三日目⑬

 施術予約を入れていた十五時五分前。水着に着替えてバスローブ姿で来てください、と指定があったので、サクヤは着替えて向かった。

 スパ棟は、サクヤたちが宿泊するスパヴィラのすぐ向かいにある白い建物。入ると天井が高く、黒いタイル張りの床以外、壁や柱やカウンターは白に統一されている。広々とした受付には、サロンとスーベニアショップが併設されていた。

 女性客だけでなく、むしろ夫婦やカップルの方が多いのがわかる。

 十六歳未満は立入禁止なので、まさに大人のための癒やし空間だ。

 ホテル内は基本、ベトナム語と英語が使われている。受付も同様だが、日本語が少し話せるスタッフもいたし、日本語で書かれたメニュー表も用意されている。

 施術前の待合室では、冷たいおしぼりとミネラルウォーターが提供される。この水、毎回違うものが出るらしく、刻んだフルーツが入っていておいしい。

 案内されたトリートメントルームは完全個室の全十六室。ベッドが二台並んで置かれている。使っているのは、百パーセントオーガニックの天然オイル。各部屋にシャワールームとトイレが装備されていた。

 サクヤが選んだ施術は、アクティブバンブーロールアウト・所要時間五十分。

 説明によればベッドに横になり、オイルマッサージのあと温められた竹筒を使って足から腰、背中へと強い圧をかけて転がし、リンパの流れをよくしてデトックスと免疫力の活性化を促す、働き詰めのお客様にぴったりなマッサージらしい。

 痛みを感じたのは、セラピストの腕もあるかもしれないが、足の筋肉の緊張によるものだろう。立ちっぱなし、座りっぱなし、歩き通しだと、重力に従って足はむくむし疲労も貯まる。

 優しさに厳しさがあるように、癒やしにも多少の痛みは伴う。なのだけれど、そこは痛気持ちいい強さで刺激してほしかった。


 施術後。真四角の白い急須で温かいジャスミンティーを頂く。

 軽やかな足取りで戻ったサクヤは、ヴィラでのんびり過ごした。

 このあと十八時から二回目の予約を入れてあるからだ。


 日が沈んだころ。サクヤは再びスパ棟を訪れる。

 今度のメニューは、ヒマラヤンハートストーン・所要時間五十分。

 高ぶった気持ちを鎮めてリラックスさせてくれる香りのマンダリンエッセンシャルオイルをまぜて温めたキャリアオイルに、ハート型のヒマラヤ岩塩のソルトストーンを長時間つけておいたものを使用して、疲れた体と心のバランスを整えて安らぎを促進するストーンマッサージ。

 ソルトストーンはアルカリ性、ナトリウムイオンを含んでいるので皮脂とナトリウムイオンが結合、つるつるした感じと清浄感を生み出してくれる。

 アロマの香りと筋肉が緩んでいくような心地よさに、サクヤは途中から眠ってしまった。施術後は代謝が良くなってか汗が止まらない。しばらく体がポカポカしていた。



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