者も多い。

 

 オリハルコンは同じ重さの金の3倍の価値がある。1キロ1500万円、加工するには『名工』の職能が無ければ難しく、その職能はその才能が無ければ獲得できない。真面な剣を一本買うことも難しい。素材の値段でそれである、加工されて剣になればその値段は軽く数倍に跳ね上がる。中級冒険者はこのオリハルコン製の装備を揃えるのがステータスだ。


 アダマンタイトは同じ重さの金の9倍の価値がある。1キロ4500万円、加工できる者は『大名工』の職能持ちに限られ、造られた、打たれた剣は伝説になっている物も数多い。剣の形をしているだけで価値が数十倍に跳ね上がると言われる所以だ。真面な剣は恐ろしく高い。上級冒険でもなければ買えるような値段ではない。


 ヒヒイロカネは同じ重さの金の27倍の価値がある。1キロ1億3500万円、加工できるのは『神匠』の職能持ちだけに限られ、打たれた剣は『神剣』と呼ばれる。国さえ買えると言われる所以だ。加工の難易度が異常に高い為、素材としてはこの値段でも、加工され打たれた剣は個人で買えるような値段ではない。

 

 そう、冒険者達は其々、先の冒険者が7憶5000万円、後の冒険者が9億円でこの魔鋼の剣を買うと言っているのだ。転売しようにもその原資が一獲千金を夢見る者達にはない。


 中級冒険者達が必死でアピールする中、


「皆すまないな、ここは大人買いさせてもらう、ヒヒイロカネ10キロだ、純度も質も保証書付きのインゴット!」


上級冒険者が掻っ攫う、そうこの上級冒険者は13億5000万円を提示したのだ。


「な!! 卑怯だぞ! 上級冒険者なら素直に他の武器を金で買いやがれ!」

「ありえねえ! ヒヒイロカネ10キロだと、魔鉄の武器だぞ!! ふざけんな上級!」


 自分達も大概であるがそれを棚に上げるだけのインパクトがその値段には有った。

 騒ぐ中級冒険者達を手で制し、その上級冒険者は、


「怒るなよ、今日の武器は刀と聞いた、あの子がそれを持ってこの建物に入るのを、うちのギルドの者が見たんだ。そしたらどうしてもうちの姐さんが欲しがってな」


「くそ、エリカ姐さんか、確かにあの人の体格にぴったりだな」

「やっべええぇぇあの人の獲物を横取りとかしたら殺される」


「今日は手に入れたからな、今後は譲るんで勘弁してくれ、では店主、これで頼む」


「エリカさんはなんて?」


「さあ、ただもう既に二本ほど、あの子の武器をうちのギルドの中級が持ってるだろ? それを見た姐さんが、『今度もし刀が、そう刀が売りに出たら絶対に手に入れろ、金に糸目をつけるじゃないよ』と厳命されててね」


「ではエリカさんは育てて自分で使う気でしょうかね?」


「だろうね、コレクションするには素材が安すぎる、育てる気でしょうね。付き合わされるこっちはいい迷惑なんだけどね」


「じゃあ太刀とか出ても要りませんかね?」


「なっ! なんだと? あの子は小さめの武器しか、自分で試し切りができる武器しか作らないだろ? もしかして店主、太刀を隠しているのか!」


「いえ、しかし、あの子なら、『偶には太刀とかも作ったらどうだい? 大きな武器を作るのもいい勉強になると思うよ』と声でも掛けたら作りそうでしょ?」


「店主! 頼む、ヒヒイロカネをもう10キロ置いていく、太刀が出たら俺に売ってくれ! 俺が育てる!」


「なっ! 先輩卑怯だぞ! 今後は譲る約束だろ!」

「男に二言とはみっともねえぜ!!」


「うるさい! 太刀は別だ! どんなに非難されようと太刀だけは俺が手に入れる、異論は認めない!」


「ちぇ、仕方ねえな、しかし店主、この子いつも大体魔鉄だな? なんでだ? 他の連中もそうだけど、もっと良い素材を店主に預けてるだろ?」

「そうだな、店主この素材ってあの子のための物だろう? 渡してないのか?」


「ああ、それはね、巨匠の許可が下りるまで私が預かっているだけでね、ちゃんと帳面に付けて管理しているさ、商売は信用が第一、ちょろまかしたりしないから安心してくれ」


「いや店主を疑ってるわけじゃないさ、そうじゃなくてさ、最初からミスリルなりオリハルコンで作ってくれたら、育てる手間が省けるだろ?」

「そうだよな、流石に魔鉄から育てるのもなあ、手間が掛かりすぎじゃね?」


「よく考えてくれ、この子がミスリルやオリハルコンの剣を作ったとしよう、君たちが買えるような値段で売りに出すと思うかね?」


「…………ああ、今のは忘れてくれ店主、俺は魔鉄でいい」

「うん、そうだな俺は魔鉄が良い、ヒヒイロカネ10キロより高い剣なんて買えるかよ!」


そんな中級冒険者達を見ながら店主は、


(果たしてこいつらが剣を手に入れるのが先か、あの子が自分で満足できる、自分の武器を作るのが先か、うん微妙だねぇ)


