三日目⑭

「めっちゃ気持ちよかったー」


 心も体もスッキリしたサクヤが笑顔でヴィラに戻ると、びっくりして二度見した。

 キョウとカコがソファーに座ってスマホをいじっている。無料WiFiが完備されているからといって、海外まで来てスマホを触っていなくてもいいのに。


「ところで、トモの姿がないんだが」


 サクヤが問うと、スマホをいじりながらキョウが外を指さす。

 中庭に出ると、部屋の明かりに照らされてトモがプールで泳いでいた。

 サクヤは大きく目を見開いて、まばたきする。


「まさか、ひょっとして」

「安心して、履いてますから」


 水面から顔を出すトモは笑っていた。


「いくらプライベートプールだからって、裸でなんて泳がないよ」

「そ、そうか」


 光の加減から、水着をつけずに泳いでいるとサクヤは錯覚してしまったのだ。

 彼女も施術を受けてきたのだろう。軽く泳ぎたい気持ちがわかるサクヤは、バスローブを脱ぎながらプールへと入ろうとする。


「それじゃあ、わたしたちも行こう」

「む? 行くってどこへ」


 プールから上がるトモは、ビーチベッドの上に置いてあるバスタオルを手に取り、体を拭きはじめた。


「夕食。今日は特別ベトナム料理のバーベキュービュッフェディナーの日なんだって」

「へえ、そうなんだ」

「テラス席の食事は、美味しかったみたいだし」


 バスローブを拾い上げるサクヤは目を細める。


「誰にきいたの?」

「キョウとカコに決まってるじゃない。あの二人は二十時からスパの予約を入れてるから、先に食べてきたの」

「なるほど……つまり」


 トモはサクヤが帰ってくるのを待っていてくれたのだ。

 それがわかるとサクヤは、すぐに部屋の中へ戻った。

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