九日目②

 午前一時十五分。

 キャセイパシフィック航空の飛行機が、香港を離陸した。

 国際線の楽しみといったら、機内食。離陸すると早々に配られたのは、横長の深夜食ボックスだった。


「こんな時間に食べないんだけど」


 周囲を見ると、手を付けない人が多い。食べなければ回収され、ゴミとなる。実にもったいない、とサクヤは箱を開ける。ここでも忘れず、儀式の撮影を行った。

 ミニロールのたまごサンドパンとマフィン、カットされたフレッシュフルーツとクッキー。紙パックのジュースはレモンティーは甘味が効いている。


「香港テイストだ」


 夕食と夜食を食べて機内食に手を付けるより、持ち帰って朝ごはんにすればよかったと嘆くのは志がないからだ。物事をはじめるとき、終わりを考えてからにしなければならない。胃が動けば熱を発し、内側から温めてくれる。空っぽだと熱が発生せず、どんどん冷えてしまう。


「なぜなら季節は逆行する」


 サクヤは食べ終え、目を閉じた。

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