上級冒険者が満足気に眺めるその手の刀の出来を見る限り、その日はそう遠くない。



ゴロウ達が口々に、


「いやその人達も素材は安いって言ってたよ、でも出来が良い、すごく良いって。魔法球の魔力付与と刀身の魔力付与バランスが非常に良いっていうんだよ」


「そう、そいつらが言うには、ドワーフの刀身は刀身自体の出来は秀逸だけど、魔力付与、魔力の練りこみが少し足りない、それを魔力球の魔力付与で補っているものが大半だってさ」


「そうだな、で続けて、けどこれは、刀身の出来も悪くないし、刀身の魔力付与、魔力の練りこみも悪くない、魔法球も安い材料なのに非常に良くできている、それらが組み合わさったバランスが秀逸すぎるって言ってたな」


「そうそして最後に、この剣は『成長』した時に『化ける』、間違いなく『化ける』ってそういうんだよ」


「ああ……そう言うことね、『成長』ね、中級クラスになるとそういった投資もできる余裕があるわけか……」


 メグミも自分の造った武器が褒められれば嬉しい、サアヤの魔法球の凄さも見抜いているからその目は節穴では無さそうだ。


冒険者は、『見習い』から始まり、

・初級

『青銅』『鋼鉄』『黒銀』

・中級

『黄金』『白金』『ミスリル』

・上級

『オリハルコン』『アダマンタイト』『ヒヒイロカネ』

とクラスが別れている。


 メグミたちは今6か月の『見習い』期間で、既に3人とも『青銅』の資格は得ているので、6か月目になれば自動的に初級冒険者の仲間入りである。

 ゴロウ達の言う中級がどのクラスかはわからないが、『黄金』以上で在ろう。言葉の響きからしてお金は十分に持っていそうだ、そりゃ投資もしたく成るのだろう。


「ゴロウ、3本で50万で良いわ、2か月で払いなさい。元々39万位で売るつもりだったんだし、それでも十分儲けてるから気にしないで」


 店主や店に詰め掛けていた冒険者からしたら信じられない破格の値段である。既にメグミは『見習い鍛冶師』ではないのだ。


「え? いいのか? そりゃあ俺たちは助かるが、それだと………」


「話は黙って最後まで聞きなさい! 但し、条件があるの、その武器、絶対売らないで。

 要らなくなったら私に返しなさい、お金は返さないけど、文句はないでしょ? 280万を50万に値引いたんだから!!」


メグミは胸を張ってそう告げる。


「いいのか? 本当に? あのその冒険者の……名刺渡すよ?」


 話し終わったと判断したゴロウが遠慮がちに尋ねるが、


「いらないわよ、そんな名刺は、!! いい? 道具、武器ってのは使って貰ってこそ価値があるの、私の武器は御飾りやお金儲けの道具じゃないわ」


 この辺は本当に巨匠の教えが生きている、まあ元々のメグミの考え方にもマッチしていただけだが……


「そうか有難う」

「「有難うございます、メグミの姐御!!」」


 ゴロウ達がそろって頭を下げる、一振りすれば分かるのだ、素人のゴロウ達にだってわかる。街の武器屋に売っている剣よりも、このメグミ達が造ってくれた剣がいかに素晴らしいのか、それが分かる。

 だがメグミは、そのゴロウ達の『姐御』が引っ掛かった、なにせメグミはゴロウ達の誰よりも年下、その口調からはとてもそうは思えないが年だけで言えばゴロウ達の後輩なのだ。


「姐御って何よ、次同じこと言ったらぶっ殺すわよ!! さあこの話は御終い!

 この容器返したら出発するわよ! あとタクヤあんた剣の握りが違うわよ、右手が上で左手が下、それと左右の手は上下離す、それじゃあ柄が長い意味ないでしょ」


 メグミが口早にいろいろ指示、指摘する。その様子にノリコが、


「んふ、メグミちゃん照れてる、かわいい」


 そういってほほ笑む。


「ノリコ姉さま、ちょっと意地悪? さっきの仕返し? でもほんとメグミちゃん顔赤い」


 サアヤまでがそれに乗っかってメグミの顔の赤さを指摘する、もうすっかりシャワーの余韻は引いている筈である。


「うるさい!! もういいでしょ、サアヤ容器返しに行くわよ」


 照れているのを見透かされ、さらにそれを指摘されたメグミは、怒鳴るように指示を出す。するとサアヤは、


「はーーい」


「……」


「一回ですよ『はい』は、伸ばしただけです♪」


「……なんか納得いかない、釈然としないわ」



注記) 

