結界舞闘列伝 アイドルが2羽っ!

作者 壱原優一

まさかアイドルの笑顔を見て、血が熱く滾る日が来ようとは

  • ★★★ Excellent!!!

 いや、一般的に「アイドルの笑顔」って言葉から想像するのと、全然違う滾り方するんです。
 熱血。硬派な決闘に感じる種類のそれ。なのに物理的な血生臭さや痛みは事実上なくて、彼女たちの姿はどこまでもキラキラしていて、「あれっやっぱりアイドルでは」と思うのだけれどでもやっぱり違う。違うはず。だって命がけ。いや死にはしないけどある意味死ぬというか命以上のものがかかってるというか、もう自分で何言ってるかわかんないんですけどとにかく熱い。

 自分はアイドルというものについてよく知りません。なのでズレているかもしれないのですけれど、なにより感じたのはこう、なんだろう。「エンターテインメント性」の高さみたいなもの。

 例えば文章。というか、お話の書かれ方。テンポがよく、スピーディで、なによりものすごい勢いがある。こちらが「ここが見たい、もっと読みたい」と感じる部分を、一切の躊躇なくがっつんがっつん投げつけてきてくれる。この思い切りのよさと力強さ。すごい。引っ張られる。魅せられちゃう。
 また設定に関しても。アイドル同士の異能力バトル。格闘技の興業に近いのに、痛々しさや残虐性の生じない舞台設定。結構ぶっ飛んでいるようで、でもその実とてもストレートでシンプル。このお話がなんのためのお話かを考えたら、あるいは直球と言えるくらいかもしれない。
 そういった部分、エンタメ性の高さが、主人公のキャラクターないしお話の主題とぴったり噛み合って、もう読んでいてひたすら気持ちがいいんです。楽しい。熱い。「人を楽しませる」というのはきっとこういうことなんだと、そんなこと考える余裕もないほど面白い。

 ハードなバトルものをやっているのに、根っこにあるのはきっと楽しさと明るさ。でも決して生温くはない、だからこそ熱いし盛り上がる。最後まで読み終えて、この作品から、ひいては主人公の紗弓さんから、なにかものすごいパワーのようなものをもらった気分になりました。
 なるほどアイドルってこういうものなのかもしれない。
 いままで知らなかったアイドルについて、少しわかったかもしれない、と思えた素敵な作品でした。元気になれる物語です。ぜひ。

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