 メグミの剣の値段が高すぎるとの疑問が有ると思います。


 そこで少し補足説明を此方に書きます。


 彼等はメグミの剣を買っているのでなく、メグミと、メグミの剣の将来性に投資している為、この様な値段となっています。

 巨匠が認めた愛弟子だからこそ、彼らはこぞってメグミとその剣に投資しているのであって、魔鉄から造った魔鋼の剣に本来この様な価値はありません。


 ただその剣の出来が極めて良い為、将来、メグミもその剣も化けるのを見越して彼らは先行投資しています。


 将来、メグミが巨匠となった時、材料持ち込みで自分だけの剣を打ってもらう、その時に備えて店主ザッツバークと巨匠アルバートに顔を売っておく為に大金を投資しているのです。

 またメグミ自身にも、


「私は君の昔からの『顧客』だよ、ほら証拠に君の打った剣を大事に育ててるよ、だから是非私に剣を打って欲しいんだ」


こういった殺し文句を得るために投資しています。


 これは普通に売りに出されているアダマンタイト以上の希少金属の剣を冒険者が手に入れることが極めて困難だからです。例え売りに出ていても高すぎて購入できません。

 

 その為、見込みのある職人に対する、こういった先行投資はこの世界の冒険者の間では常識となっています。恩の押し売りの様な物ですが、駆け出しの職人にとって、こういったパトロンは腕を磨くためにも、又、日々の糧を得る為にも必要な為、五街地域では推奨されています。 

 また駆け出しの頃に受けた恩は返すのが職人の心意気であり、常識とされている為、先行投資を行った者には、将来職人が大成した場合に、材料持ち込みで、ある程度の手間賃を払えば確実に希少金属の剣を手に入れられるというメリットがあります。


 中には見込み違いで落ちぶれる職人も中には居ますが、メグミの場合は巨匠のお墨付きが有るため、大成することは確実と彼等にはみられています。だから安心して大金をつぎ込んでいるのです。


 また剣も同じです。

 成長する際やメンテナンスの際に、ヒヒイロカネ等、希少金属を吸収させることにより、本来入手困難なヒヒイロカネの剣を手に入れることが出来る可能性があるため、出来の良い魔鋼の剣は、投資対象になっています。


 剣の成長によりヒヒイロカネの剣を手に入れる為には、元の剣の材質は関係ありません。その剣の出来の良さによって、その剣の成長度合い、成長速度が変わります。

 出来の悪いオリハルコン製の剣よりも、出来の良い魔鋼の剣の方が、成長した時の強さは上に成ります。出来の悪い剣は、希少金属を吸収させようとしても、その負荷に耐え切れず、吸収できません。


 そんな理由により、希少なヒヒイロカネ等を成長によって吸収させる為の素体として、優秀な魔鋼の剣は投資対象となり高額で取引されていいるのです。


 そうして手に入れた剣はヒヒイロカネ100%ではありませんが例え合金であろうと、ヒヒイロカネが含まれているだけ、それだけでも希少価値があり、またその剣の攻撃力も、剣が成長している分、出来上がったばかりのヒヒイロカネの剣に勝ると言われています。

 

 一般的な魔鋼の剣の値段は、メグミの認識のとおり、10~30万円程が一般的です。

 優秀な魔鋼の剣はゴロウ達に売却を迫った、中級冒険者が言うように60~100万円で取引されます。

 それが一流鍛冶師の作ともなれば200~400万円、これが所謂銘の入った剣になります。

 巨匠と呼ばれるアルバートの弟子の作ならば更に値段が上がり500~1000万円、業物、大業物と呼ばれるような剣でなければ店主ザッツバークの店頭には置いて貰えません。

 中でも『名工』『大名工』の作品は非常に高く、高いものはその値段が億に達します。

 しかし彼らは自分の認めた相手にしか剣を打たない為、一般の市場、武器屋に彼らの打った魔鋼の剣が出回ることは有りません。

 彼らの打つ剣はいわゆる『名剣』『伝説級の剣』となりますが、自分の為だけに打ってくれる剣に魔鋼を指定する冒険者は居ない為、魔鋼ではなくその他の材質の剣ばかりです。


 メグミは巨匠アルバートが誰憚ることなく『愛弟子』と吹聴して回り、またその剣もそれに見合うだけの出来栄えの為、トラの威を借る狐の如く、値段が跳ね上がっています、しかしそれは先ほども言いましたが将来性を見込んだ先行投資の側面が非常に強いです。


以上、長くなりましたが補足説明でした。

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